2019年09月02日

北の国から‘83冬 DVD

北の国から‘83冬 DVD

 「郷愁」とか「故郷」がテーマなのでしょう。傷つき疲れ果ててもふるさとは優しく迎えてくれるという期待感です。
 脚本、役者、音楽、情景、北海道という舞台上で演劇を見ているようでした。心を揺り動かすドラマに仕立ててあります。時代背景において、共通体験があると感動に導かれるのでしょう。
 冒頭、白い雪の中で、そりを押す小学生の純と蛍を見ると思わず「がんばれ、がんばれ」とつぶやいてしまいます。
 もう36年ぐらい前の作品です。
 笠松正吉の母親が、借金の保証人に黒板五郎になってもらい、借金を返せなくなります。黒板五郎は土地と家をとられそうになりますが、集落の面々が助けてくれます。
 正吉が家出をして、捜索願が出されて、再会した母親がびしばしと正吉を叩くわけですが、愛情がこもっています。母親がおろおろと走る姿がテレビドラマシリーズを思い出してなつかしい。
 笠智衆さんが今でいうところの認知症役です。大金持ちだったけれど、借金で、妻子を捨てて東京へ姿をくらましていた。痴ほう状態になって、30年ぶりに富良野へ戻ってきた。長生きはしたけれど、一緒にいた仲間はもうみんな亡くなっています。
 蛍がだれにも優しい。暗くて緊張した雰囲気のなかで、ほっとさせられます。
 風吹ジュンさんも若い。今はおばあさん役を演じる人になりました。
 亡くなっている役者さんもいますが、亡くなっても作品は残ります。作品の中で生き続ける人たちです。
 今ならわかりますが、お金で済むことなら難易度は軽い。人の生き死にがからむと深刻です。そんなことを考えながら観ていたら、小学生の笠松正吉君が雪下ろし中に屋根から転落して雪に埋まってしまい死にそうになりました。それはやばい。
 だまされた感じがする黒板五郎ですが、だました相手の正吉の母親みどりを許します。義理人情噺(ばなし)の裏に融通があった時代の感情でしょう。
 北海道の山を背景にした雪景色が美しい。
 登場人物たちは、言いたいことがあっても言い出せない、もどかしいドラマです。「村は家族も同然」村の部分を会社に置き換えることもできる昔がありました。
 「おじいちゃんは30年前に故郷(くに)を捨てたのよ。あなたには、何も(財産は)残っていない。いやなことだって思い出してよ」のセリフがじんときました。でも、笠智衆さんは、思い出せないのです。自分が何者かわからなくなっても生きているってなんなんだろう。

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