2015年01月15日

悟浄出立 万城目学

悟浄出立(ごじょうしゅったつ) 万城目学(まきめまなぶ) 新潮社

 中国の歴史や人物に詳しい人が読むと味わいがある本なのでしょう。わたしには無理です。
 中国を舞台として、脇役で過ごした登場人物を主役にすえて、短編5本が完成されています。
「悟浄出立」ドリフターズの孫悟空、三蔵法師がいかりや長介さんを想像してしまうのはわたしだけでしょうか。かっぱの沙悟浄が主役となる短編です。脇役たちの気持ちが表現されています。ブタの八戒(はっかい)は食欲の固まりです。偽善を否定した本音の世界がいい。「斎(とき)」とは、食事のことのようです。沙悟浄は、本当は立派な人の生まれ変わりらしい。短編5本はたぶんつながりがあるのです。それを理解できない自分に残念。天界(星の国)がキーワードのひとつでしょう。人生は修行かという気分になりました。
「趙雲西航」三国志が下地ですが、わたしはよくはわかりません。趙雲は50歳を超えた軍人で、今は、船(戦艦だろう)で暮らしている。スーパーマンでいられるのはいっときのこと。書中では「新しい世代が勃興しつつある」と記されています。後半は故郷の話に尽きます。親不幸の上に成り立った成功に胸が締めつけられました。
「虞姫寂静」虞美人草の由来になった姫のお話です。ここまできて、新企画の短編集だなと感じました。こういう(脇役を集めて主役にした)構成の本を読むのは初めてです。
「法家孤憤」主人公はケイカという人で、同姓同名の人がいて、あれこればなしです。
 読みながら、(自分の人生について)このままでは、終われないという気持ちになりました。
「父司馬遷」司馬遷という人に関する知識がないのですが、彼の15歳である娘さんが主役です。司馬遷さんは、星を観察して暦をつくる仕事をしているらしい。馬の話が出てきます。馬を司馬遷さんにたとえてあります。前作の「法家孤憤」とつながりがあります。書く執念が心に響きました。作者の気持ちの中にも同じものがあるのでしょう。

以下は、いくつかの胸に残ったフレーズです。
・捨てられたのではなく、役割を終えられた。
・「アア、マッタク、残念ナコッチャ」
・「太史令は、天時、星歴を司るのが職掌だ。」

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