2018年07月04日

ぶーぶー じどうしゃ

ぶーぶー じどうしゃ 山本忠敬 福音館書店

 0歳、1歳、2歳向けの絵本です
 定番の自動車ものです。
 小さい子はどうして乗り物好きなのかはわかりません。(全員ではありませんが。)
 1995年から60刷という重版を重ねている本なので、23年ぐらい前の自動車の姿です。車のタイプが若干古いのですが、質実剛健、重厚な感じがしていい雰囲気があります。

 本を閉じて、裏表紙にあるワンちゃんがかわいい。  

Posted by 熊太郎 at 07:17Comments(0)TrackBack(0)読書感想文

2018年07月03日

桐谷署総務課渉外係お父さんを冷蔵庫に入れて! 加藤鉄児

桐谷署総務課渉外係お父さんを冷蔵庫に入れて! 加藤鉄児 宝島社文庫

 「桐谷」は地名とは思えません。なぜ「刑事課」ではなくて、「総務課」なのか。「生きているお父さんを冷蔵庫に入れることが犯罪につながるのか。」
 いろんな疑問を抱きながら読み始めました。いま、39ページ付近です。

(つづく)

 お父さんは高齢で病気で病院で亡くなった。そのご遺体が盗まれた。(書中では誘拐された。)。ご遺体を返してほしければ金を払えというパターンです。こういう話って成立するのかなあというもやもやをかかえながら読み続けます。

 おもしろい出だしです。(遺体)誘拐犯ふたりの雰囲気がいい。あまりなかみを書くと読んだときのいい感じがうすらぐので、そーっと書きます。

 こういう設定と展開は斬新です。強引で無理があるご遺体の娘さん、十文字凛子の話です。10年前に警察となにかトラブルがあったらしい。
 総務課が動くのは、どこの課にも属しない案件であるからでしょう。亡くなっている人を誘拐してもすでに命なき人です。そして総務課の職員の仕事はグレーな案件のお掃除です。公務員経験者が書いたような文章です。

「ショーマン:芸人」、「窃盗:せっとう。盗み」、「恐喝:相手に従わないと害を与えると脅して、相手から、財産、利益を得る。」、「首肯:しゅこう。うなずく。初めて見た単語です。」、「螺髪:らほつ。巻貝のような天然パーマ。東大寺の大仏の頭。これも初めて見た単語です。」、「ブローカー:売買の仲介をして収入を得る人」、「ロイド眼鏡:セルロイドでできている。アメリカの喜劇役者ハロルド・ロイドがかけていた。」、「埒外:らちがい。ふだんあることの範囲の外」、「刑事課、生活安全課、地域課、警備課、交通課、総務課:警察組織の話ですが、一般人にはその違いが明瞭にはわかりません。」、「肉薄:にくはく。すぐ近く」、「ボイスチェンジャー:加工して声を変える。売っているのだろうかと調べました。ネットショップで売っていました。」、「ロココ調:18世紀ヨーロッパの雰囲気。美術様式」、「舌鋒:ぜっぽう。言葉つきのするどいこと。」、「惹句:じゃっく。心を惹きつける短文」、「ガンメタル:紫がかった暗い灰色」、「通函:つうかん、かよいばこ。組織内、組織間で文書や物を送るときに入れる箱」、「目を瞑った:目をつぶった。読めませんでした。」、「グレービーソース:肉汁をもとにしてつくるソース」、「咄嗟に:とっさに」、「ジルコニアの群れ:ダイヤモンドみたいな固体」、「滂沱:ぼうだ。雨が降りしきるさま」、「イグニッション:点火装置」

 物語は、12月25日クリスマスに始まり、12月28日御用治めの日に終わるようです。

(つづく)

 亡くなっている十文字豪は役者で刑事役で一世を風靡した過去がある。

 第二段階の話(警察署総務課夕張真知子と役者十文字豪の娘十文字凛子との関係)もおもしろい。

 ホームレスは単体であって、お互いに「仲間」という意識はないと思います。

 誘拐犯板倉とイエヤスはどこで出会ったのか、イエヤスとは家康なのか。いろいろ秘密を置いてあります。

 89ページ付近、これはおもしろいなあ。推理小説はあまり読みませんが、これは、楽しめる推理小説です。

 グアテマラ、エチオピア、ベトナム、コロンビア、どこにあるのか、あまりなじみがない国が続きます。

 公園にいるホームレスに話しかけるのは福祉課ではなく、公園管理をしている部署のような気がしましたが、福祉課であっても不思議ではありません。

 どうやって、最終的な感動につなげていくのだろう。

 役者の葬式で国葬みたいなことをテレビ放映でやるだろうか。

(つづく)

 読み終わりました。おもいしろいことはおもしろかったのですが、腹に落ちないものが残りました。ないものをあるものとした設定です。命なき遺体の誘拐、警察署総務課の動き、そのへんが腹におちない大きな部分です。これは読み手個人の趣向にゆだねられます。

 命もお金も存在しない新たな設定、新境地を開いた功績があります。

 ミキとマキの存在が効いていました。  

Posted by 熊太郎 at 05:10Comments(0)TrackBack(0)読書感想文

2018年07月02日

傍流の記者 本城雅人

傍流の記者 本城雅人(ほんじょう・まさと) 新潮社

 傍流⇔本流でいいのだろうか。新聞社における出世競争です。とりあえずの目標は「社会部長」らしい。傍流とは主流ではないこと。キーワードとしては、プロローグにある「不正を書くのが新聞の使命」でしょう。そして、使命を行使すると新聞社が倒れるのでしょう。読み始めます。
 6本の短編です。

「第一話 敗者の行進」
 敗者の行進とは、スクープを落として他社の記事となったとき、担当記者が本社事務室内を行進して恥をかく行為のようです。酷です。
 主人公植島昌志40歳、新聞社警視庁担当キャップ(管理職。自分が動くのではなく部下を動かす立場)

 支流にいる人間の負け犬の遠吠えにも思える内容展開です。ことに「仕返し」の心理が強い。

 管理職の役割と平社員の役割は異なります。植島昌志は平社員であれば優秀だが、管理職となるとその器(うつわ)ではない。

 良かった表現の主旨として、「部下への信頼の糸が切れる。」

「掠る:かする。漢字が珍しかった。」、「業腹:ごうはら。非常に腹が立つこと。」、「確執:かくしつ。対立して譲らない。」、「めっさ怒る:めっさというのは初めて見ました。とてもという意味。方言かと思いましたがいまでは大阪起源の一般用語になっているようです。」、「権謀術数:けんぼうじゅっすう。あざむくためのはかりごと。」、「ファンデーション:化粧の下地クリーム」、「お手つき:かるたで別の札に手をつける。本作品の場合、別の人を容疑者と思ってしまう。」

警察組織として
生活安全課:防犯、ストーカー、DV、少年、家出、風営法、闇金
公安(警備課):国家に対する反社会的活動、テロ対策、災害救助
刑事課:殺人、強盗、傷害、放火
交通課:交通違反の取り締まり、
地域課:交番、巡回、パトロール、自転車泥、車上狙い、空き巣、わいせつ、落し物、迷子

「第二話 逆転の仮説」
 現実に起こった事件が物語の中で光が反射するように挿入されている作品群です。
 希少なものに価値を見つける。それが、「逆転の仮説」です。
 実感がこもった表現の主旨として、「他人の人事はわかるが自分自身がどうなるかの人事はわからない。」
 「遊軍:臨時の出来事に対して集まる集団」本のなかでは30人。
 「宥める:なだめる。漢字をはじめてみました。」
 「エキセントリック:ふつうじゃない。」
 後半は、すさまじい追い込みでした。これでは女性記者の島有子さんはもたない。

「第三話 疲弊部隊」
 「出禁:できん。出入り禁止」、「司法クラブ:官公庁の建物の中にある記者クラブのひとつ。裁判所内」、「おためごかし:人のためにするようにみせかけて、じつは自分の利益を得る。」、「峻厳:しゅんげん。非常に厳しい。」、「証券コード:株式銘柄ごとの番号・記号」、「気鬱さ:きうつさ。気分がふさぐ。」、「シンパ:共鳴者」
 自分を見下してきた者たちへの仕返しの記述が続きます。
 新聞の購読率ってどれぐらい低下しているのだろう。調べました。やっぱり下降気味です。物語の中にもありますが発行部数が減れば従業員数も減ります。
 気に入った表現の要旨として、「移っても一生兵隊」、、「コンプレックスを励みにするあなたの生き方がイヤ」、「仲間を思いやる気持ちが必要だった。」
 101ページあたりの雰囲気を気に入りました。会社で輝いている人は、家では孤独です。
 
「第四話 選抜の基準」
 「選抜」とは、人事で、だれがいいかと選ぶことです。はないちもんめ、あのこがほしい、そのこはいらない、あとはプロ野球ドラフト会議のようなものです。
 ドラフトと一緒で、一番がその後必ず出世するわけではありません。最悪なのは辞められて他社に引き抜かれることです。それまでかけた時間と労力、経費がパーになります。いや、それ以上に自社にとってライバル社のレベルアップとなり、マイナスの分量は計り知れません。
 「諍い:あらそい。こういう漢字があることを知りました。」
 選抜はしょせんむなしい。

「第五話 人事の嵐」
 ヒントは「モリカケ疑惑」です。
 新聞社内の「表彰制度」って、ちょくで給与や人事に反映するようで、そこが、そういうものかと発見があります。
 「政治部」は政権寄りで、「社会部」は政権批判で、そのバランスが難しい。ただ、世間はそういうもので、相対するもの同士のバランスづくりをどこもしている。
 人事は憎悪につながる。組織で仕事をすることについての厳しさが書いてあります。個人事業主にはない。

「第六話 記憶の固執(こしつ。あくまでも自分の意見を主張して譲らない。)」
 「昵懇:じっこん。親しく打ち解けて付き合う。」、「幇間:ほうかん。男芸者」、「編集委員:新聞社内の肩書。上がりの職とあります。名誉的な肩書だけで部下なし。そこで打ち止め。」、「弄る:いじる。漢字を見たのが初めてです。」、「マッチポンプ:自分で問題を起こして収拾をもちかけて報酬を得る。」、「目を瞬かせる:またたかせる。」、「ねめつける:にらみつける。」、「頷き奴(うなずきど):頷きまくる人」、「アナグラム:つづり字の位置を変えて別の語句をつくる。」
 印象に残った言葉の主旨として、「(人事で)同期を切るぐらいで悩むな。」、「22週を超えると死産」、「部下は利用するもの、上に利用されるもの。」、「個人としては優秀でも、組織人としてマネジメントができるわけではない。」
 思いがかなわなかった社員は辞めていきます。結局なんのために働いているのかというところにぶつかります。
 エレベーターの中で、重要なやりとりが何度もされるのですが、エレベーターの中というのはどうなのかなあと首をかしげました。
 もらいたくもない辞令を何度ももらうのがたいていのサラリーマンのありようです。
 サルバドール・ダリの絵。「時間」を考える。
 うーむ。そういうことか。うーむ。そういう流れか。  

Posted by 熊太郎 at 05:29Comments(0)TrackBack(0)読書感想文

2018年07月01日

ファーストラブ 島本理生

ファーストラブ 島本理生(しまもと・りお) 文藝春秋

 父親を刺殺した娘の心理を臨床心理士がさぐるという内容で始まりました。加害者娘自身がどうして父親を殺してしまったのかわからない様子です。ふたつのことを重ねてあるようです。加害者の家族関係、臨床心理士の家族関係、男女の関係があるようです。すべては、推定から読書がスタートしました。

 登場人物の名づけが独特です。凝りすぎの感あり。読みにくいです。人間関係も後付け説明でわかりにくい。
 タイトルは「初恋」と受け取って読み始めています。(読み終えてみると、初恋とはつながらない内容だったような気がしました。)
 最初の数行がいい。この本を買おうという購買意欲をそそられました。「育児」という単語がいい。「愛とは手を出すことではなく見守ることです。」とあります。この作品を読み解くヒントかもしれません。その後の設定と展開はありえないことが多すぎるのですが小説です。

 印象に残ったこととして、「赤い月」、「奪われたものを取り戻そうとして失う。(これもなにかのヒントでしょう。)」

 感じの悪い内容展開です。主人公は自意識過剰(気にしすぎ)で、差別的(学歴・権威主義)です。
 偶然なのでしょうが、最近の児童虐待をはじめとした親族間殺しとか無差別殺人事件とかに類似してきました。殺人の加害者を擁護する内容になるのだろうか。

 調べた言葉として、「修習生時代:司法試験合格後の人」、「驕らない:おごらない。才能、家柄、地位を理由にわがままな態度をとらない。」、「虚言壁:きょげんへき。どうしても嘘をついてしまう。」、「お焚き上げ:神棚、仏壇、人形などを心をこめて焼く。」

 加害者のキャラクター設定がとても女子アナ志望者にはみえない。

(つづく)

 読み終えました。途中から、内容に共感できなくなり、早く読み終えたい気持ちが強くなり、流し読みに入りました。わたしには合わない内容でした。

 臨床心理士という職に過剰な重みをのせて表現してあります。こどもさんの障害の判定をする人という知識しかありません。世間では、精神科医ほどの評価と知名度・信頼感はないような気がします。(本書88ページに記事あり。)
 読んでいると、カウンセリングという行為の名のもとに、臨床心理士に見下されているような印象があります。読み手に誤解を与えないといいのですが。

 登場人物がたくさんでてきて整理することがたいへんでした。

 父親は、奇人・変人、虐待者の類か。母も同類。娘も変。周りの男たちも普通ではありません。異常で異様な世界です。現実にはありそうで、実はない世界です。端的に言うと主人公女子大生のセリフ「ここにいると(拘置所)ぐちゃぐちゃの怪物を刺す夢をみる。」

  100ページまで読んできて、3ページの記述を思い出します。「育児」の本なのかなあ。

 殺人犯の過去を本にして出版する。うーむ。
 
 日本人は「戸籍」にこだわります。「戸籍」は、国が国民を管理するための国の所有物であって、本人の所有物ではありませんから、本人は戸籍に縛られる義務はないと思うのです。(そのみかえりとして権利の主張ができるわけですが、ほとんどの国々にはない制度です。)

 母親と娘の衝突と葛藤(互いに譲らず対立していがみ合う。)があります。加害者娘、そして、臨床心理士双方を同様に並べてあります。

 夢も希望もない。過去を掘り起こしても未来が見えない。人間の化けの皮をはぎとる作品でした。娘のリストカットの傷を見て、それはリストカットの傷ではないと思おうとする母親がいるのだろうか。  

Posted by 熊太郎 at 06:18Comments(0)TrackBack(0)読書感想文