2019年08月19日

ぼくは気の小さいサメ次郎といいます 岩佐めぐみ

ぼくは気の小さいサメ次郎といいます 岩佐めぐみ 偕成社

 最初に気になることがあります。「次郎」です。サメ次郎とカメ次郎が出てきます。「太郎」は出てきません。ということは、つまり、これは、次男の物語なのです。長男の世界と次男以下の世界は異なります。読み終えましたが、そのことは、物語とは関連がありませんでした。
 クヨクヨしているサメです。サメのくせに。怖い顔をしているくせに、とんがった歯が口に並んでいるくせに。気が弱いサメです。友だちがいなことを苦にしています。
 「手紙」が仲介役のともだちづくりです。
 うつのサメです。名前をさいとうサメ次郎といいます。
 サメくんが、自分のもつ強い力に気づけていないところが残念です。
 友だちになってもらう候補として、ラッコのプカプカさんが浮上します。ふたりは、手紙でやりとりをして交友を深めるのです。
 今では、メール発信・受信、ラインなどのソーシャル・ネットワークが普及したので、今後、「手紙」を素材にした物語は生き残れるのかということが頭に浮かびます。
 38ページの絵はおもしろい。サメ次郎の自宅に郵便ポストができました。カメ次郎作です。
 幼子の素直な悩みに対してていねいに回答してあげる優しさがある物語です。
 アザラシ配達員には、しっかり働くという精神論と倫理観が備わっています。
 仲介役・交渉役であるカメ次郎の存在が大きい。
 「ザラシー」というアザラシもどきの配達員の存在意味がちょっとはっきりしません。偽物より本物になりなさいなのか。偽物は偽物のままで生きていく人生もあります。

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