2014年06月18日

自分を好きになる方法 本谷有希子

自分を好きになる方法 本谷有希子(もとやゆきこ) 講談社

 右肩痛がやわらぎ、がぜん元気が出てきて、午後11時00分からこの本を読み始め、午前2時00分に読み終えました。
 ひとりの女性「リンデ」の年齢をへだてた物語です。16歳高校1年生のときに友人もどきの女性ふたりを捨てる。28歳のとき、気の合わない男性との結婚を決意する。彼とは34歳で離婚する。47歳で再婚しようかという気になるけれどやっぱりやめる。63歳で少々認知症気味、周囲の迷惑者となる。途中、3歳のときの嘘つき女の芽生えシーンが入ります。
 女性が読む小説です。男性の私には理解できない女性心理が描かれています。全体をとおして、身勝手なリンデという女性の欺瞞(ぎまん、あざむく、だます)に満ちた人生が綴られています。彼女の身近にいる人にとって、彼女はクレーマーです。こういう女性って、確かにいます。ただ、タイトルと内容の一致がみられない。最後まで読んで、作者のメッセージが何かわからない。たぶん、私が男だからでしょう。
 以下、読書感想の経過です。
「16歳のリンデとスコアーボード」主人公リンデ(足のサイズは23cmともう片方が22.5cm)、彼女のうわべだけの友人カタリナ(背が高い。ボーリングのボールは12ポンド)、もうひとりモモ(小柄)。名前のカタカナ表記は苦手です。性格をイメージしにくく、個性がわかりにくい。けれど、実名ぽいものにすると、怒る読み手が出てくる内容です。ボーリングゲームにちょっとしたミステリーがあり、詩的です。男が入っていけない女子のエロの世界があります。読後、「巣立ち」のお話と受け取りました。
「28歳のリンデとワンピース」この短編集は、相方を捨てることがテーマだろうか。今度は男を捨てるようです。男性視点から見ると、リンデのようなむずかしい人格の人っているよなーと思わせてくれる上手な性格設定です。そんな彼女に妥協する彼は偉いなあと感心したのですが、次の短編ではやはり別れています。
「34歳のリンデと結婚記念日」海外旅行先のレストランです。28歳のときに結婚を決めるきっかけになったお店です。読み手は、前の短編の男性と結婚したのかとちょっとあきれます。リンデは、結婚生活に向かない性格をもっています。飲み物を飲むストローのお話が出てくるのですが、私には何のことかわかりませんでした。最終行はつまらなかった。
「47歳のリンデと百年の感覚」リンデの妹エマ46歳、その娘マアちゃん16歳が登場します。リンデの再婚候補としてお嫁さんに逃げられたジョウさんも出てきます。リンデの淡い期待は裏切られます。ジョウさんの別れた妻に対する言葉は、そのままリンデに当てはまる言葉でした。常に人のせいにしながら生きている女性。
「3歳のリンデとシューベルト」リンデは3歳のときから嘘つきだった。そして、その後もずーっと嘘つきだった。
「63歳のリンデとドレッシング」老いたリンデは哀れです。この本のタイトルは「自分を好きになる方法」よりも「わがまま女リンデの一生」のほうが似合います。彼女は何のために老いた今を生きているのだろう。親族も寄り付かない。みえっぱり。他者の悪口ばかり。ともだちは「電話機」しかいないクレーマーです。こういうお年寄りっています。働いていない63歳一人暮らし。中途半端な年齢。でも、あと20年ぐらいは生き続けなければなりません。この小説の批評はけっこうむずかしい。賛否両論でしょう。

この記事へのトラックバックURL

http://kumataro.mediacat-blog.jp/t101010
※このエントリーではブログ管理者の設定により、ブログ管理者に承認されるまでコメントは反映されません
上の画像に書かれている文字を入力して下さい