2023年06月15日

わたしと あそんで マリー・ホール・エッツ

わたしと あそんで マリー・ホール・エッツ ぶん/え よだ・じゅんいち やく 福音館書店

 原題は『PLAY WITH ME』というアメリカ合衆国の作家がつくった絵本です。良書です。
 作者は1895年生まれですから、日本だと明治28年です。明治27年が日清戦争でした。作者は1984年(昭和59年)に亡くなっています。
 日本人訳者の方は、1905年(明治38年)生まれで、1997年(平成9年)に亡くなっています。
 米国でのこの絵本の初版が1955年(昭和30年)です。日本での初版が1968年(昭和43年)です。

 物語の舞台は『はらっぱ』です。
 女の子登場です。五歳ぐらいに見えます。
 ばったが出てきます。
 女の子がばったに『あそびましょ』と声をかけますが、ばったは飛んでいってしまい、いなくなります。
 つぎに出てきたかえるもぴょんぴょんはねて、女の子から離れていきました。
 
 ことば(文章)がていねいです。
 基本に忠実なことば運びです。
 こどもさんが、ことばや会話を覚えるにあたって、基礎がしっかりしています。
 
 かめが出てきました。
 ばった、かえる、かめ、そんないきものたちのやさしさが伝わってきます。

 かしの木の下にりすがいます。
 りすも木の上にあがっていってしまいます。

 みんな逃げていくのね。
 かけす(野鳥)も飛んでいってしまいました。

 だれも女の子とあそんでくれません。
 うさぎもいなくなってしまいました。

 へびは、穴の中に入っていってしまいました。

 どうぶつたちは、人間をこわがります。
 しかたがないので、女の子は、ちちくさと遊びます。(ちちくさ:茎や葉を切ると乳のような液を出す草)

 それから、池の水面にいるみずすましをながめます。
 この部分を読んでいて、自分も小学校低学年の時には、ため池で、アメンボとかゲンゴロウとかを見ていたことを思い出しました。たんぼの横を流れる用水路にはたくさんのおたまじゃくしがいました。熊じいさんのこどものころは、昆虫を中心にして、身近にたくさんのいきもがいました。
 宅地化で、日本各地の風景はずいぶん変化してしまいました。
 昭和40年前後のころの話です。(1965年前後)

 池のそばで、じーっとしている女の子です。

 こんどは、いきものたちが女の子に近づいてきます。
 ばったが葉っぱにとまりました。
 かえるがしゃがみました。
 りすが女の子をみつめています。
 木の枝にかけすがいます。
 うさぎがぴょんとはねます。
 へびも穴から出てきました。

 いきものたちは、人間たちのたとえのようです。
 コミュニケーションの相手ができていきます。
 ひきこもりの人が読むと、泣ける絵本でしょう。
 相手も話し相手をさがしている。
 
 しかのあかちゃんが顔を出しました。

 良書です。

 おもしろい。
 心あたたまるお話です。
 しかが、女の子ほっぺたをなめました。
 絵がやさしい。
 光があります。
 こんど、親戚のちびっこに会ったときにあげる絵本の候補のなかに入れておきます。
 『……みんなが わたしと あそんでくれるんですもの。』
 
 いい本でした。  

Posted by 熊太郎 at 06:36Comments(0)TrackBack(0)読書感想文