2017年08月05日

月の満ち欠け 佐藤正午

月の満ち欠け 佐藤正午 岩波書店

 かなりおもしろい。こういう話は読んだことがありません。某作家の「秘密」に似ていますが違います。佐野洋子さんの「百万回生きたねこ」には通じています。
 舞台は青森八戸、千葉稲毛、同市原、船橋、福岡、名古屋、そのほか、知っている地名が次々と出てきます。
 憑依とか、時間移動、輪廻転生、ホラーの要素もあります。
 奇異なものでありますが、(だから、どうした)という気分もあります。それが読み進めるうちに変化しそうです。

 こどもが失踪する。ありがちなことです。親にとっては恐怖です。
 
短い切れ目が読みやすい。
スピーディな展開はわかりやすい。
落語のようです。


読めなかった漢字として、「生気が漲る:みなぎる」、「綽名:あだな」、「首を捩じる:くびをねじる」、「「譫言:うわごと」、「80歳を過ぎて矍鑠:かくしゃく」、「悄気ている:しょげている」、「怯むな:ひるむな」

良かった表現として、「仕事にしか生きがいを見出せない年寄り」、「月のように死んで生まれ変わる」

(つづく)

 なかなかややこしい。メモに書きだしながらつながりを確認していきました。

 内容のデータは古い。
 80年代の出来事
50代後半以降の人が読むと実感する歴史があります。

 煙草に関する記事は、時代遅れですが、時の流れとともに登場人物も禁煙していることから納得がいきます。

 「瑠璃も玻璃も照らせば光る:るりもはりもてらせばひかる。才能のある者はどこにいても目立つ。機会さえあれば活躍する。瑠璃は色付き、玻璃は色なし」

 夫婦間、男女間のやりとりは、リアルです。

 世界のミステリーの雑学書を読んでいるような気になってきました。
 生まれ変わりも、突き詰めていけば、だからどうしたという気になってきます。
 されど、最後は、やはり「愛」でした。
 女性の微妙な優しい気持ちが描かれていて、心に残るいい小説でした。

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