2019年06月06日

どうぞのいす 香山美子

どうぞのいす 香山美子(こうやま・よしこ)作 柿本幸造・絵

 1981年発行、2019年3月で129刷のロングセラー絵本です。
 タイトルから察すると、たとえば、幼児同士が、おもちゃのとりあいというトラブルを回避するために相手にゆずる「どーぞ」を想像するのですが、この絵本の内容はそれとは異なります。
 「どうぞのいす」の始まりです。
 うさぎさんが大工仕事で、お手製のちいさな木製椅子をつくります。
 のこぎりで、ぎこぎこ、かなづちで、くぎうち、とんとんです。
 よいしょっと。できあがり。
 丘の上にいすをおいて、そのよこに「どうぞのいす」と書いた看板を立てました。
 すずめたちが、ちゅんちゅんとさえずりながら、看板をながめています。
 どんぐりをたくさん背負ったろばさんが登場しました。
 ろばさんは、うさぎがつくったいすにすわるのかと思いきやすわりません。
 いすのうえにはどんぐりをのせて、ろばさんは、そばの木によりかかって眠ってしまいました。ねんねー
 ろばさんは、どんぐりひろいで、つかれてしまったのでしょう。
 「つい おひるね」してしまいましたとありますが、「つい」ではなくても疲れたらおひるねしてね。
 とおりかかったくまさんが、いすのうえにおいてあったどんぐりを食べてしまいました。だって、「どうぞ」の看板があるからです。
 かごからもらったら、おかえしになにかをかごに入れなければなりません。日本人の慣例です。もらったら、お返しをします。
 どんぐりのかわりに、「びんいりはちみつ」 オッケーです。
 パンをかかえたきつねさん登場
 パンにはちみつをつけて食べましょう。
 でも、きつねさんは、はちみつだけをなめなめしました。
 すずめが、からになったはちみつびんをなめています。はちみつのかわりがパンです。
 日本人らしい作品です。日本人は、自分はどう思うかの前に、ほかの人はどう思うかを考えます。
 最後にどうなったかは、ここには書きません。
 おとなしいお話でした。
 どんぐりは、なにかに変化しました。眠りから目を覚ましたろばさんは、ものすごくは、びっくりしていません。
 最後のページ、一日が終わる夕映えです。平和です。めでたし、めでたし。

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