2019年12月05日
82年生まれ、キム・ジヨン
82年生まれ、キム・ジヨン チョ・ナムジュ 訳 齋藤真理子 筑摩書房
これから読み始めます。売れている本だそうです。憑依もの(ひょうい。のりうつり)ということを知りました。性差別を理由とした韓国人女性の生きづらさが書いてあるようです。
1982年生まれの韓国人女性がいます。2015年の時点で、33歳、名前が、キム・ジヨン、夫が、36歳でチョン・デヒョン、子どもが女児で1歳のチョン・ジウォンです。
彼女に最初にのりうつるのが、彼女の実母です。次にのりうつるのが、去年死んだ大学の3年先輩で、チャ・スンヨンです。夫と大学の同期生です。
そうやって、のりうつられながら、キム・ジヨンが、女性差別を受けたことを語るようです。
日本でいうところの盆正月夫の実家へ家族そろって帰省することへの嫁の心労話があります。
続けて、精神科医の語りがあります。
「1982年-1994年」 キム・ジヨンが、0歳から12歳まで
男尊女卑に関することを、自分の2歳上の姉、自分、5歳下の弟に対する親の扱い態度をもとにして書いてあります。男である弟のことのほうが、女である姉や自分よりも優先されます。
ややこしい部分もあるので、家系図を書きながら読み続けています。
キム・ジヨンの実母のことが書いてあります。厳しい男尊女卑の生活の中で、男兄弟は、大学へ行って、高いポジションの職に就きますが、女姉妹は、夜間中学や内職で、教育や職業選択における差別待遇がありました。
日本にも似たようなことがありますが、韓国のほうがきつい。そして、だれもそのことをなんとも思っていない。当然のこととして、受け止めている社会です。韓国社会のほうが性別差別が深刻に見えます。
女が生まれるとがっかりする一族です。男なら、姉よりも弟のほうが優遇されます。女性にとってつらかった過去の掘り起こし話です。
読んでいていい気持ちがしません。嫌なら男社会と闘うしかありません。
7歳児のキム・ジヨンの実母は小学校で男児にいじめられます。教師は、男児が実母を好きだからちょっかいを出すのだと言って実母にがまんを勧めます。
教師の暴力的な指導があります。
記述にもありますが、女性の大統領が生まれたのは画期的なことだったのでしょうが、彼女のその後は不幸です。
「1995年-2000年」 キム・ジヨンが13歳から18歳まで
女性が、セクハラ、パワハラを受ける社会のことが書いてありました。通学路には変態男がいます。あとは、韓国の厳しい受験競争、いずれも男女差別、女性軽視のことがからんでいます。
女性は被害者なのに、被害に遭うような環境に存在していたり、立場になったりしたことのほうが責められるのです。被害者となった女性のほうが責められる不思議な男性優位の社会です。理不尽であります。「平等」がありません。女よりも男が大事ということを当然のこととして、だれも問題提起をせずに慣例に従っていることが不気味でもあります。女性に人権はありません。女性は人間扱いされていません。闇の部分です。
出産における男女比において、男児のほうがかなり高い。書中では、女児100人に対して、男児116.5人とあります。あかちゃんが、母親のおなかのなかにいるときに女性であることがわかると堕胎している気配があります。
日本とは教育制度が異なります。高校受験は原則としてないそうです。どこの高校に行くかは、割り当てられるとあります。あと、男女共学でも、男女別学級編成だそうです。
どこの国でもいるのだなあと、「露出狂」です。見せて自分の存在を誇示する人間心理です。自分は何をしても許されると思っている誤解です。病気なのでしょう。
まじめな救いの言葉として、「(へんな男もいるけれど)世の中には、いい男の人のほうが多いのよ」、同様に、世の中には、いい人間のほうが多いということもあるのでしょう。
「2001年-2011年」 キム・ジヨンが19歳から29歳まで
IMF危機:1997年(平成9年)。韓国通貨危機(国家破たんの危機)。韓国は国際通貨基金に(IMF)経済主権を委ねた。資金支援。2001年全額返済。日本では、山一證券の破綻があった。
キム・ジヨンさんのご家族は、奥さんの知恵があって、夫の勧奨退職後、金銭には困らない順調な暮らしぶりです。
それでも、求職活動をするジヨンさんは、女性差別を第一として、いろいろな差別を受けます。学歴、どこの大学を出たか、セクハラに順応できるかなどです。女性の採用される比率は申し込んだ人の3割程度です。それでも採用率が高いと喜んでいるという報道には、首をかしげます。男性優先の採用です。ジヨンさんは、61社に不採用で落ちています。
韓国国内の制度や施策なので、日本人の自分は、なんともいえる立場にありません。ただ、読んでいると、韓国の人たちは、チャンスがあれば、他国へ移住してしまうのではないかと予測してしまいます。自分の国に愛着をもてなくなります。それと、男も女もない現代です。タクシーの運転手が女性客を乗せて、しかたがないからのせてやったと言います。それが、同国では、普通の常識のようです。
ジヨンさんはようやく採用されました。
(つづく)
読み終えました。
精神科医の手記という形をとった小説でした。キム・ジヨンさんはうつ病の患者なのです。病気の原因は、男性中心社会、男性優位の制度、女性蔑視、女性軽視、女性差別、そういった大韓民国の実情です。
女性は、ビジネス社会では、夜の接待でアルコールを強要される。
男女の賃金格差がひどい。男性を100としたとき、女性は63.3とあります。
大学を出たのに、アイスクリームを盛るアルバイトともありました。なんのために大学まで通ったのかわかりません。
結婚するにあたって、勉強と仕事だけに没頭してきたので、家事は免除されていた。家事はこれから覚えるという記事もありました。
結婚したら、出産しなければならない。産まないと欠陥があると思われる。出産に当たっては、女子ではなく男子を出産しなければならない。出産したら仕事は辞めなければならない。
だんだん愚痴とも思えるような記述が延々と続くようになりました。なにかしら、すべてが後ろ向きの記述で、読むことが苦痛になってきました。未来に向かって、夢も希望もない言葉が続きます。社会だけのせいではないような。意識の問題もあるような。
大韓民国は、女性が生きづらい国であることが伝わってきます。女性は男性のための道具というような位置づけに見えます。
働く女性にとっては、子どもが生まれてくることが、幸せなことではないというようにもとれます。産休、育休、退職の選択があります。老いた両親に子を預けるのも限界があります。結局、退職を選ぶ女性が多い。夫が働き、妻が子どもを育てる。夫は妻に育児を押し付けて、仕事に専念する。
疑問に思ったのは、結婚式を挙げても、婚姻届けを出すことや出す時期は急がない。
大韓民国の戸籍制度(戸主制度)は、2005年に廃止された。登録簿で平穏無事に生活している。
主婦は、相手にとって都合のいいようにそのときどきで評価されてしまいます。「家で遊んでいる」と言われることもあれば、「家族の守る(尊い)仕事」と言われることもあると書いてあります。
キム・ジヨンは女児の子育て専業主婦になったが、本当は、マスコミの記者になりたかった。結局、33歳の今、彼女は、メンタルの病気になった。ときどき、別人になる。生きている人にもなるし、死んでしまった人にもなる。
最後は、これまでを語った精神科医男性の話になります。
同僚の精神科医が病院を辞めるとあります。理由は、出産です。まわりの協力が十分得られません。「辞めてもらってうまくいった」、「後任には未婚の女性を探す」
損か得かの世界です。
大韓民国の出生率は、1.05(2017年)、日本は、1.44(2016年)、大韓民国にしても、日本にしても、いずれは、国が自然消滅してしまうのではなかろうか。
調べた単語などとして、「幽体離脱話法:前大統領朴槿恵パク・クネが使用している。自分のことをほかの人のことのように話す」、「ナムル:もやし、ぜんまいなどの山菜、野菜を塩ゆでして味付けしたもの」、「リップグロス:化粧品。油分が多く、柔らかい。発色は薄い」
心に残ったセリフや記述などとして、「わたしも先生になりたかった(女子だから教育を受けられなかった)」、「女はお金を稼いで男に貢ぐもの」、「母性愛は宗教なのか」、「男はみんな性犯罪者(予備軍)のような表現」、「(大韓民国は)セクハラ予防教育が浸透していない」、「2013年度から無償保育が始まった」、「スーパーのアルバイト、時給約600円」、「女性には徴兵制がないことを男性は不公平だと考えている)」
「キム・ジヨン」という女性像は、韓国における1980年代生まれの一般的な女性像だそうです。お名前もよくある名前だそうです。いろいろと考えさせられました。
これから読み始めます。売れている本だそうです。憑依もの(ひょうい。のりうつり)ということを知りました。性差別を理由とした韓国人女性の生きづらさが書いてあるようです。
1982年生まれの韓国人女性がいます。2015年の時点で、33歳、名前が、キム・ジヨン、夫が、36歳でチョン・デヒョン、子どもが女児で1歳のチョン・ジウォンです。
彼女に最初にのりうつるのが、彼女の実母です。次にのりうつるのが、去年死んだ大学の3年先輩で、チャ・スンヨンです。夫と大学の同期生です。
そうやって、のりうつられながら、キム・ジヨンが、女性差別を受けたことを語るようです。
日本でいうところの盆正月夫の実家へ家族そろって帰省することへの嫁の心労話があります。
続けて、精神科医の語りがあります。
「1982年-1994年」 キム・ジヨンが、0歳から12歳まで
男尊女卑に関することを、自分の2歳上の姉、自分、5歳下の弟に対する親の扱い態度をもとにして書いてあります。男である弟のことのほうが、女である姉や自分よりも優先されます。
ややこしい部分もあるので、家系図を書きながら読み続けています。
キム・ジヨンの実母のことが書いてあります。厳しい男尊女卑の生活の中で、男兄弟は、大学へ行って、高いポジションの職に就きますが、女姉妹は、夜間中学や内職で、教育や職業選択における差別待遇がありました。
日本にも似たようなことがありますが、韓国のほうがきつい。そして、だれもそのことをなんとも思っていない。当然のこととして、受け止めている社会です。韓国社会のほうが性別差別が深刻に見えます。
女が生まれるとがっかりする一族です。男なら、姉よりも弟のほうが優遇されます。女性にとってつらかった過去の掘り起こし話です。
読んでいていい気持ちがしません。嫌なら男社会と闘うしかありません。
7歳児のキム・ジヨンの実母は小学校で男児にいじめられます。教師は、男児が実母を好きだからちょっかいを出すのだと言って実母にがまんを勧めます。
教師の暴力的な指導があります。
記述にもありますが、女性の大統領が生まれたのは画期的なことだったのでしょうが、彼女のその後は不幸です。
「1995年-2000年」 キム・ジヨンが13歳から18歳まで
女性が、セクハラ、パワハラを受ける社会のことが書いてありました。通学路には変態男がいます。あとは、韓国の厳しい受験競争、いずれも男女差別、女性軽視のことがからんでいます。
女性は被害者なのに、被害に遭うような環境に存在していたり、立場になったりしたことのほうが責められるのです。被害者となった女性のほうが責められる不思議な男性優位の社会です。理不尽であります。「平等」がありません。女よりも男が大事ということを当然のこととして、だれも問題提起をせずに慣例に従っていることが不気味でもあります。女性に人権はありません。女性は人間扱いされていません。闇の部分です。
出産における男女比において、男児のほうがかなり高い。書中では、女児100人に対して、男児116.5人とあります。あかちゃんが、母親のおなかのなかにいるときに女性であることがわかると堕胎している気配があります。
日本とは教育制度が異なります。高校受験は原則としてないそうです。どこの高校に行くかは、割り当てられるとあります。あと、男女共学でも、男女別学級編成だそうです。
どこの国でもいるのだなあと、「露出狂」です。見せて自分の存在を誇示する人間心理です。自分は何をしても許されると思っている誤解です。病気なのでしょう。
まじめな救いの言葉として、「(へんな男もいるけれど)世の中には、いい男の人のほうが多いのよ」、同様に、世の中には、いい人間のほうが多いということもあるのでしょう。
「2001年-2011年」 キム・ジヨンが19歳から29歳まで
IMF危機:1997年(平成9年)。韓国通貨危機(国家破たんの危機)。韓国は国際通貨基金に(IMF)経済主権を委ねた。資金支援。2001年全額返済。日本では、山一證券の破綻があった。
キム・ジヨンさんのご家族は、奥さんの知恵があって、夫の勧奨退職後、金銭には困らない順調な暮らしぶりです。
それでも、求職活動をするジヨンさんは、女性差別を第一として、いろいろな差別を受けます。学歴、どこの大学を出たか、セクハラに順応できるかなどです。女性の採用される比率は申し込んだ人の3割程度です。それでも採用率が高いと喜んでいるという報道には、首をかしげます。男性優先の採用です。ジヨンさんは、61社に不採用で落ちています。
韓国国内の制度や施策なので、日本人の自分は、なんともいえる立場にありません。ただ、読んでいると、韓国の人たちは、チャンスがあれば、他国へ移住してしまうのではないかと予測してしまいます。自分の国に愛着をもてなくなります。それと、男も女もない現代です。タクシーの運転手が女性客を乗せて、しかたがないからのせてやったと言います。それが、同国では、普通の常識のようです。
ジヨンさんはようやく採用されました。
(つづく)
読み終えました。
精神科医の手記という形をとった小説でした。キム・ジヨンさんはうつ病の患者なのです。病気の原因は、男性中心社会、男性優位の制度、女性蔑視、女性軽視、女性差別、そういった大韓民国の実情です。
女性は、ビジネス社会では、夜の接待でアルコールを強要される。
男女の賃金格差がひどい。男性を100としたとき、女性は63.3とあります。
大学を出たのに、アイスクリームを盛るアルバイトともありました。なんのために大学まで通ったのかわかりません。
結婚するにあたって、勉強と仕事だけに没頭してきたので、家事は免除されていた。家事はこれから覚えるという記事もありました。
結婚したら、出産しなければならない。産まないと欠陥があると思われる。出産に当たっては、女子ではなく男子を出産しなければならない。出産したら仕事は辞めなければならない。
だんだん愚痴とも思えるような記述が延々と続くようになりました。なにかしら、すべてが後ろ向きの記述で、読むことが苦痛になってきました。未来に向かって、夢も希望もない言葉が続きます。社会だけのせいではないような。意識の問題もあるような。
大韓民国は、女性が生きづらい国であることが伝わってきます。女性は男性のための道具というような位置づけに見えます。
働く女性にとっては、子どもが生まれてくることが、幸せなことではないというようにもとれます。産休、育休、退職の選択があります。老いた両親に子を預けるのも限界があります。結局、退職を選ぶ女性が多い。夫が働き、妻が子どもを育てる。夫は妻に育児を押し付けて、仕事に専念する。
疑問に思ったのは、結婚式を挙げても、婚姻届けを出すことや出す時期は急がない。
大韓民国の戸籍制度(戸主制度)は、2005年に廃止された。登録簿で平穏無事に生活している。
主婦は、相手にとって都合のいいようにそのときどきで評価されてしまいます。「家で遊んでいる」と言われることもあれば、「家族の守る(尊い)仕事」と言われることもあると書いてあります。
キム・ジヨンは女児の子育て専業主婦になったが、本当は、マスコミの記者になりたかった。結局、33歳の今、彼女は、メンタルの病気になった。ときどき、別人になる。生きている人にもなるし、死んでしまった人にもなる。
最後は、これまでを語った精神科医男性の話になります。
同僚の精神科医が病院を辞めるとあります。理由は、出産です。まわりの協力が十分得られません。「辞めてもらってうまくいった」、「後任には未婚の女性を探す」
損か得かの世界です。
大韓民国の出生率は、1.05(2017年)、日本は、1.44(2016年)、大韓民国にしても、日本にしても、いずれは、国が自然消滅してしまうのではなかろうか。
調べた単語などとして、「幽体離脱話法:前大統領朴槿恵パク・クネが使用している。自分のことをほかの人のことのように話す」、「ナムル:もやし、ぜんまいなどの山菜、野菜を塩ゆでして味付けしたもの」、「リップグロス:化粧品。油分が多く、柔らかい。発色は薄い」
心に残ったセリフや記述などとして、「わたしも先生になりたかった(女子だから教育を受けられなかった)」、「女はお金を稼いで男に貢ぐもの」、「母性愛は宗教なのか」、「男はみんな性犯罪者(予備軍)のような表現」、「(大韓民国は)セクハラ予防教育が浸透していない」、「2013年度から無償保育が始まった」、「スーパーのアルバイト、時給約600円」、「女性には徴兵制がないことを男性は不公平だと考えている)」
「キム・ジヨン」という女性像は、韓国における1980年代生まれの一般的な女性像だそうです。お名前もよくある名前だそうです。いろいろと考えさせられました。
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