2018年12月21日

1R1分34秒 町屋良平

1R1分34秒(1ラウンド1ぷん34びょう) 町屋良平 201811新潮

 第160回芥川賞候補作になりました。読んだのは候補になる前です。2019年1月16日(水)に賞の発表があります。

 ボクシングのお話しだろうとして、読み始めています。タイトルは、ノックアウトされる瞬間なのか、それとも、ノックアウトするほうなのか。それにしても、ダウンの時期が早い。
 「ぼく」21歳のひとり語り一人称です。デビュー戦1ラウンドKO勝ち、その後、2敗1分け。試合の前に夢の中で対戦相手と親友になる夢をみてしまう。

 読み手は、何を感じればいいのだろうか。

 漢字を意図的にひらがな表記してあります。そこが文の特徴です。光→ひかり、最初→さいしょ、知って→しってなど。

 自問自答の文章が続きます。

 ボクシングも男女関係も空想の世界。主人公にとって近藤青志は、なりたい自分か。青志に対する友情は、主人公である「ぼく」からの一方通行です。

 文脈にリズムがあります。

(つづく)

 主役には、「死にたい願望」があります。

 iPhoneのことがよく出てきます。映画製作を夢みる友人との結びつきです。

 自分は、ボクサーは、こういうことを考えたり、感じたりしないのだろうと思いながら読んでいます。ボクサーを想像して、「孤独」と「愛に飢える22歳の青年の心理をあぶりだす」、「死に近い生(せい)」があります。破壊は再建。二重人格的な部分あり。人生の迷いです。死にたいと思いながらも生きています。せっぱつまっているエネルギーはすさまじい。

 トレーナ役であるウメキチとの信頼関係が構築されていきます。

 減量と運動で、心身を極限状態にもっていきます。

 調べた単語などとして、「拵えた:こしらえた」、「滲む:にじむ」、「rscブランド:ボクシングファッションブランド」、「証左:しょうさ。証拠」、「ダッキング:上体をかがめて相手のパンチを避ける」、「オブジェ:物体」、「フェーズ:段階、局面」、「充溢:じゅういつ。満ちあふれる」、「纏める:まとめる」、「疚しさ:やましさ」、「溜まる:たまる」、「過った:あやまった」、「昂った:たかぶった。高揚、興奮」、「心至った:こころいたった」、「嵌める:はめる」、「ウィービング:防御。頭や上体を前後左右に動かす」、「サークリング:円を描くように左右にステップする」、「怯み:ひるみ。おびえ」、「拙さ:つたなさ」、「夜気:夜の冷たい空気」、「蹲る:うずくまる」、「朧げ:おぼろげ」、「コラージュ:貼り付け」、「嗽:うがい」、「労い:ねぎらい」、「パラレル:並行」

 気に入った表現などとして、「筋肉痛は友だち」、「ぼくの闘志はどうして反応しない」、「(パンチを与えるのではなく)相手を(こぶしで)押せ」、「今度こそ脳を壊してほしい」、「おまえを利用しているだけだ」、「ボクサーになって実家に絶縁された」、「試合が怖い」、「ボクサーとしての自分しかない」、「生きることを考えるのをいったん止める」、「現実のぼくとはぐれたぼく」

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