2020年05月01日

家族ゲーム 邦画DVD

家族ゲーム 邦画DVD 1983年(昭和58年)

 有名な映画ですが初めて観ました。最後まで観て、作品が観客に伝えたいメッセージがよくわかりませんでした。
 ラスト付近、松田優作さん演じる家庭教師が、東京湾をゆくたぶん水上タクシーであろう船の上に立っている姿は、すがすがしかった。そこになにか、ヒントがあるのかも。(いいかげんな家族に制裁を加えたという様相のようです)
 とりあえず、鑑賞の経過を追ってみます。

 松田優作さんは、若くてやせています。残念ながら、89年に癌により40歳で病死されています。松田さんは、演技の上では、暴力的なイメージがあります。劇中「金属バット両親殺人事件」のことが出てきます。1980年の発生です。大学受験生の息子が両親を金属バットで殺害しています。その事件のことが、この映画の素材になっているようです。
 先日、松田優作さんの息子さんの松田龍平さんが出ている将棋映画「泣き虫しょったんの奇跡」をDVDで観ました。親子ともに雰囲気が、よく似ておられます。

 四人家族がいます。父親、母親、高校生の長男、高校受験生の中学生次男です。次男の学力がかんばしくないようで、松田優作さん演じる大学生の家庭教師が雇われました。
 食卓テーブルが変なのです。横に細長く、以上の五人が横並びに並んで飲食をしながら会話をします。左から、母親、父親、家庭教師、次男、長男の順番で着席します。観ていて、この家族は、お互いを見て生活していないと思わせてくれました。つまり、コミュニケーション不足なのです。いくら長くいっしょに暮らしていても思っていることを言葉にして相手に理解してもらうように話さないと相手が何を考えているのかはわかりません。
 五人芝居は、暗くて重苦しい。受験勉強のこと、いじめにあっていること、男女の性のこと、兄弟間の比較のこと、1970年代の雰囲気が背景の風景とともによみがえります。LPレコード、受動喫煙、東京タワー、石油化学コンビナートの白煙、草っぱらの茶色の草、映像のなかにある世界は古い。

 父親は、お金の力で、本来自分がやるべきことを人にやらせるタイプの人です。依頼した相手が目標を達成できないと逆上するのでしょう。それから、型にあてはめたいタイプです。こうであるべきとか、こうすべきとか、相手の考えは聞かず、問答無用の強制力があります。
 母親は、こどもに甘い人です。
 兄は、そんな家族と距離を置きたいタイプとみました。
 弟本人は、問題児、乱暴、わがまま、自己コントロールできず、成績はクラスでうしろから9番目です。両親夫婦の会話として、「できの悪い子はいらない」、「しょうがないじゃない。できちゃったんだもの」 されど弟は、やれば、できる男でした。

 弟の中学同級生のみえこさんのセリフが良かった。「(いじめられないようにするために)うそでもヨイショする。尊敬していますという態度をとる(卒業までの期限付きとしてがまんしてそうする)。正直すぎるのはよくないという趣旨の流れの言葉」

 大学や高校の名称を信用して、そこに在籍している人間がいい人間とは限らない。会社の名称で、そこにいる人間がいいとも限らない。役職のポストの名称で、その人間がいいとも限らない。いい人もいるし、そうでない人もいます。

 (映画の中の出来事のいくつかは)そんなことは、ありそうでないことではないか。世の中で、まともだとされていることは、案外、まともな秩序ではなかったりもします。

 幼なじみだからいいわけではないし、ふるさとだからいいわけでもない。そこには、思い出したくもない過去があったりもして、近づくのを敬遠することもあります。

 もやもやーっと、映画を観ながら、そんな感じを受けました。

 これを書きながら気づいたのですが、40年ぐらい前の社会情勢を背景にして、不完全な家族像が描かれていることが映画のメッセージなのでしょう。ただ、完ぺきな両親とか、夫婦とか、親子とか、きょうだいはなかなかいないわけで、この映画では、当時の家族像を分析して、批判しているのですが、だからといって、家族をちゃんとやれるかというと、なかなかそうはいかないわけで、人間とはそういうものだという結論に、最終的に落ち着いてしまうのです。

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