2019年04月26日

ある男 平野啓一郎

ある男 平野啓一郎 文藝春秋

 書評の評判が良かったので手に入れて読み始めました。おもしろい。
 宮崎県おそらく西都市(さいとし)にある文房具店主女性のご主人39歳が、林業伐採事故により急逝するですが、彼は、「谷口大祐(たにぐち・だいすけ)」という人物であったのですが、実は、別人なのです。そして、亡くなったご主人が、だれなのかが判明しません。

 弁護士木戸章良(きど・あきよし)が、事故死した身元不明男性の妻である谷口里恵さんの代理人となって事実調査に乗り出します。
 
 つくり話にだまされる。詐欺ですが、実害が出ていません。
 亡くなってしまったXという謎の人物は、物静かで心優しい人でした。
 推理小説の要素がある小説です。
 もしかしたらX(エックス)は在日外国人か。
 所帯離れした記述内容です。夜の繁華街で輝く記述です。好みが別れるところです。
 Xは、谷口大祐本人が、整形した様子でもない。本当の谷口大祐は、いま、どこでどうしているのか。

 短命の人には、本人が好きなことをやらせたい。人生の長さが限られている。

 訴訟内容のあたりから、作品内容と読み手である自分との間に距離感が生まれてきました。自分にとってはつまらなくなってきました。

 弁護士が容疑者の真似をする。

 世界大戦、ヨーロッパ映画のなかであった出来事のようなイメージが湧いてきました。「ひまわり」とか、「シェルブールの雨傘」とか。

 東日本大震災の記述が登場します。

 関東大震災発生時の朝鮮人虐殺の話が出ます。弁護士自身の在日三世であることへのこだわりがあります。
 
 「存在」について考える小説です。

 日々会う人、利害関係がある人、つきあいが濃厚な人、それら以外の人は、当人にとっては、「存在」があってもなくても同じ。

 戸籍の話になってきます。
 なりすましです。身元のロンダリング(洗浄)
 
 家庭人になれない男性や女性がいます。
 弁護士をしていても、離婚して自分の子どもの親権を争うこともあります。

 Xがだれなのかを小説のなかで明らかにする必要はないと思いながら読んでいますが、明らかになりました。
 内容の雰囲気は暗い。
 死んでしまった人のことをあれこれと詮索しても、もう終わったことです。
 犯罪加害者の家族を救うための物語です。

(つづく)

 読み終えました。自分には合わない内容でした。
 作者と共有するものがないので、わからない部分が多かった。洋酒の銘柄とか、音楽とか。
 なぜ、面会場所が名古屋なのだろう。新幹線の中は会話がしにくい。新幹線は、ビジネス列車です。
 同時進行の話として、弁護士の家庭内のいざこざがしっくりこない。

 犯罪加害者の親族について、これまでとは違う切り口からのアプローチを試みた作品でした。

 「お墓」に愛着をもつ時代は終焉を迎えています。納骨堂とか散骨の時代が始まっています。

 名セリフなどの趣旨として、「他人の傷を生きることで自分自身を保つ」、「ただ、普通の人間になりたかった」、「(樹木は)50年が樹齢、あとの50年が建材」(人間に似ている。40年がサラリーマン、30年が自分の時間)

 調べた漢字などとして、「寧ろ:むしろ。あれよりもこれ」、「虚血性心不全:血流阻害、心臓病の総称」、「目を瞠る:めをみはる」、「収斂:しゅうれん。集める」、「欺瞞:ぎまん。あざむく」、「スカジャン:派手なジャンパー」、「悋気:りんき。やきもち」、「衒気:げんき。自分の才能をみせびらかして自慢する」

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