2018年07月26日
島のエアライン 上・下 黒木亮
島のエアライン 上・下 黒木亮(くろき・りょう)
ああ、こういう本があるんだなあと書店で手に取りました。熊本県の天草(あまくさ)という島に小型機が離発着する小さな空港があります。13年ぐらい前、その近くに用事があったとき、帰路の車で近くを通りかかったものですから偶然ですが現地に立ち寄り滑走路を眺めました。飛行機が飛んでいない時間帯だったようで静かでした。福岡空港と天草空港まで35分ぐらいだったと思います。近い。車や電車だと半日~1日かかります。下島(しもじまとかみしまがあります。)の下端の位置だとかなり遠いです。雑談で、その飛行機に乗ったことがある人から話を聞いたことがありますが、短時間で快適、それから景色がいいとのことでした。以前は、そこを飛ぶ飛行機の故障記事を新聞でよく見かけましたがもう長いこと、そういった記事は見ていません。機種が変わったのでしょう。
まだ、100ページぐらいしか読んでいませんが、独特な本です。読みはじめた動機は、天草地方の美しい海とか橋の風景が文章で表されているといいなというものでした。風景描画記述はあるものの量的には少ないのでちょっと期待外れです。(P129阿蘇の風景、P243島原湾、雲仙岳)
小説の内容は、国と県、地元自治体、企業による空港設置のドキュメントです。プロジェクトXみたい。企業、官公庁の記録誌のようです。ただ、こういう本が、本屋大賞候補作に選ばれたりしますので、いちおう読んでおきます。上下巻で600ページぐらいです。
航空機はプロペラ式のたしかカナダのボンバルディアというような名称の機体でしたが、その後変わっているようです。40人乗りぐらいです。福岡―天草ルートだったと思います。
平成3年ごろバブル経済がはじけて、空港はできるけれど、主体となる航空会社が決まらないとい。
舞台は、熊本県庁、国土省、島内各市町の自治体です。
平成8年ぐらいからの話です。
思い出すに、熊本空港までは航空機で早いのですが、そこから、天草という島までがとても遠かった。航空機で得した時間が、車やバスの時間でくいつぶされてしまう。熊本空港―熊本駅―本渡(ほんど)。本渡から各市町までがまた車で1時間ぐらいかかる。とても遠い。その昔は、天草五橋もなく、船で行き来していました。たぶん車だとフェリーだったでしょう。飛行場が欲しい土地柄だと思います。
観光客を呼び込む手段でしょう。イルカの群生がPRされ始めたのはもっとあとの時代だったと思います。
採算がありますから、まず、地元の人たちが飛行機を利用しなければならないでしょう。廃線寸前の国鉄線路を思い出します。
実名で登場とありますので、当事者から聴き取りをして、文章化して、おそらく内容については、事前に当事者の了解を得てあるのでしょう。そうやってできあがっている本だと推察します。
地縁が強調されています。確かに大切です。だれかのために、地元のために、地元の人たちのために働く。
(つづく)
上巻を読み終えました。通常の小説とは違って、業務日誌形式を読む形態で読書を楽しんでいます。
島ではパチンコが大きな産業の部分を読んで、ギャンブルで入って来たお金を町の整備に回すと考えました。
読んでいて、何だろう。企画を提案する者がいる。必ずその提案に反対する者が出てくる。どこにでもある対立の構図です。最後は多数決で決する。選挙は戦(いくさ)です。
何でも反対する者がいます。何でも反対する者に企画提案実行する能力があるとは思えません。オリジナルで発想提案できないから既存の提案に反対する。読みながら、いろいろなことを考えました。深く考えましたが、ここに書くことはやめておきます。
天草エアライン株式会社。民間29社からの出資9900万円、熊本県と地元2市13町からの出資が4億円、あわせて4億9900万円。すごいなあ。自治体が主体の第三セクターです。地方公務員の航空機素人集団が飛行機会社をつくりました。
メディアはなぜ、それを攻撃するのだろう。バックアップすることが本来の役割ではなかろうか。地元に住む人たちの総意でここまできているのだから。
良かった表現の主旨などとして、「天草は、食事がおいしい、人情がある。島民のために力を貸してください。」、「人物本位で採用する。」、「一生懸命だけでは空の安全は確保されない。」、「うちは税金でつくられた第3セクター(だから給料が安い。)」、「藍より青く。原作山田太一」、「給料は稼ぐもので、もらうものではない。」、「天草エアラインは天草の宝」、「現場主義」、「せっかち」、「欠航率」、「無報酬」、「発想に人の優しさがある。」、「医療に貢献」、「イルカを塗り替えないで」、「可愛いを意味するみぞか号」、「あの人たちは天草のことを考えていない」、「風当たりが強い」、「同じ頃」
航空機マニアとか関係者じゃないとわからない記述もあります。
P150で、平成11年7月に羽田発新千歳空港行きジャンボ機がナイフを持った男にハイジャックされて、飛行中にパイロットが刺殺された事件が書いてあります。副操縦士とたまたま乗客で乗り合わせていたパイロットのおかげで乗客は助かっています。卑劣な行為です。先日の新幹線内刺殺事件と合わせて憤りを感じます。社会はお互いの信頼関係で成立しています。
昔テレビドラマであった、「のろまでなんとかのカメ…」を思い出しました。ああ、スチュワーデス物語です。
読んでいて当初は初歩的なミスが多かったのだなあと思いました。
仕事(毎日、同じ動作の繰り返し)として定着していく経過がいい。
(つづく)
下巻に移りました。
平成13年6月29日からです。2001年です。
読んでいて、MRJ(小型旅客機、三菱重工、2020年運用開始予定、70人~90人ぐらいの乗車数)を思い出しました。
お金の話、お金がない話、人が離れていく話、なんだか、暗い話題が続きます。機長がトイレ掃除、ごみ掃除を自発的にやられています。頭が下がります。
機体は、買取りではなくて、リース(借りる)もありか。
従事職員はだれでもいいというわけにはいかない。十分な能力経験者がいなければ欠員もやむなしか。もう、今の時代、アル中の人は雇えません。
倫理観のない会社や人はいずれつぶれます。
項目を並べて記述する作業が続きます。
記者はたいていのことについて素人です。
一方からの話なので鵜呑みにできない面もあります。
天草空港から熊本空港まで片道わずか20分間ぐらいの飛行です。短い。驚きました。
県と市と町の地方公務員の物語です。
部品の中にほんのごくちいさな削りカスがあることで運航休止です。生命の安全のためにはしかたありません。
五右衛門ぶろはなつかしい。小さい頃、入ったことがあります。怖かった。
愛想がいいだけでは仕事にならない。
航空運賃が、タクシー代よりも安く感じました。
ああ、こういう本があるんだなあと書店で手に取りました。熊本県の天草(あまくさ)という島に小型機が離発着する小さな空港があります。13年ぐらい前、その近くに用事があったとき、帰路の車で近くを通りかかったものですから偶然ですが現地に立ち寄り滑走路を眺めました。飛行機が飛んでいない時間帯だったようで静かでした。福岡空港と天草空港まで35分ぐらいだったと思います。近い。車や電車だと半日~1日かかります。下島(しもじまとかみしまがあります。)の下端の位置だとかなり遠いです。雑談で、その飛行機に乗ったことがある人から話を聞いたことがありますが、短時間で快適、それから景色がいいとのことでした。以前は、そこを飛ぶ飛行機の故障記事を新聞でよく見かけましたがもう長いこと、そういった記事は見ていません。機種が変わったのでしょう。
まだ、100ページぐらいしか読んでいませんが、独特な本です。読みはじめた動機は、天草地方の美しい海とか橋の風景が文章で表されているといいなというものでした。風景描画記述はあるものの量的には少ないのでちょっと期待外れです。(P129阿蘇の風景、P243島原湾、雲仙岳)
小説の内容は、国と県、地元自治体、企業による空港設置のドキュメントです。プロジェクトXみたい。企業、官公庁の記録誌のようです。ただ、こういう本が、本屋大賞候補作に選ばれたりしますので、いちおう読んでおきます。上下巻で600ページぐらいです。
航空機はプロペラ式のたしかカナダのボンバルディアというような名称の機体でしたが、その後変わっているようです。40人乗りぐらいです。福岡―天草ルートだったと思います。
平成3年ごろバブル経済がはじけて、空港はできるけれど、主体となる航空会社が決まらないとい。
舞台は、熊本県庁、国土省、島内各市町の自治体です。
平成8年ぐらいからの話です。
思い出すに、熊本空港までは航空機で早いのですが、そこから、天草という島までがとても遠かった。航空機で得した時間が、車やバスの時間でくいつぶされてしまう。熊本空港―熊本駅―本渡(ほんど)。本渡から各市町までがまた車で1時間ぐらいかかる。とても遠い。その昔は、天草五橋もなく、船で行き来していました。たぶん車だとフェリーだったでしょう。飛行場が欲しい土地柄だと思います。
観光客を呼び込む手段でしょう。イルカの群生がPRされ始めたのはもっとあとの時代だったと思います。
採算がありますから、まず、地元の人たちが飛行機を利用しなければならないでしょう。廃線寸前の国鉄線路を思い出します。
実名で登場とありますので、当事者から聴き取りをして、文章化して、おそらく内容については、事前に当事者の了解を得てあるのでしょう。そうやってできあがっている本だと推察します。
地縁が強調されています。確かに大切です。だれかのために、地元のために、地元の人たちのために働く。
(つづく)
上巻を読み終えました。通常の小説とは違って、業務日誌形式を読む形態で読書を楽しんでいます。
島ではパチンコが大きな産業の部分を読んで、ギャンブルで入って来たお金を町の整備に回すと考えました。
読んでいて、何だろう。企画を提案する者がいる。必ずその提案に反対する者が出てくる。どこにでもある対立の構図です。最後は多数決で決する。選挙は戦(いくさ)です。
何でも反対する者がいます。何でも反対する者に企画提案実行する能力があるとは思えません。オリジナルで発想提案できないから既存の提案に反対する。読みながら、いろいろなことを考えました。深く考えましたが、ここに書くことはやめておきます。
天草エアライン株式会社。民間29社からの出資9900万円、熊本県と地元2市13町からの出資が4億円、あわせて4億9900万円。すごいなあ。自治体が主体の第三セクターです。地方公務員の航空機素人集団が飛行機会社をつくりました。
メディアはなぜ、それを攻撃するのだろう。バックアップすることが本来の役割ではなかろうか。地元に住む人たちの総意でここまできているのだから。
良かった表現の主旨などとして、「天草は、食事がおいしい、人情がある。島民のために力を貸してください。」、「人物本位で採用する。」、「一生懸命だけでは空の安全は確保されない。」、「うちは税金でつくられた第3セクター(だから給料が安い。)」、「藍より青く。原作山田太一」、「給料は稼ぐもので、もらうものではない。」、「天草エアラインは天草の宝」、「現場主義」、「せっかち」、「欠航率」、「無報酬」、「発想に人の優しさがある。」、「医療に貢献」、「イルカを塗り替えないで」、「可愛いを意味するみぞか号」、「あの人たちは天草のことを考えていない」、「風当たりが強い」、「同じ頃」
航空機マニアとか関係者じゃないとわからない記述もあります。
P150で、平成11年7月に羽田発新千歳空港行きジャンボ機がナイフを持った男にハイジャックされて、飛行中にパイロットが刺殺された事件が書いてあります。副操縦士とたまたま乗客で乗り合わせていたパイロットのおかげで乗客は助かっています。卑劣な行為です。先日の新幹線内刺殺事件と合わせて憤りを感じます。社会はお互いの信頼関係で成立しています。
昔テレビドラマであった、「のろまでなんとかのカメ…」を思い出しました。ああ、スチュワーデス物語です。
読んでいて当初は初歩的なミスが多かったのだなあと思いました。
仕事(毎日、同じ動作の繰り返し)として定着していく経過がいい。
(つづく)
下巻に移りました。
平成13年6月29日からです。2001年です。
読んでいて、MRJ(小型旅客機、三菱重工、2020年運用開始予定、70人~90人ぐらいの乗車数)を思い出しました。
お金の話、お金がない話、人が離れていく話、なんだか、暗い話題が続きます。機長がトイレ掃除、ごみ掃除を自発的にやられています。頭が下がります。
機体は、買取りではなくて、リース(借りる)もありか。
従事職員はだれでもいいというわけにはいかない。十分な能力経験者がいなければ欠員もやむなしか。もう、今の時代、アル中の人は雇えません。
倫理観のない会社や人はいずれつぶれます。
項目を並べて記述する作業が続きます。
記者はたいていのことについて素人です。
一方からの話なので鵜呑みにできない面もあります。
天草空港から熊本空港まで片道わずか20分間ぐらいの飛行です。短い。驚きました。
県と市と町の地方公務員の物語です。
部品の中にほんのごくちいさな削りカスがあることで運航休止です。生命の安全のためにはしかたありません。
五右衛門ぶろはなつかしい。小さい頃、入ったことがあります。怖かった。
愛想がいいだけでは仕事にならない。
航空運賃が、タクシー代よりも安く感じました。
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