2023年11月16日

勝手にふるえてろ 邦画 2018年

勝手にふるえてろ 邦画 2018年(平成30年) 1時間56分 動画配信サービス

 観た動機は、今年の前半にNHKBSで再放送『あまちゃん』を楽しんでいたわけで、そこに出ていた松岡茉優(まつおか・まゆ)さんがこの映画で出ていることを知ったからです。同じく、松岡茉優さんが出ていた『万引き家族』は、映画館で観ました。
 こちらの『勝手にふるえてろ』の映画を観たら、あまちゃんに出ていた片桐はいりさんもオカリナを吹く女性「岡里奈」として出ていて楽しめました。加えて、こちらの映画に現在NHKの朝ドラ『ブギウギ』で主役を務めておられる趣里さんも出ていて驚きました。
 原作は、綿矢りさ小説作品『勝手にふるえてろ』ですが読んだことはありません。

 映画は、松岡茉優さんの魅力を十分に発揮するものでした。
 はじめのうちは、抽象的で、ストーリーがあるようでないようで、悶々とした(もんもんとした。悩み苦しんでいる状態)心理描写が続きますが、途中からミュージカルのようになって、それから大きく躍動していきます。
 冒頭からしばらくは、松岡茉優さんのひとりごとのようなひとり語りがずーっと続きます。幻想の世界です。主人公は、絶滅した動物に興味が強いキャラクターの女性で、古代にいた大きなアンモナイトの化石が大好きです。
 見始めて、20分ぐらいが経過したあたりから、じわーっとなんともいえない味わいが出てきました。異質な個人の脳内世界があります。

 一般民間会社(けっこう大きそうな会社)のOLたちが出てきます。どうして、畳部屋の更衣室で大勢が横になって寝るのか不思議でした。
 まあ、リアルな、会社の裏風景が描かれています。職場結婚目当ての飲み会とか。

 まあ、よくある男女の三角関係のような、四画関係のような、あいまいな恋愛状態があります。こちらが好きでも、あちらはこちらに興味がないということはよくあります。いろいろ誤解が生まれます。

 東京の夜景の映像がきれいでした。(たまたま数日前に、東京見物に行って、高いビルからJR渋谷駅あたりの夜景を楽しみました。大都会の中心部のクリスマスが近づく今頃の景色は灯り(あかり)でいっぱいです。赤白服を着たサンタクロースが夜空の上空を、そりにのって走っていてもおかしくない夜景のイメージがあります)
 
 伏線として、赤いふせん、絶滅種のたぐい(主人公を絶滅種とたとえる)、

 結婚は、一番好きな人としたい。(そうしてください。昔は、一番好きな人とはできない。二番目に好きな人と結婚することが多い。結婚と恋愛は違うという言い伝えがありました)

 恋をしている女性は神々しい。(こうごうしい)。
 女性の心の成長ストーリーでもあります。

 男を巡る女たちの駆け引きはけっこう厳しい。
 高層ビル(タワーマンション)の高層階の部屋の中の雰囲気は冷えている。
 都会は人がいっぱいいても、自分と関係がある人はほとんどいない。見えている人たちは透明な存在とあります。逆に、自分は(主人公の女性は)、だれからも見えていない存在とあります。孤独です。(先日東京の山手線に乗った時、たくさん人がいても、みんなうつむいてスマホを見て、じーっと黙って座っている光景を見て、この映画のシーンを思い出しました。昔聴いた歌謡曲の詞に「ふたりでいたって、ひとりは消えない(ふたりでいてもひとりぼっち)」というようなフレーズがあったことを思い出しました)

 目標として、人に何かをしてもらう人ではなく、人に何かをしてあげる人になる。(人に優しい人になる)

 女性の心理はややこしい。
 押したり、引いたり、ぐるぐる回る。
 いろいろと、プライドを傷つけられて、主人公女性の心が壊れていきます。
 妊娠していないのに『産休届』を出す主人公女性です。(同じ発想として、『2020太宰治賞受賞作品 筑摩書房「空芯手帳(くうしんてちょう)」 八木詠美(やぎ・えみ)』があります。なかなかよくできた作品でした。妊娠していないのに、妊娠しているとして、ずーっと周囲をだまし続けることに成功するのです)

 主人公女子の心が壊れて、心の声がどんどん表に出てきます。異常です。心を病んでいます。男運もない、男との縁もない人になってしまいます。このまま終わってしまうのか。
 人間関係がぎこちない、つないだり、切ったり、不安定な流れです。
 
 BGM(バックグラウンドミュージック)代わりの、片桐はいりさんのオカリナの演奏が良かった。

 人は、傷つけあって、仲良くなるということはあります。登場人物男子の言葉として、『人間ってそんなものでしょ』そうです。理想や、きれいごとがあって、だけど、そのようにはやれなくて、しかたなく、『人間ってそんなものでしょ』になるのです。だから、「人間」ということもあります。けして、AIロボット(人工知能ロボット)ではないのです。

 後半部にある雨に濡れながらのシーンは、雨の降り方が変で、もうちょっとそれらしいシーンにしてほしかった。

 人と付き合うなら、相手が男でも女でも、悪人ではない善人と付き合う。
 奇人であってもかまわなけれど、相手は善人であってほしい。
 悪人とは距離をおく。悪人とは、関りあいにならないようにする。
 
 むずかしい内容でしたが、心には残る作品でした。