2015年03月16日

火花 又吉直樹

火花 又吉直樹 文藝春秋

 静岡県熱海の花火大会、それから10年後、再び熱海の花火で終わる148ページの小説です。1ページにびっしり文字を並べているので、実際には、220ページ分ぐらいの文章量があります。
 文章作成能力のレベルは高い。力強い勢いがあります。年齢相応に文章が若い。ひとつのことをいろんな形で文章化して重ねてあります。説得力で成功している面がありますが、反面繰り返しがくどい。一歩抜け出して、少量の文章量で感動を呼び起こす技術に達することを今後期待します。本作品が特別に秀でているということはありません。お笑い芸能人が書いたということで話題になっています。劇団ひとりほどの才能は感じません。KAGEROU俳優水島ヒロほどの創意工夫もありません。主人公の師匠神谷の人格設定はうまい。なかなか発想できるものではありません。思い切りがいい。総じて、良くもなく、悪くもなく、真面目で無難な作品です。毒はない。個性はあるようで薄い。コメントしにくい。
 携帯電話あるいはスマートホンのメールのやりとり記述、幸せそうには見えない主人公たち、物語は、東京の小さな事務所に所属する漫才コンビ名「スパークス」の徳永20才と大阪の大きな事務所に所属する漫才コンビ「あほんだら」の神谷才蔵24才の出会いから始まります。最初からずーっと、それぞれのコンビの相方(あいかた)さんとの話がほとんど出てこないのが不自然で不思議でした。徳永は神谷を師匠とあがめたてまつりながら人生を共にしていきます。
 下北沢、石神井(しゃくじい)、青梅街道、吉祥寺、高円寺、井の頭公園、三軒茶屋、二子玉川など、小説でよく登場する地名が出てきます。行ったことありませんが、魅力を感じます。
 最初から最後まで貫く一本の線があります。弟子である徳永が、師匠である神谷の「伝記」を書くことです。神谷は朝起きてから夜寝るまで、もしかしたら寝ているときも漫才師でいたい人間です。日常会話はイコールネタ合わせです。行動も狂っています。それだけ漫才に情熱を注いでいます。人を笑わせて幸せな気分にさせたいのです。彼の言動は「純粋」です。目からウロコが落ちる思いでした。
 読んでいるとわかってくるのですが、これはなにも「漫才師」に限った世界の出来事ではないのです。どの職域でも同じです。だれしもあがいて、悪戦苦闘している。それが、働くということ。
 メッセージとして受け取った項目は、互いに違いを認めて協力していく。徳永が神谷から学んだのは、「自分らしく生きていく」でした。
 気に入ったいくつかの表現の要旨です。
・ふたりで呑む(酒を飲む)といつも前後不覚になった。
・芸人は変態であることが利点
・あらゆることをうやむやにする。
・ネタ合わせに明け暮れても、収入には結びつかない。
・(ネット上あるいはアンケートで)他者を批評(批判)して、(投稿者が)生き延びることができるのだったら、その行為を許す。
・神谷のつぶやき「これが人間やで」

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