2017年06月08日

チキン 2017課題図書

チキン いとうみく 文研出版 2017課題図書

 英語でチキンは、にわとり以外の意味として、「弱虫」とか「臆病者(おくびょうもの)」があります。この本での「チキン」は、弱虫、臆病者のほうを指します。
3歳時に砂場で、相手にかけようとした砂が風で自分にかかってしまったとか、5歳時に、すべってころんで、頭を切って血が出たとかが、草食系男子になった理由として挙げられています。
 主人公の日色拓(ひいろ・たく)小学校6年生は臆病者です。できるだけ、周囲の人との関係をもたず、めんどうなことに巻き込まれないように生活しています。
その生活を壊すのが、転入生の真中凜(まなか・りん)女子です。正しいことを正しいと主張して周囲との波風を立てます。
 日色拓の隣家で暮らす真中凜です。彼女のおばあさんが、日色拓の仲良し、将棋の相手です。真中は事情があって、父・弟と別居しています。
 
 複数の人間がからみあう心情を詳しくていねいに描いた作品でした。人間、表面と考えていることが反対ということを表現してありました。
 まだ、小学校6年生たちですが、とくに、女子の心理は複雑です。同調したり、無視したりして、自分の気持ちのポジションを保とうとしますが、ときに、破たんします。
 祖父母と暮らしたことがない若者も増えています。どう、接したらいいのかわからない。祖父母世代だけではなく、人とどう接したらいいのかわからない。

 真中凜を日色拓の好きな将棋の駒の「香車(きょうしゃ)」にたとえてあります。香車は、まっすぐ前にしか進めません。進むコマ数は、自分で決められます。真中の性格は香車そのものです。左右に変化できないのです。だから、真正面から人とぶつかります。正しいことを貫く。それは、苦痛を伴うことです。真中は、見た目ほどしっかり立ってはいません。深く悩んでいます。

「言いたいことがあるなら言ってくれ」とか、「言ってもらわないとわからない」というところあたりが、この物語のメッセージです。
人は皆違う。衝突して、妥協点を見つけて協調する。
腐れ縁というものがあります。お互いに対立していても、長い人生、ときにはくっつき、ときには離れとしていても、老後まで付き合いが生き続けます。
自分とぴったり合う人がいるとは思えません。対立しても再び同調できる相手が親友だったり、配偶者であったりします。

 良かったシーンなどです。「梅干し入りの熱いお茶を飲む」、「空気読めないじゃなくて、空気は読まない(読む気はない)」、「話すと楽になれる」

 ちょっとしたこととして、「日色」は「ヒーロー」と重なる。

 ふろしきのバッグとか、将棋とか、おばあちゃんの知恵的項目が入れられています。

 日色拓のおかあさんが起きてきたときに「まだ、8時半だよ」と拓が言ったのにはびっくりしました。いくら平日働いていて疲れていても、ふつうは、もっと早く起きます。

 まだ、みんな小学生です。
 思春期を経て、人は変わります。

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