2018年07月07日

わたし、定時で帰ります。 朱野帰子

わたし、定時で帰ります。 朱野帰子(あけの・かえるこ) 新潮社

 東山結衣(ひがしやま・ゆい)32歳民間会社社員ホームページ作成制作部所属が残業をせずに帰宅する物語です。

 中華料理店で見かけるさかさ「福」の意味がわかりました。福が到来するというおまじない。
 東山結衣は自宅通勤で家族がいるみたいなのに、なぜ家で夕食を食べないのだろう。(読み進めていくと小学生の頃、親は仕事で、家族そろって夕食をとることがなかった、できなかった、それが不満だったとあり、じゃあいまはどうして定時で社を出て入店時刻で安くなる生ビールを飲みにいくのだろうと疑問が湧きました。)
 「火鍋:中国の辛みの強い鍋料理。肉、野菜、魚、スープ。ひなべ」
 
 結婚するための両家の顔合わせの日に、長時間過労勤務で寝坊して、顔を出せない男がいるのだろうか。その後、破談したのに当人同士やきょうだい、両親とのつきあいが継続するとは思えません。設定に無理があります。

 出勤皆勤賞の三谷佳菜子さんへの攻撃があるのですが、学校や出勤の皆勤賞を否定することになんの意味があるのだろう。

印象に残った表現の趣旨として、「わたしたち(就職)氷河期世代」、「過労死に近づく状態」

「インパール:第二次世界大戦中の日本軍の無謀な作戦。強引で無理な作戦により兵士の大量死を招いた。」

(つづく)

 産休後6週間で復帰して、フルタイム勤務、すぐ残業はありえない。通常いったん申請して認められた取得期間8週間を前倒しに短縮することも無理だと思います。

 昭和時代と平成時代の世代間の意識差があります。昭和時代の労働者は、週休二日制ではなかったし、10年間ぐらい年休を1日も取得したことがない労働者はいくらでもいましたし、会社が家庭、社員が家族という雰囲気もありました。当時はそれがあたりまえのふつうのことで、とくべつに驚くことでもありませんでした。そのみかえりがお金でした。とくに残業賃は生活給の一部でした。残業を嫌がるいまどきのひとたちは経済的に余裕があるのだろうか。家にもちかえって仕事をしているのだろうか。(後半、主人公のおとうさんの反論があります。自分は共感する立場です。)

「執行役員:従業員のリーダー」
「サバラン:フランスの焼き菓子」

 決めゼリフがなかなかかっこよくて感じがいい。主旨として、「夫も子どももポスト(地位)もほしい。」、「セクハラがなんだ。」、「後輩に道をつくってやる。」、「現実は甘くない。」

 自分だけなのかもしれませんが、読んでいて、性別がわかりにくい。
 セリフの連続で、風景がない。
 家賃25万円の物件はクレイジー
 
 いったん出した退職願いは、現実には撤回は無理だと思います。

 月60時間以上残業をしてはいけない。狂います。

「唆したな。:そそのかしたな。肝心なところで漢字を読めませんでした。」、「大団円:だいだんえん。すべてがめでたくおさまる結末」

 社会に労働問題の課題を問う作品でした。

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