2015年07月20日

アンタッチャブル 馳星周

アンタッチャブル 馳星周(はせせいしゅう) 毎日新聞出版

 読みかけている途中、7月16日に、直木賞の発表がありました。まだ、読んでいない「流(りゅう)」が選ばれました。気が抜けてしまいましたが、こちらの小説を読み続けます。
 セリフの連続形式で進行していく構成です。映像化が目的なのかもしれません。アンタッチャブルと称される警視庁公安部外事三課特別事項捜査係椿係長(警視)は、奥田英朗空中ブランコに登場する伊良部Dr.と個性がかぶります。ふとっちょで子どもっぽい。されど頭脳明晰、行動力あり。ただ、椿係長は、結婚生活をうまくやれず、ライバルに妻を寝取られて離婚して、精神が壊れしまったとなっているのが、この小説の100ページ過ぎあたりまでの展開です。
 椿係長の部下が、捜査一課から追跡中の交通事故不祥事で左遷された宮澤武巡査(巡査部長)です。彼は、この設定にしては、癖のない個性です。
 どうして候補作なのだろう。疑問をもちながら読み続けています。コメディの刑事ものという雰囲気です。
 キャリアにおける(大卒における)警察の階級は、警部補→警部→警視→警視正→警視長→警視監→警視総監・警察長官。作品中では、肩書が二重構造になっているようで、わかりにくのですが、椿係長がおおいに陥落、転落したということは理解できます。
 公安はスパイを操作する部署となっています。とくに北朝鮮スパイに狙いが定められている小説です。
 パイプ話があります。たばこ関連の記述は、今の禁煙時代、映像にするのはむずかしい。
 そして、尾行。地下鉄大江戸線、麻布十番かいわい、両国行は、以前利用したことがあるので身近に感じました。
 刑事ごっこのような雰囲気が続く。


(つづく)

 400ページまできました。あと、100ページ。
 短い章の固まりは読みやすい。電車通勤途上の読書に便利です。
 執事が出てきます。なんだったっけ。確か、確かそんな探偵小説がありました。調べたら「謎解きはディナーのあとで」でした。

 犯罪の事前防止が「公安」の役割となっています。犯罪とは、スパイ行為であったり、テロ行為であったりします。
 自分がこどもの頃に「アンタッチャブル」というタイトルの映像番組があったことを思い出しました。
 この小説の中では、椿係長の言葉として、「国を守るためなら、なにをしてもゆるされる」と説明されています。されど、その数ページあとにある「さわらぬ神にたたりなし」のほうが、ぴったりきます。さわらぬ神イコール椿係長です。

 190ページ付近の記述は説得力があります。キャリア(大卒)は、現場にはほとんど出ないから、もって生まれたものに頼るしかない。

 宮澤武巡査部長のつましき給料の話とか、割り勘への文句とか、節約方面の話題が多いのは、この小説がハードボイルド(暴力的、無情)ではないことの証なのでしょう。

 追跡における「点検作業」にたくさんの文章量が費やされています。点検作業とは、追跡されている人間が、自分が追跡されていないかを確認する作業です。

 400ページでふと思ったことです。「千紗」=椿ではないか。あるいは、千紗はもしかしたら男ではないか。考えすぎかもしれません。

(つづく)

 読み終えました。
 いろんな意味でだまされました。
 読むのに要した5時間あまりの時間が惜しい。
 こういうことって、世間でもあるのだろう。望む人も多いのだろう。
 テーマは「復讐」です。

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