2019年03月09日

萩原朔太郎詩集

萩原朔太郎詩集 新潮文庫

 詩人。1886年-1942年(明治19年-昭和17年)55歳没
 本人のコメントを解釈すると、「詩とは、積極的に感情を表に出すこと」「主観の訴え」「成長はないけれど、変化はある。進歩はない」

「月に吠える」
 表現するのは「孤独」です。人はひとりでは、いつも永久に恐ろしい孤独であるとあります。人は単位で生まれて、単位で死んでいくともあります。自分自身の影を地上に釘づけにしたいとあり、そのような表現はなかなかできません。
 初版が大正6年ですから、1917年ですからもう102年も前です。調べた言葉として、「エポック:新時代」、「重さ五匁:もんめ。3.75g×5=19g」、「桃李:とうり。ももとすもも。優れた門下生」
 詩「竹」はすがすがしい。まっすぐのびているのが、竹です。さびしい地面の底から竹がのびているのです。
 5月の朝の新緑と薫風が生活を貴族にするとあります。暖かい日にする布団干しの幸福感を思い出します。
 読んでいると気持ちが落ち着きます。

「青猫」
 「月の吠える」ほどは好みではありません。心に響いてきません。
 理屈っぽくて堅苦しいのは、広がりがなくなります。
 軍隊、戦争の影があります。

「純情小曲集」
 フランスに行きたいけれどもフランスは遠いからいけないというような記述で、読んでいて心が落ち着く言葉表現です。
 「帰郷」は、昭和4年という記事があり、時代を感じさせます。

「散文詩」
 田舎暮らしの分析は当時のこととして的確です。未来の今読むと変化しています。世の習いの通りには人は生活しなくなりました。婚姻、出産、葬式の形態は変わりましたし、昔の慣例どおりにしない人も増えました。
 
 全体をとおしてですが、詩には緊張感があります。自分を追い込むような雰囲気もあります。
 「解説」を読むと、本人の境遇は、詩の内容とは違って、生家が裕福で、気持ちのおもむくままに遊惰放逸(ゆうだほういつ。仕事をしないでぶらぶら、勝手気ままに遊びほうけていた)とあります。それでも思春期の頃の本人は孤独な思いにどっぷりつかっていたのでしょう。
 「月に吠える」は大正6年の作品です。明治に育ち、大正で独創性を確立し、昭和で大成した人とあります。その解説が書かれたのも昭和25年のことであり、もう70年ぐらい前のことです。人生は長くて遠い。

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