2018年12月24日

居た場所 高山羽根子

居た場所 高山羽根子 文藝2018冬号 河出書房新社

 第160回芥川賞候補作です。2019年1月16日(水)に発表があります。

 「私」と名のる男のひとり語りで原稿用紙147枚の物語が進行します。前半の3分の1ぐらいあたりまで読みました。
 このへんまでは、話が明瞭ではなく、霧の中に形がぼんやり見えるような雰囲気でしたが、中国人妻の故郷への夫婦旅行から輪郭がはっきりしてきました。
 ページにびっしりの文字が埋め込まれていますが、文章は読みやすい。
 
 グーグルマップは、小説や映画の素材として使えます。

 文章には、日常生活の広がりがあります。しみじみとした情感が伝わってきます。
 細かい情景描写が続きます。心地よい。
 テレビ番組「東野・岡村の旅猿」での東南アジアでの移動シーンを観ているようです。

(つづく)

 読み終えましたが、よくわかりません。もう一度読まなければならないのかもしれません。
 マップにモザイクがかかったような不明な場所があります。そこが、中国人妻小翠(シャオツイ)がひとり暮らしをしていた場所です。「居た場所」です。そこを夫婦は訪ねていきます。

 妻が小学生の頃に住んでいた島の小学校で遺跡が発見されます。こどもだった妻は、発掘現場にあった壺の中の水を飲みます。
 水が発作の原因です。この旅で夫婦ともに発作にみまわれるのですが、それが何を意味するのかがわかりません。
 
 夫婦の仕事は、日本酒の醸造を自営で営んでいるのだと思いますが明記はされていません。醸造から「微生物」が導き出されています。
 書中の言葉を借りれば、人間の体の中には、小さな生き物たちがいる。

 地図をつくる。しかし、地図は書けない。

 言葉にはならない「愛情」なのか。

 調べた単語などとして、「咥える:(ストローを)くわえる」、「呑気:のんき」、「蠟:ろう」、「キメラ:ギリシャ神話の怪獣。頭はライオン、尾は蛇、胴はヤギで、口から火を吹く」

(再読)
 主人公日本人男性の妻、おそらく中国人であろう小翠(シャオツイ。親族は、みどりさんと呼ぶ)のルーツを探る。舞台は、上海か香港のような気がします。台湾ではないと思う。
 彼女の起源は消滅したらしき小柄な民族ではないか。そこにしかいない動物として「タッタ」、モルモットより少し大きい、食用にもなるし、ペットにもなる。シャオツイとタッタを重ねてあるのか。
 蜜のように見える薄い草色の液体、透きとおっていて、とろみがある。粘り気がある。液体の浮遊物が文字を形成しようとしているように見える。観たこともない文字。液体は、味がないようであるのではないかという考察があります。液体に何かの意味があります。醸造と微生物。謎解きをするような読書です。
 話は、現在から過去へ移ります。だから今があるのです。
 空撮禁止地域のような区域の地図をつくる。そこは軍事施設ではない。
 シャオツイはどこから来たのか。
 発作は微生物が体に侵入して心身を害したのか。
 自分はどこから来たのか。所属を求める。

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