2017年01月07日

本バスめぐりん。 大崎梢

本バスめぐりん。 大崎梢 東京創元社

移動図書館の短編集です。
図書館バスの名称が「めぐりん号」です。

「テルさん、ウメちゃん」
 人情話でほろりときました。人はかよわいということがよく伝わってきました。
 タイトルのテルさんは、照岡久志さんで60代半ば、定年退職後の仕事として、移動図書館の運転手を初めて2か月半です。ウメちゃんは、20代なかばの梅園奈緒子さんですが、若いけれどベテランの域の図書館司書です。
 1冊の文庫を巡っての借り手である寺沢さんと大島さんのふたりの謎解きです。
「穿鑿:読めませんでした。せんさく。詮索。むやみに憶測してとやかく言う」

「気立てがよくて賢くて」
 20年前、保育園の建設に反対した地域があります。最近よくニュースで耳にする話です。昔、嫌悪施設としては、火葬場とか刑務所が定番でしたが、最近は、老人ホームとか保育園とか、どうして? と思えるところも該当するようになりました。
 その地域が、移動図書館バスの停車する場所から除かれそうになっています。高齢化、少子化で地域力が衰退して、移動図書館の需要が低下したのです。
 めぐりん号の活動は営利目的ではないということが読みながらわかります。
 反対運動というのは、たいてい、どうにもこうにも頑固ないち個人の大声から始まります。そういう人はだれの制止もきかない。周囲はうっとおしいから黙っています。追従したとみなされます。
長年の人生の経験者として思うに、立場はいずれ入れ替わるときが来ます。追い出したものは、いつか追い出されるときがきます。人生とか世の中はというものはそのようにできているのです。プラスマイナス0(ゼロ)になるようにできています。だから、20年前に保育園建設に反対した人たちはもうその地域にはいないのです。
お互いさまという発想がない人がいます。なにがなんでも自分の思いどおりにするという人がいます。病気のようでもあり、欠陥のようでもあります。困った人です。

本を愛する元書店員さんが書いた本だということがわかります。話は、円満解決へと向かいます。

「ランチタイム・フェイバリット」
 50歳を過ぎたあたりの管理部門での仕事ぶりの部分は実感がありました。若い世代との距離感ができるという内容でした。
 移動図書館バスを利用したことがありませんし、見たこともないので、本のその説明部分を読むとほーっという新しいことの発見があります。バスの中に3000冊もの大量の本が格納されているということは驚きでした。
 この短編作品は、これまでのものとは異なる雰囲気で硬さがあります。文章のリズム感ものっていません。仕掛けの内容には読んでいる途中気づけるのですが、最終的に味わいが広がりませんでした。
「杜撰:ずさん。むずかしい漢字です」

「道を照らす花」
 郊外にできた昔のニュータウンは、今はもうオールドタウンです。この物語の設定場所自体も古い。
 評価する視点が、物語全体の雰囲気に影響しています。硬さにつながっています。
 女子中学生を主人公として扱っています。うーん。なんだか、これはこうであるという悟りきった内容を読者に押し付けられているような。
 14歳、中学2年生の心理は、もっと複雑な気がします。
 全体的に登場人物たちが善人ばかりの作品群です。落ち着いて毎日少しずつゆっくりよみながらストレスをいやしていくのにはいい作品です。

「降っても晴れても」
 移動図書館という設定での物語創作は、ネタが少なくむずかしいのではないかと感じました。


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