2015年06月05日

ブロード街の12日間 2015課題図書

ブロード街の12日間 デボラ・ホプキンソン あすなろ書房 2015課題図書

 さて、課題図書の感想文を書くのもこれが最後です。
 (読み終えてみて)この本は、公衆衛生上の歴史の本でした。

 ブロード街ってどこにあるのだろう。イギリスのロンドンと予想をつけて読み始めました。正解でした。
 もうすぐ13歳になるイール(英語でウナギ)という愛称の少年は、どうもホームレス孤児らしく、ロンドンテムズ川の泥地で探した物を売る、古物商みたいなことを生業(なりわい)にしています。書中では「川くず屋」です。
50ページ付近を読んでいる今は、ちゃんと地下室の部屋という寝る場所が確保できているビールをつくる醸造所(じょうぞうしょ)でメッセンジャー・ボーイとして働いています。

 昨日読み終えた課題図書「希望の海」では、1947年、第二次世界大戦終戦2年後に、イギリス・ロンドンの孤児アーサー・ホブハウスが、孤児移民として、オーストラリアへ船で搬送されていきました。この本「ブロード街の12日間」の281ページに、流刑地オーストラリアという記述が出てきます。
 その時に感想で書いた文章の一部を、そのままここにあてはめておきます。
 <以前、「ロンドン貧乏物語」という本を読んだことがあります。ヘンリー・メイヒュー著でした。
 英国作家が、ロンドンで、呼び売り商人(行商人、店舗をもたず商品を街頭で売る)から取材した結果をまとめた本です。作家は西暦1812年に弁護士の息子として生まれ、1887年に74歳で亡くなっています。日本の時代におきかえると、江戸時代後期から明治時代初期にあたります。
日本の50年ぐらい前の暮らしと共通する点もあります。その本は、読んでいると、過去へ行っている感覚があり、読んでよかった1冊です。
その本のなかでは、男女は14歳から16歳で結婚するとあります。親は早朝から深夜まで働いている。子どもたちは子ども同士で集団になって育っていく。6歳ぐらいから働き出す。学校へは通わない。文字の読み書きはできない。彼らは無知であり、無教育である。貯金の習慣はない。いろいろデメリットらしきことが書かれてありますが「秩序」はあります。>
それ以来、イギリスというのは、王国ではあるけれど、みんながみんな豊かだったわけではないと思うようになりました。

「ブロード街の12日間」のほうは、時代設定が、1854年8月28日(月)から始まります。12日間ですから、9月8日(金)までです。
日本だと明治維新が1868年ですから、江戸時代の終末期です。アメリカからペリーが2度目の日本訪問をして、日本に開国を迫ったときです。
さて、書名からいえば、12日間で何が起こるのだろう。

 登場人物がたくさんです。数ページに文字でたくさんの情報が書かれています。
 整理します。
・主人公イール:もうすぐ13歳 イールは英語でウナギ ウナギ野郎とうあだ名は、テムズ川の泥地で生息していたから。今の寝ぐらは、ブロード街にあるライオンビール醸造所の地下室の部屋。世間的には、テムズ川に流されて6か月間行方不明、死んでいることになっている。何か秘密をもっているが話さない。10歳のときに父病死。その後、母親も病死している。母親はピアノをもっていた。父さんはどこかの事務所で働く立派な事務員だった。イールが9歳のときに父さんが死んだ。イールの弟ヘンリーが6歳のときに母親が死んだ。
【真相は、イールとヘンリーの父親は、人口登録局で働くウィリアム・ファー博士の部下だった。】
・イールの敵対する相手としてフィッシュアイ・ビル・タイラー:元魚屋のワル。68ページまで読んだ今、まだしっかり登場していません。どうもスリ団の親分みたいです。
・親指ジェイク:酒で落ちぶれた元鍛冶屋の男。妻がヘーゼル、こどもたちもいたが、妻子に見捨てられたもよう。
・赤毛のネッド:鍛冶屋だったみたい。ホームレス
・チビのクイニー(女王様):ネコ
・スノウ博士:サックスビル街に住む。麻酔の医師みたい。科学者
・スノウ博士宅の家政婦:ジェーン・ウェザーバーン女性
・ウィリアム・ロジャーズ先生:ふつうの医者
・ミセス・ルイス:夫は巡査。娘がもうすぐ9歳だけどやせこけていて6歳ぐらいにしか見えないアニー・リボン。それから、赤ちゃんのファニー、女児がいる。
・フローリー・ベイカー:もうすぐ13歳の女子。イールに好かれている。2週間したらロンドンの北にある夫婦者メアリー・ティールビーの家で女中として働き始める。
・ダニー:フローリー・ベイカーの兄
・仕立屋グリッグス:コレラにかかってしまう。5歳男児バーニー、7歳女児ベッツィ、犬デリーがいる。奥さんもいる。
・ガス:そばかす顔の男の子。荷車を引いたポニー(子馬)を連れている。ハムステッドというところへ行く。運搬が仕事。イリ-兄弟社で働いている。【実はこの行為があとで大きな発見につながる。ハムステッドに住んでいる未亡人のスザンナ・イリ-さんが、おいしい水といわれて、彼女の息子に頼まれて、ガスがときおり届けているブロード街の井戸水を飲んで、コレラになって死んでしまった。そのとき同席していたイズリントンから来た姪御さんもコレラで亡くなった。】
・エイベル・クーパー:ライオン醸造所でのイールの親方
・ハーバート・ハグジー・ハギンズ:ライオン醸造所のオーナー、ジョン(兄)とエドワード(弟)のハギンズ兄弟の甥っ子。かぼちゃ頭に黄色い髪。エドワードさんはいい人。ジョンさんはそうじゃない人。エドワードさん夫妻はのちに、イリ-とヘンリー兄弟の養父母になります。
・ミッグルさん:30歳そこそこ。優しい部分をそぎおとして、厳しくて怖い人になった。イールの弟のめんどうをお金でみている。週4シリング。貧民学校の授業料分が1ペニーをイリ-から受け取っている。
・ヘンリー:イールの弟。6歳のときに母死亡。
・作家のディケンズ:作品「ハードタイムズ」、困難な時期という意味
・ヘンリー・ホワイトヘッド副牧師:ゴールデンスクエア(広場)近くに住む人ならだれでもが知っている。セント・ルークス教会の若い副牧師。ラムズゲートという海辺の町で育った。父親はチャタム・ハウスという学校の校長で、ヘンリーはそこに通い、オックスフォード大学を卒業した。
・チャーリー:棺桶屋
・アーサー・ハッサル博士:スノウ博士の研究仲間
・ラント街(テムズ川の南のバラ地区)に住む叔母エディス・フランダース:コレラで死んだ仕立屋グリッグスの妹で、7歳女児のベッツイを引き取る。
・ウィリアム・ファー博士:スノウ博士の知り合い。人口登録局にいる。
・夫のジャック(土曜日にコレラで死んだ)、妻、ミリー(日曜日から病気でふせっている。)12歳。ブロード街の井戸水を飲んだ。
・キングズベリー:イールの父死亡後、イールの亡母親が収めていた内職の品物のあっせん者
・ケート:フィッシュアイの妻のような、愛人のような存在
・馬車の御者:フランダース(ベッツイの叔母エディス・フランダースは、フィギーと呼ぶ)
・エリザベス・ギャスケルさんが書いた「北と南」という新しい小説が、「ハウスホールド・ワーズ」という雑誌に出る。
・検査官のヨークさん

イールいわく、物語の下地に「人は信じられない」があります。不信感ということです。彼は人間不信です。

地域の説明があります。
・ブラックフライアーズ橋:石でできたアーチ型の橋で、いまにも崩れそう。
・テムズ川:ロンドン市内を流れる川
・コペント・ガーデン:ロンドン中心部にある地区。卸売市場があった。この物語の中では、スノウ博士がイールからモルモットを買った場所。モルモットが逃げて、イールがそれをつかまえて博士に渡したところから、ふたりの交流が始まっている。
・ブロード街:ロンドンの中にある地区なのでしょう。
・ソーホー地区のゴールデンスクエア(広場)。この物語にある。昔は、風俗街、歓楽街。一掃され、現在はファッション街、情報発信地メディア街に変貌している。
・川の南側にある貧民街としてサザーク地区
・イールが好きなウォリック街の井戸水:ビールの醸造に水が必要。ライオン醸造所は、ニューリバー社から水を取り寄せている。専用の井戸もある。
・ストランド街のパブで、親指ジェイクはイールにマトンパイをごちそうしてくれた。
・セント・ジェイムズ救貧院:孤児院
・サックビル街:きれいなお屋敷が並んでいる。
・セント・ルークス教会:屋内は静か。
・フィールド・レーンに近い細い路地:イールの弟のめんどうをお金でみているイッグルさん女性が住んでいる。
・ブロード街、ドゥフォース街、ドゥフォース・プレース、ケンブリッジ街、ホプキンス街、ポーランド街、ベリック街、マーシャル街、クロス街、リージェント街、ブライドル街、ウォリック街、リトルマルボロ街、ラント街
・サマーセット・ハウス:300年前の元宮殿、今は人口登録局
・セント・ジェイムズ教区とセント・アン教区
・ソーホー地区のコレラ
・バラ地区
・ウォータールー橋

 読み進めているうちにこの小説は、「病気」を素材にしているという直感が働きました。26ページに「瘴気しょうき」という言葉が出てきます。瘴気は、毒とこの本には書いてあります。コレラという病名が出てきます。下痢・おう吐・脱水症状、筋肉けいれんありです。細菌とかウィルスという言葉も思い浮かびます。本の中では、仕立屋のグリッグスがり患しています。本の中では、瘴気について、さらに、はしか、しょう紅熱天然痘、「青い恐怖」、「青い死」と書かれています。なぜ「青」なのだろう。

 ライオン醸造所のえらいさんの親族であるハグジー少年に心よく思われていないイール少年13歳は、ハグジーにはめられて、日々の売り上げからコインを拝借する泥棒の疑いをかけられました。13歳女子やはり貧民のフローリーが言います。底辺にいる人間は、上にいる人間にこびながら生活していかなければ仕返しをされる。悲しい言葉です。

 イール13歳男、フローリー13歳女、アニー9歳女、ベッツイ7歳女、バーニー5歳男の5人は、コレラにかかったバーニーとベッツイの父親仕立屋グリッグスのことを考えて、科学者・医学者であるスノウ博士を訪ねます。

 もしかしたら、イールは、イールが嫌っているフィッシュアイの実子ではなかろうかと思いましたが違っていました。<その後、自分の感の鋭さに自己満足しました。>
 イールの父親は、3年前に亡くなっています。フィッシュアイ・ビル・タイラーは魚の行商をしていましたが、今ではギャング団のボスをしているようです。子ども相手だと、物乞いやスリをやらせるようです。
 
 4シリング。通過の単位と価値がわかりません。調べてみよう。
 シリング:今は廃止されている。1シリングは12ペンス(単数だとペニー)
1ポンドは20シリング
川で石炭を集めて売るのですが、石炭を売って1ペニーで、エビを少々か、バター付きパンを手に入れるのに十分とされています。

9月1日(金)です。第8章「守りたいもの」で、はじめて、イールに弟がいることが判明します。

1854年9月1日:主人公イールの誕生日です。

第二部「青い恐怖」の部分に次の付記書きがあります。
イギリス史上、コレラのもっとも恐ろしい発生は、ゴールデンスクエア(広場)で起こったものだろう。

コレラが「青い恐怖」と呼ばれるわけがわかります。
仕立屋のグリッグルさんは、唇が真青になって病死されました。
体中の水分が奪われて、肌も唇も健康的なピンクじゃなくなって、ひからびた青色になってしまうのです。

コレラ菌がちらばって、ロンドンのゴールデンスクエアで、これから大量死が発生しそうです。

調べていておもしろかったのは、この物語と近い時期にあたる1858年の日本でもコレラが流行しています。

貧富の差の格差が、すさまじく、高低差が極端である国だと受け取りました。

気に入ったフレーズです。
「死ぬまでに、たったひとつでいいから、ずっとあとの時代に残るものを作りたい」

いったい何人の人がコレラで亡くなったのだろう。
9月1日(金)最初の犠牲者と思われるのが、仕立屋の主人グリッグスです。
金曜日の午後から9月3日(日)現在で、すでに70人以上が亡くなっていると記事があります。わずか、2日半です。
その後の調査で、週末には、500人超えになりそうな勢いです。【最終的には、615人の命が消えました】

 コレラは空気感染するという誤った考えがあります。長年の慣習から否定することがむずかしいそうです。本当は、コレラ菌が経口感染することは、現在では周知の事実です。飲食によって感染するのです。
 本にも書いてありますが、意識を改革するためには、長い時間とあきらめない努力が必要です。

 地区を管轄する行政組織が宗教を帯びていることに驚きました。まあ、この時代ですからそうなのでしょう。
 セント・ジェイムズ教会の教区委員会となっています。木曜日の夜にコレラに関する委員会が開催されるそうです。木曜日と言えば、9月7日(木)ですから、この本のタイトル12日間が終わる前日です。

空気を清めるために石灰をばらまく。病気が発生した現場に警告を出す。棺桶を手配する。教会ができることはそれぐらいです。

スノウ博士は予防医学の話をイールにします。すでにコレラにかかってしまった人を治療するすべ(術)はないのです。

コレラ経口感染説を証明するために4つのWが博士から提案されます。
What(何が)、何が起こっているのか。:コレラが発生している。
Who(だれが):だれが病気になったか。
Where(どこで):病人がどこで飲み食いしたか。
When(いつ):いつ病気にかかったのか。
イールがもうひとつのWを提案します。
Why(なぜ):なぜ、たった1日で死んでしまうような病気にかかったのか。

読み書き計算の能力の話が出てきます。
勉強しよう!という意味です。

イタリアンアイス:ブロード街の井戸水を使用した甘い飲み物

コレラの感染源を井戸水とし、井戸水をくみ上げる手押し式ポンプのハンドルをとるためにキリスト教会の組織である委員会で、そのことを立証して、ハンドル取り外しの許可を得る。これが、スノウ博士とイール少年の目標になります。
しかし、空気感染説を信じる委員会のメンバー及び住民を説得することがむずかしい。

ふたりは、「突発的な例外」を探し始めます。
井戸から遠く離れたところに住んでいる人が、対象の井戸水を飲んでコレラを発症していないかです。
そして、そういう人物を発見します。それも、ふたりもです。

ふと、天動説、地動説のお話が頭に浮かびました。
それでも地球は回っている。そういう言葉を残した科学者がいました。

「例外」という言葉からは、突然変異という言葉が連想されます。
動物の進化を考えるときのキーワードです。
これまでに読んだ数冊の本では、動物は、少しずつ、環境になれるために肉体が変化したのではなく、突然変異の誕生によって、進化したというものでした。

「水」について、いろいろと考えました。
まだ、8歳だった頃、家に水道がなかったときを思い出しました。今から50年ぐらい前のいなかです。山で「清水(しみず)」と呼ばれる湧き出る水を汲んできて、家にあったコンクリート製の容器に入れて使用していました。今思えば、恐ろしいことです。
 学校帰りにのどが渇いて、田んぼの用水路に流れていた水を両手ですくって飲んでいました。だから、回虫とかぎょう虫検査では、やっぱり虫がみつかりました。
 水道事業に従事している人たちは、自分たちは、人の生活に貢献していると自信をもっていいと思います。

 「指針症例」、だれが最初のコレラの患者か。仕立屋のグリッグスさんではありません。
 本のタイトルでは12日間。9月8日(金)が12日目ですが、本では、9月19日(火)に、アニーのお父さん、トーマス・ルイス巡査がコレラで最後の犠牲者として亡くなったとあります。
 指針症例、最初のコレラ患者は、トーマス・ルイス巡査の次女ファニーであることがわかります。


 これで、課題図書全部を読み終えて感想文も書き終えました。
 そのうちの1冊は、もう一度読んで、感想をつぎ足すつもりです。
 やりとげて、さびしくなりました。


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