2015年01月18日

信さん 辻内智貴

信さん 辻内智貴 小学館文庫

 本の検索をしているときに、なにかをしていてのきっかけでこの本を知りました。小説の舞台となっている福岡県の炭鉱があった市のそばで、自分自身、中学・高校のうちの4年間を過ごしました。こういう小説があるのかとちょっと驚いて興味をもち、読み始めました。今年巡り合った良書です。心が洗われるいい小説です。涙がにじみます。優しい。
 読み始めは、作者の体験談だと思っていましたが、読み終えてみると、体験をベースにした虚構の可能性もあると察しました。文章から考えると、小学生時代からの近所のやんちゃな少年信さん(中岡信一)を語る守は、わたしより、4歳ぐらい年下に思えます。
 母親が柱となっている小説です。母親が息子にとっての心のよりどころです。同じく福岡県を舞台にした「東京タワー」リリー・フランキー著と気持ちは同じです。文庫の最後にある解説に、信さんは、守の母親に恋をしていたとありますが、わたしはそうは思いません。守の母親は信さんにとっても母親(故郷)だったのです。
 中岡信一は、幼児期に親なし子となり、こどものいない親戚に引き取られるも、その家に実子が誕生してしまい、居場所がなくなる。重松清作品に出てくるような家族構成です。
 中岡信一はその後、21歳で就職先の東京において病死するわけですが、そこまでに至るせつない暮らしの記述が温かい。


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