2015年04月13日

もぎりよ今夜も有難う 片桐はいり

もぎりよ今夜も有難う 片桐はいり 幻冬舎文庫

 映画好き、を超えて、映画館好き、雑然とした暗い映画館の中にある雰囲気が好きな女子の思い出と映画に対する愛着・愛情の記録です。
 50代なかばの方が読むと共感が生まれるでしょう。
 最初のほうでは、18歳から7年間、アルバイトで映画館の入場券もぎりをしていたことが、東京銀座の映画館「銀座文化劇場(現在のシネスイッチ銀座)」を舞台に熱く語られます。彼女はやがて、映画を観る立場から出る立場(女優)に変わって、もぎりの仕事がやりにくくなり、やめてしまうのですが、心中では、一生「もぎり」をやりたい。
 本に出てくる映画で、知っている、観たものとして、「かもめ食堂」、「転校生」、「野麦峠」
 面白かったのは、役として、松坂慶子さんの整形前の役でした(自由な女神たち 1987年)
 以下は、よかった表現です。
・映画に出たことで、映画館を去り、映画に出たことで、また、映画館に戻ることになった。
・全席指定、定員入れ替え制(昔は全席自由席、出入り自由だった)
・映画館内にゲイ・ストリートがあった。(男の出会いを期待する場所)
・だるまストーブのある、あるいはあった映画館
・動物の感だけを頼りに旅をする。
・この世には、明るくなるほど見えなくなるものがある。
文章は、長い。文章量は多い。1冊読み終えるまでにかなり時間がかかりました。一所懸命に書くので文章量が増加するのでしょう。十二分な説明を心がけられたのでしょう。エピソードの数が多く、重厚な経験が伝わってきます。しっかり書かれています。ただ、もう少し力を抜いてもよかった。
 読んでいるうちに先日読んだ「東京百景」又吉直樹著を思い出しました。雰囲気、場所等、重なる部分があります。若者文化として、合い通じるものがありました。100ページにある「銀座ブンブン娘」では、当時の若い女性たちをミツバチにたとえてあります。銀座界隈をブンブンと飛び回りながらアルバイトのかけもちをして稼ぐのです。その部分が、なかなかよかった。


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