2023年06月30日

バスにのって 荒井良二

バスにのって 荒井良二 偕成社

 北アフリカやサウジアラビアにあるような砂漠(さばく)に、一本道があって、バス停がある絵です。
 背中に荷物をせおった人がひとりだけ歩いてバス停に近づいているのが表紙の絵です。
 さて、表紙をめくって読みはじめます。

 なんだか、わたしにも描けそうな(かけそうな)絵です。
 バス停の中にある長椅子に、ちょこんとひとりの人物がすわっています。赤い帽子をかぶっています。ぼうしの形は、バケツの形です。ひさしはありません。
 バスにのって、とおくへ行くそうな。
 このあと、出てくる人物たちもふくめて、みんな人形のようなからだをしています。こけしみたい。

 なんだか、バスは、きそうになさそうな雰囲気がただよっています。
 のどかな風景です。
 牛車(ぎゅうしゃ)が近づいてきました。
 農耕用の牛でしょう。
 木の枝には、一羽の鳥がとまっています。鳥はじっとしています。小さなクジャクのような姿の鳥です。

 バスに乗りたい人がラジオをつけて音楽を流し始めると、たくさんの人たちが現れました。
 まるで、市場(いちば。バザール)のにぎわいです。
 
 おもしろい! 大きくて細長いトラックが、轟音(ごうおん)をたてながら走っていきました。映画『トトロ』のネコバスみたいです。

 こんどは、馬に乗った人が道を進んでいきました。
 (これは、さいごまで、路線バスはこないのではないか?! このさきの話の展開にピンとくるものがあります。ついでに、太川陽介&蛭子能収(えびす・よしかず)の路線バス乗り継ぎ人情旅のロケを思い出しました)
 
 ほら、こんどは、自転車に乗った人がバス停の前を通り過ぎました。
 (バスは来ないんだ。たぶん)

 夜になっちゃった。

 バスは来ない。

 どうするのだろう?

 星が出てきて、屋根付きのバス停は、簡易宿泊所みたいになりました。
 バスに乗りたい人は、長いすの上で、どうどうと眠りにつきました。
 (どろぼうが出てくるんじゃなかろうか)

 朝です。
 まぶしい太陽が、地平線からのぼってきました。
 バスはきません。旅人は、おなかがすいただろうに。

 昼になりました。
 バスは来ません。
 あんがい、外国の不便なところだとこういうことって、じっさいにあるのだろうなと思う。
 定刻通りにバスが来ないということはあるだろうなあと思う。
 もしかしたら、日本のいなかでもあるのかもしれません。
 『きょうは、バスがこないねぇ』って、そして、こなくても気にしないのかもしれません。まあいいかで、すむのかもしれません。

 あれーーー
 バスが来ましたーーー

 トラックみたいなバスです。
 タイヤのあたりから、はげしい土けむりが出ています。
 このままバス停に止まらずに行ってしまいそうな勢いです。

 バスは止まりました。
 まるで、列車みたいなバスです。とても長い。
 そして、満員でもう人は乗れないそうです。
 おりるお客さんもいないようです。
 どうしよう。

 あらら。バスは、ずーっと待っていた人を乗せずに出発してしまいました。
 (次のバスはいつ来るかわからないし、来ても、のれないかもしれないし。だけど、外国だと本当にそんなことがありそうです)

 なんだかかわいそうなバス待ちの登場人物です。
 歩いて行くそうです。
 (それでもいいか。太川陽介さんとえびすよしかずさんのバス旅も、かなり歩いていました)

 おもしろかった。
 こんど親戚のちびっこに会ったときにプレゼントする候補の一冊にくわえておきます。  

Posted by 熊太郎 at 06:11Comments(0)TrackBack(0)読書感想文