2020年09月07日

ギャシュリークラムのちびっ子たち エドワード・ゴーリー

ギャシュリークラムのちびっ子たち エドワード・ゴーリー 柴田元幸・訳

 先日読んだ同作者の「うろんな客」からこの大人の絵本(ブラックユーモア、ブラックジョーク)にきました。うろんな客は、カラスのような体をした奇妙な生き物が家に居つく話でした。17年が経ったと書いてありました。最初はその生き物がなにかわからなかったのですが、巻末の解説を読んで、「こども」であることがわかりました。
 ですので、今回のこの本は、最初に巻末にある訳者の解説から読みました。

 エドワード・ゴーリーの経歴を読むのが楽しかった。とくに、名前は、本名であること。彼はアメリカ人ですが、文学においては、紫式部のファンであること、映画においては、溝口健二作品のファンであること。2000年5月に75歳心臓発作で亡くなっていること。近親者がいなかったこと。
 
 このちびっ子たちの絵本は、1963年に出版されています。ページをめくるたびに子どもが死んだという記事が書いてあります。アルファベットの、「A」から「Z」まで続きます。アルファベットの頭文字が、子どもの名前の頭文字です。子どもが悲惨に死んでいきます。

 読み手である自分は、結局、こどもというのは、生きていればいいんだという結論に達しました。

 ページをめくります。
 英会話の学習教材みたいです。英語の構文紹介です。
 アルファベット(たとえばA)+be動詞+for 〇〇〇+関係代名詞(whoとか)……
 エイミーは、階段から落ちて死んじゃったみたいなパターンが延々と続きます。
 だれそれは、こんなふうに死んじゃった。
 救いがありません。

 ブラックな現象。世の中の悲しみ。どちらかといえば、隠しておきたいこと。暗い人間心理があります。そういったものがあるという、「存在」を示すおとなのための絵本です。不幸に対する解決策は、提示されません。
 
 事故死、病死、自殺、いろいろあります。

 アーチストが描く絵ですので、絵は上手です。白黒エッチング版画みたい。

 一度読み終えて、もう一度読もうという気力はわいてきません。
 とはいえ、絵本を捨てようとは思いません。じっさい、こういうことはあるし、避けられません。

 こどものまま亡くなった少年少女を悼む(いたむ 悲しむ)お話だという気持ちで受け止めます。
 こどもに望むことは、とりあえず、生きていてほしいということ。

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