2020年02月08日

ルドルフともだちひとりだち 斉藤洋

ルドルフともだちひとりだち 続ルドルフとイッパイアッテナ 斉藤洋・作 杉浦範茂(すぎうらはんも)・絵 講談社

 第一作「ルドルフとイッパイアッテナ」を読んだのは、2019年4月のことでした。その後、同作者の白狐魔記(しらこまき)シリーズを追いかけて読み同作者のファンになりました。白狐魔丸(しらこままる)は狐ですが、こんどは本作、岐阜県の飼いねこがまちがって長距離トラックにのって東京まで移動してしまいのらねこになっている状態の「黒ねこルドルフ」のシリーズを読んでみます。
 ルドルフ:飼い主は岐阜市のリエちゃん小学生。文字の読み書きができる。黒ねこ。
 イッパイアッテナ:元飼いねこ。灰色がかった茶色に、黒いしま模様。とらねこ。いろんな人に可愛がられて、いろんな人にいろんな名前で呼ばれている。名前がいっぱいあるから、「イッパイアッテナ」という名前でルドルフは呼んでいる。イッパイアッテナ本人の自称名は、「タイガー(6年前にアメリカのサンフランシスコに国外転出した飼い主の男性日野さんが名付けた。日野さんが江戸川の土手に捨てられていた子ネコのイッパイアッテナを拾って育ててくれた。育てながらねこであるタイガーに字を教えた)」
 ブッチー:白と黒のぶちもようの商店街にある金物屋のネコ
 デビル:ブルドック。肉屋で飼われている親分肌の犬。猫たちと対立したが和解した。
 この本では、ルドルフが東京に来てから1年が経っています。1988年初版です。2018年で、67刷されています。30年前の光景を思い描きながら読み始めました。

 地元のねことの対決シーンが出てきます。敵は、「ドラゴン兄弟」と名のります。こどもさん向けには、やはり対決シーンが必要なのでしょう。頭に体当たりするわざが、「モウコセイリュウハトウ猛虎青竜破頭」、肩に体当たりするわざが、「モウコギンリュウハケン猛虎銀竜破肩」、「トラのかまえ」、「ししのかまえ」、「ヘビのかまえ」があります。
 アメリカに転居してしまったイッパイアッテナの飼い主の家屋敷が取り壊されて新たな住宅の建設が始まりました。そのことが、今回の物語の背景になっていくようです。イッパイアッテナは、飼い主が戻ってくることをひそかに期待しています。

 雪が積もった神社の屋根をエベレストに見立てて冬山登山の練習をするねこたちです。
 
 岐阜県長良川も東京江戸川も実際に見たことがあるので、読んでいて、実感が湧きました。
 
 デビルという犬のしみじみとした語りがあります。学校制度の話があります。また、「自由」に関する飼い犬、のらねこの幸せとか、失敗したと思った後の「反省」とか、困っているときに助けてくれる「友だち、友情、仲間」がいるかとか、人の道の教えにつながる話があります。

 女子のねこにほのかにこがれる恋心が芽生え始めましたが、まだ、今回のお話では盛り上がるところまでは発展しません。恋愛モード(恋愛をしている状態)です。

 こどもの目線で書いてあるところに好感をもちました。また、「昭和時代」の匂いがします。

 予想外の展開になってきました。

(つづく)

 いまは、後半部分を読んでいます。タイトル「ひとりだち」の意味がわかります。東京にいる黒ねこルドルフは、岐阜市にいる飼い主の小学生リエちゃんのもとへ戻りたい。もうひとつの希望は、「自立」したい。
 ルドルフの帰郷ルートは身近な地域なので、土地勘があり、実感が湧きます。165ページにある絵、東京タワーがある東京から、金華山(きんかざん)のてっぺんに明智光秀と関連がある岐阜城がある岐阜市までの移動です。そういえば、先日、NHK大河ドラマの「麒麟が来る」を見ました。この本だと、「ルドルフが来る」に変わります。
 8月20日、ついにルドルフは、金物屋のトラックに忍び込んで、東京から岐阜市への旅立ちをしました。

 高速道路は、ETCカードで進入の時代になったので、物語にある運転手が入場時、券を受け取るときに荷台にねこが飛び乗ることは、手取り通行券でないとできなくなりました。時代の変化です。
 浜名湖サービスエリアの記述はなつかしい。そこには何度も行きました。岐阜への移動が続きます。豊川、岡崎、名古屋を通過します。夢にまでみた岐阜城が山の上にそびえ立っています。感動的な展開が続きます。
 岐阜市に着いたルドルフは、飼い主リエちゃんの家で、さびしい思いをします。そこには、ルドルフという名の別の黒ねこ(子ねこ)がいたのです。ショックを受けたルドルフは、飼い主の顔を見ることもなく、トラックの荷台に隠れて乗って、東京へ戻りました。しみじみしました。ルドルフとしては、つらい。

 ルドルフは、東京-岐阜を往復して自信がつきます。日本一周、世界一周も目標にできます。行動範囲が広がることによって、こどもの世界が広がることに合わせてあります。

 印象に残った文節などとして、「お母さんって、どういうものなのかな」、「おれな、アメリカにいこうと思うんだ(サンフランシスコに行く貨物船に乗り込んで行く)」、「いつまでもうらみつらみを残していたんじゃあとあとよくない(「対立」の先に「幸せ」はない)」、「飼いねこと飼い主の共存共栄」


この記事へのトラックバックURL

http://kumataro.mediacat-blog.jp/t138002
※このエントリーではブログ管理者の設定により、ブログ管理者に承認されるまでコメントは反映されません
上の画像に書かれている文字を入力して下さい