2023年04月06日

でんしゃのひみつ しんかんせんの1日

でんしゃのひみつ しんかんせんの1日 え・溝口イタル 交通新聞社

 先日読んだ絵本が『しごとば 鈴木のりたけ ブロンズ新社』で、複数描かれていた仕事のなかに、新幹線運転士がありました。
 こちらの絵本では、新幹線運転士に着目して、詳しい情報が提供されています。

 自分は、これまではコロナ禍が続いて、移動がしにくかった期間が三年間ぐらいありました。
 コロナ禍がおさまってきたので、これからは、新幹線に乗る回数が増えそうです。
 先日用事があって千葉方面に、二泊三日の移動で、往復に新幹線を利用しました。
 移動時間が短くて済むので、たいへん便利です。
 往復ともに雲がかかって、富士山の上のほうが見えなかったことが残念でした。
 
 自分の体験では、新幹線は、博多駅から仙台駅の間で利用したことがあります。

 絵本では、1本の新幹線が、列車番号を変えながら、福岡県にある博多駅から東京駅までを一日に一往復半します。
 のぞみ8号:午前7時29分博多駅発。午前9時50分新大阪駅着。(JR西日本の運転士からJR東海の運転士に交代。女性運転士も複数おられるそうです)。8ページに運転席付近の絵があります。12時33分東京駅着。
 のぞみ8号は、名前をのぞみ35号に変えて、東京駅から博多駅を目指します。午後1時10分出発です。午後6時14分博多駅着です。
 のぞみ35号は、名前をのぞみ64号に変えて、博多駅から東京駅を目指します。午後11時45分に東京駅着です。(そしてまた、翌朝から動くのでしょう)

 運転士は「点呼」から始まります。点呼(てんこ):本日の業務内容、運転士の健康状態の確認。飲酒状態の確認もあるのでしょう。飛行機のパイロットも同じだと思います。
 想像するに、電車は運転士がいないと発車できないわけですから、運転士はけして遅れてはならないわけで、出発時刻の1時間から30分ぐらい前には現地に出勤しているであろうというイメージです。間違っても、乗車時刻ギリギリの出勤はないと推測します。
 そして駅は、ホテルのような施設になっているでしょう。食事ができる食堂のような部屋、宿泊ができるベッドの部屋、おふろ、台所もあるのでしょう。さらに、会議室や休憩室もあるのでしょう。一般人は立ち入ることができない区域でしょう。

 運転指令室がある場所のことを秘密の場所と書いてあるのですが、その部分を読んだ時、秘密ではないと思いました。
 調べたら、今は秘密になっているそうです。昔は公開で、見学も受けていたそうです。
 テロ行為の防止のためもあるのでしょう。(政治的な目的や意味をもっての無差別大量殺人事件)
 人間というのはむずかしい生き物です。施設を破壊することで自分や組織の目標を達成できるとは思えません。
 
 本の構成として、新幹線の移動の合間に運転士の行動が入れ込んであることが筋立てとしてわかりにくいです。移動は移動、業務内容は業務内容で、ふたつに分けて書いてもらったほうが理解しやすい。
 それから『運転士』に敬称の『さん』は付けないほうが読み手にとってはわかりやすく読みやすいです。児童書でよくみかけますが、氏名に「さん付け」や「くん付け」をされると読むリズムにのれなくて読みにくいです。つくり手はていねいさを表現しているのでしょうが、かえって迷惑です。

 秘密の指令所で働くことはけっこう精神的にストレスがありそうです。ストレス:苦しみ。
 閉鎖空間で、電子機器相手にマニュアルに従ってロボットのように機械的に働く。
 毎日長く続けていくには自己コントロールにおいてむずかしいものがあります。健康第一で気をつけて働かねばなりません。心身の故障を招きそうです。

 ふだんは機械的に動けばいいのですが、イレギュラー(予定外)なことが起きたときがたいへんです。
 事故や事件、自然災害の発生などです。日頃からどうするか決めて、訓練もやっておかねばなりません。人の命を守るための安全第一を目指す交通機関の義務と基本です。
 そしてトラブルは必ず起きるのです。

 絵本の中で、新幹線は、到着した東京駅で車内清掃作業をします。
 水濡れセンサーがついたほうきというのは初めて見ました。
 
 以前新幹線で見たことがありますが、大量のゴミを座席のまえの網ポケットのところに入れっぱなしにしたまま下車した乗客の人たちがいて、次に乗車してきたお客さんたちがたいへん怒っていました。(おこっていました)自分が出したごみは自分で片付けましょう。マナー(礼儀・作法)が悪い人は迷惑客です。

 忘れ物も困りものです。
 忘れ物は忘れた人が一番悪いのに、自分は悪いと思わない人もいます。変な人です。

 27ページまでで絵本の部分は終りです。
 28ページからは資料編のような構成になっています。
 歴史です。新幹線は最初から今の路線でスタートしたわけではないのです。路線が整備されてから生まれた人たちにとっては実感がわかないでしょう。老齢である自分の世代は、これまでの経過をこどものころから体験しています。それまでは、寝台車とか、急行列車などで長距離を移動していました。わたしの祖父母の時代は蒸気機関車で日本列島を移動していました。九州で暮らしていた祖父母が、自分たちが若い頃は、蒸気機関車で神戸や東京まで行っていたと話してくれました。もうしわしわのおじいちゃんやおばあちゃんになってしまっていた祖父母にも若々しくてピカピカした青春時代があったのだと不思議な気分で話を聞いていました。
 1964年(昭和39年):東京-新大阪 4時間 ひかり号で片道2480円
 1965年(昭和40年):東京-新大阪 3時間10分
 1972年(昭和47年):新大阪-岡山 開業
 1974年(昭和49年):食堂車登場 (2000年 平成12年廃止)
 1975年(昭和50年):岡山-博多 開業
 1986年(昭和61年):東京-新大阪 2時間52分
 1987年(昭和62年):国鉄(日本国有鉄道)が分割民営化
 

 国内最高速が東北新幹線と秋田新幹線で320キロメートルとあります。昨年秋に宮城県に行ったときに『こまち』に乗車しました。地形的に速度を上げやすいのでしょう。

 車両の検査について書いてあります。
 経費節減のための検査期間延ばしはやめたほうがいい。故障や事故につながります。新幹線以外の交通機関、移動手段も含めて、安全であるために点検は適時適切にやっておいてほしい。

 現在リニアモーターカーが建設中です。
 東京から名古屋が片道40分ぐらいだと聞きました。
 正直言って、わたしは、今の新幹線のままで十分です。移動にかかる時間は、1時間40分ぐらいです。ほどほどの時間で、とても便利です。駅弁やコーヒータイム、本や雑誌を見たり、雪をかぶった富士山の景色も楽しめたりします。
 リニアモーターカーの40分間トンネル内閉鎖空間移動というのは、仕事用の移動です。  

Posted by 熊太郎 at 07:16Comments(0)TrackBack(0)読書感想文

2023年04月04日

リバー 奥田英朗(おくだひでお)

リバー 奥田英朗(おくだひでお) 集英社

 本の帯の記述にひかれました。
 『十年前、渡良瀬川(わたらせがわ)河川敷で相次いで発見された若い女性の死体……』とあります。
 自分は小学生のときに数年間渡良瀬川の上流にある町で生活を送ったことがあります。
 渡良瀬川は、栃木県の山奥から群馬県に向けて流れています。最後は利根川と合流しています。読んでみたいという意欲が湧きました。

 これまでに何本か読んだ奥田英朗作品では『向田理髪店 奥田英朗(おくだ・ひでお) 光文社』が良かった。最後は感涙(かんるい。思わず涙。感動して涙)でした。
 失敗しても再起のチャンスを与えるという許容の極地に至るまでの気持ちの高まりを表現してありました。

 こちらのお話は、とても長い物語です。648ページあります。
 さあ、スタートです。

 登場人物として、元刑事、殺害された娘、殺害された娘の父親、若手新聞記者女性、犯罪心理学者、新たな容疑者がいるそうです。(本の帯からの情報として)

 5月8日午後3時45分ころ、群馬県にある桐生実業高校河川敷グラウンド付近の渡良瀬川中洲(わたらせがわなかす)にある藪の中(やぶのなか)で若い女性の死体が発見されました。
 定年退職して67歳の年金生活者である藤原達夫が、愛犬柴犬タローと散歩中に、タローが遺体を見つけました。(藤原達夫の妻は民生委員。おふたりには、大卒の長男と次男がおられるそうです)
 さて、どうなる。
 物語の構成は、序章から始まって、終章まで、10の章になっています。
 自分は、発見現場の群馬県桐生市(きりゅうし)には、電車の乗り換えですが、立ち寄ったことが何度かあります。

 群馬枝県警警察本部(県庁所在地の前橋市内にある)の9階が『指令センター』、4階が『刑事部屋』です。
 事件の担当は、桐生南警察署、近隣所轄署、機動捜査隊、鑑識課、捜査一課です。
 

『群馬県側のメンバー』 死体発見は5月8日

 群馬県警 斉藤一馬(さいとう・かずま。ニックネームが「イチウマ」群馬県警のゆるキャラは馬):34歳。既婚。5歳の息子と3歳の娘がいる。

 伊藤:群馬県警桐生南署刑事一家の若い巡査部長。この春、太田東署の地域課から異動してきた。愛称「Kポップ」

 内田警部:群馬県警捜査一課三係長。ベテラン刑事。ニックネーム「ヌシ(主)」

 久保:群馬県警捜査一課三係長補佐。内田警部の片腕

 牟田群馬県警本部長:刑事畑を歩いてきた官僚。議員に負けない姿勢がある。以前、大阪府警で、刑事部長を務めていた。着任して1年半。警察庁のキャリア官僚。長くても2年で去っていく。警視監という身分。警察庁の捜査一課長よりも身分が上。

 堀部群馬県警捜査一課長:剣道五段。目つき厳しい。人相悪い。頭は切れる。今回は、副本部長。娘ふたり。長女は既婚

 群馬県警桐生南署 木田署長:副本部長

 群馬県警管理官 西村:捜査一課のナンバー2。高校生の息子と娘がいる。

 群馬県警 武田刑事部長:今回の件の捜査本部長となる。

 群馬県警 星野広報官:男性(ずーっと、この人は女性だと思って読んでいました。433ページで「ぼくが」と出たので、男性だとわかりました。びっくりしました)群馬県警広報課の担当者。中学生の娘と小学6年生の息子がいる。
 
 群馬県警 藤川:ベテラン刑事。後記する吉田明菜の店スナック「リオ」の客

 帳場(ちょうば):捜査本部。群馬県桐生南署内に置く。

 千野今日子(ちの・きょうこ):群馬県警本部記者クラブに所属する(全国紙の)中央新聞社の記者。中学生まで東京都八王子市育ち。最近まで文化部所属だったが人事異動があった。
 今回の両県をまたがった連続殺人事件で、中央新聞社の群馬県前橋支局と、栃木県宇都宮支局が合同で取材をすることになります。各支局とも取材体制は10人以上。
 4人家族。父は会社員、母は専業主婦、弟は公務員

 小坂(男性):千野今日子の上司。デスク(責任者)警察担当キャップ(グループのリーダー)。
今回の事件に関して、群馬県前橋支局担当キャップを務める。

 中西:元刑事。元捜査一課係長。

 松岡芳邦:62歳。自営で写真館の経営をしている。パニック障害あり。10年前の連続殺人事件の犯人を追う。追って復讐する。十年前の犠牲者が自分の娘だった。松岡美樹。二十歳の専門学校生だった。松岡芳邦は過去をひきずる人です。娘のことをあきらめきれない。粘着質です。
 最近目の調子が良くない。なにか病気が始まっているようす。本人は気づいていない。(読み進めていて、自分と同じ目の病気だったので、びっくりしました。『加齢黄斑変性(かれいおうはんへんせい)』といいます。自分はもう15年以上検査のため数か月おきに検査のため通院しています。発病したころに、病気である右の目玉に月1回ペースで3回注射してもらい病気の進行が止まっています。症状は、松岡芳邦さんほど悪くはありません。松岡さんは左目が病気になっていて、視界の中心部が黒くなっているそうです。わたしは、右目の中心部だけがゆがんでみえます。なんというか、この物語を読んでいて、ほかのことも含めて、作者とわたしは、似通った部分があるのではないかと考えてしまいました)松岡芳邦は、自分自身で、眼科だけではなくて、自分は精神科を受診したほうがいいかもと思っています。(気持ちはわかります。なにせ、娘を殺された父親ですから。警察が十年前に犯人をつかまえることができなかったことへの怒り(いかり)の気持ちはわかります)

 松岡和子:松岡芳邦の妻。

 松岡拓哉:32歳。松岡芳邦の長男。松岡写真館の後継ぎ。

 橋田:写真館の協同組合の監事

 安藤麻衣子:今回の被害者。23歳。無職。5月3日午後5時桐生駅近くのコインパーキングに自分の軽自動車を駐車後、午後5時10分、迎えに来た男のミニバンに乗車した。婚活マッチングアプリを使って援助交際をしていたもよう。以降行方不明となり8日に河川敷で全裸の遺体が発見された。

 警察庁刑事局捜査一課河瀬一課長:捜査支援分析センターであるSSBCサイバーから犯罪捜査官の係官を手配した人物。清潔な服装。テキパキと指示を出す。

 篠田准教授:40歳。犯罪心理学者。(この人の推理部分はすばらしい。背筋が冷たくなります)妻と女子高生の娘あり。妻子ふたりとも変わっている。妻は大学の准教授でミドリムシの研究をしている。娘は歴史好きで、戦国時代に存在していた聞いたこともない人物のことを調べている。

 スバル・レヴォーグ:自分が知らない車です。スポーツカータイプの車。堀部捜査一課長が乗っています。

 吉田明菜:32歳。桐生市の南、栃木県足利市の西にある群馬県太田市太田駅南口スナック「リオ」で雇われママをしている。ホステス10人、5人ごとのローテーション。
 離婚母子家庭で育つ。母親は現在単身で生活保護を受給中。61歳の母親は娘に金をせびってばかりいる。母親は、パチンコと怪しげな宗教の手伝いをしている。

 以下は「リオ」のホステス:キャサリン、マリア(ペルー人。そそっかしい)、絵里香(20歳。売春行為あり)

 刈谷文彦:32歳男性。大柄。183cm、80kgぐらい。中学・高校は柔道部員。長野県松本市出身。1986年11月20日生まれ。
 期間工(35か月の雇用期間。2年11月。3年雇うと正式雇用の義務が発生するので企業は3年雇用を避ける)期間工は、3年ぐらい働いて500万円ぐらいの貯蓄ができる。
 刈谷文彦は、3月31日から運転手として採用されている。
 両親はこどものころ離婚。母子家庭で育つ。母親刈谷郁子現在59歳は覚せい剤使用者で前科五犯、覚せい剤のために闇金に借金をつくった。母は、覚せい剤取締法違反で服役経験あり。刈谷文彦は、母親を強く嫌っている。両者の交流なし。2歳年下の妹美香30歳には障害がある。生まれた時から脳性麻痺。運動機能障害あり。介護施設に入っている。
 刈谷文彦の言葉として『おれは(金をもらって)だれとでも寝る女は嫌いだ』
 (刈谷文彦の部分の記述を読んでいると邦画『砂の器(すなのうつわ)』を思い出すようなイメージがあります。

八木:長野県松本市内居住者。刈谷文彦の高校の同級生。ラーメン屋経営

 平塚健太郎:31歳。県会議員の息子。実家は昔からの大地主。兄と妹あり。本人は、大卒後銀行に就職したが2年で退職して昼間は引きこもり。夜間、高級外車で徘徊という日常を送っている。ネットカフェ、マンガ喫茶を利用している。165センチ。小柄。きゃしゃな手のひら。腕は細く女子中学生のよう。人格がおかしい。

 平塚耕一:59歳。平塚健太郎の父親。群馬県議会議員

 太田市にある会社として、外国人期間工が多い。スバル、パナソニック、ゼネラル重機(この会社は架空でしょう。太田市と桐生市と栃木県の足利市に工場があるそうです)。



『栃木県側のメンバー』 5月13日に足利市内渡良瀬運動公園付近の河川敷で若い女性の死体が発見される。(被害者:渡辺沙也加(父:幸一)21歳。衣料品量販店アルバイト)

 野島昌弘巡査部長:30歳。栃木県警足利北警察署(あしかがきたけいさつしょ)刑事第一課(強盗・窃盗担当。除く経済犯と組織犯)。新婚さん。

 栃木県警 土井刑事第一課長

 栃木県警 山下主任:ベテラン刑事

 栃木県警 宮田管理官

 栃木県警 中村刑事部長

 栃木県警 広川捜査一課長

 池田清:45歳。無職。生活保護受給者。障害者。10年前の殺人事件の容疑者(渡良瀬川連続殺人事件)だった。平成21年5月の出来事だった。確実な証拠がなく起訴できなかった。
 覚せい剤で服役した。反社会性が強い人間。最初の連続殺人事件が平成21年(2009年)、今回の事件が令和元年(2019年)
 サイコパス(反社会的人格の持ち主。人を殺してみたい。殺す経過に快楽を感じる。冷酷。無慈悲。尊大。良心欠如。罪悪感薄い。治療法はない)市営住宅に住んでいる。自己愛が異様に強い。無視されることが我慢できない。優秀な生徒が集まる進学校を中退している。書物のコレクター。頭はいい。だれかを殺しているらしいが事件として判明していない。

 大山明美:52歳。池田清の彼女。スナック「アケミ」のママ。

 瀧本誠司:63歳。10年前に池田清を取り調べた栃木県警の元刑事。定年退職して、タクシー会社で総務の仕事をしている。二十年間刑事をしていた。栃木県宇都宮市居住。偏屈でがんこな刑事だった。家庭では浮いている。妻より先に死ぬことが妻への孝行と考えている。こどもは複数いる。すでに独立している。人物像として「保身に走らず、情に厚く、何事も筋を通す。責任から逃げない。

 栃木県警 平野主任:瀧本誠司のかつての部下。弟子の立場。

 栃木県警 島田:瀧本誠司の元同僚。鑑識担当。現在は警察学校で再任用の教官をしている。(たまたまですが、先日見た「相棒14」の最終話で、鑑識役だった六角精児さんが警察学校で教官をされていました。この本のこの部分と重なりました。こういうことがあるとちょっぴり嬉しい)

 渡辺沙也加:犠牲者。21歳。168cm、55kg。衣料品量販店でアルバイト。5月12日日曜日午後6時、自分の軽自動車で足利駅近くの有料駐車場に車を停めたあと、男が運転するセダンに乗り換えた。男は、足利市在住の岡本哲也33歳会社員。岡本は既婚者。マッチングアプリを利用した援助交際。岡本はシロ。ふたりは、駅前で別れたのち、被害者は行方不明になった。

 福田栄一:「古道会」。元暴力団組長。産業廃棄物処理業者福田興産社長

 金村:福田栄一の元舎弟。解体業者。

 10年前と同一犯か。あるいは、あらたな犯人か。

 ふたつの県にまたがっていて、組織がふたつあって、全国を管轄する警察庁がとりまとめをやって、うまくいくのか。混乱しそうです。

 スマホのマッチングアプリの行為は、犯罪に近づく行為と思える。不特定多数から金銭を得ることもできる『援助交際』です。出会い系サイトは、犯罪と距離が近い。

 2009年5月(平成21年)に栃木県足利市(あしかがし)の渡良瀬川河川敷で女性の全裸死体が発見された。半月後、群馬県桐生市(きりゅし)の渡良瀬川河川敷で、同様の事件が起きた。容疑者として浮かんだ人物がいたが有力な証拠がなく未解決事件となっている。今回起きた群馬県内の事件発生地は同じ場所です。昔の犯人からの警察に対する挑戦状なのか。

 (なんというか。騒ぎ過ぎではなかろうか。もうご遺体になってしまっている)
 死後五日間の絞殺。遺体は全裸。

 昔観た映画、織田裕二さんが出ていた『踊る大走査線』の雰囲気があります。とくに、警察署の動きが庶民的なこと。
 警察の捜査はおもに人海戦術です。(じんかいせんじゅつ。おおぜいで事に当たる)

 飛ばし記事:新聞記事で、根拠が明確ではない。誤報になるときがある。

 渡良瀬川の中流から下流のことの内容です。
 読む前に期待していた上流の話は出てこないようです。

 群像劇なので、登場人物が多数です。
(群像劇:主人公をひとりにしない。集団が引き起こすドラマ)
 群馬県と栃木県の捜査について:10年前は合同捜査本部で失敗した(両者がそろってひとつの会議を開催するやり方)。今回は、共同捜査本部(それぞれの県警で会議を開催する。両県警がそれぞれ操作指揮権をもつ。毎日双方の管理官以上が出席して実施する。調整役は、両県警の一課長補佐(キャリア:国家公務員総合職試験に合格した警察官。所属は警察庁)

 シノギ:暴力団の経済活動。収入を得る手段。

 今、86ページ付近にいます。
 ここまで、登場人物を把握するのにせいいっぱいです。
 このページあたりから、物語が流れ始めました。まるで、川の流れのようです。

 まるでゲームのようです。
 作者の事前調査が徹底しています。
 緻密な調査で物語の下地ができていることがわかります。

 同一犯であれば、10年間のブランクが疑問。10年間、別の土地へ行っていたと考えられる。
 容疑者の拘束時間は、48時間、うまくいけば23日間。
 ナンバープレートの番号『群馬100 あ 215×』 コンテナ型トラック。荷台に着脱装置付きのコンテナがある。大量の荷物を運搬できる。「あ行(ぎょう)」と「か行」は、事業者用。定期的な駐車場所は、工場、事務所、店舗。

 パーソナリティ障害:物の考え方、行動が、一般の人と著しく異なる。
 シナをつくる:色気で誘う。

 195ページまで読みました。
 おもしろい。
 あと453ページあります。

(つづく)

 ページ数が多く、登場人物も多く、地理不案内の人が読むと混乱してくるのでしょうが、ていねいに読んでいくと、かなり、おもしろい。大きな紙、数枚に登場人物や出来事をメモしながら読み進めています。
 この作品、映画になるといいのになあと思いながら読んでいます。ヒットすると思います。

 内偵(ないてい):相手に知られないように秘密の捜査
 常套句(じょうとうく):決まり文句
コンテナ式荷台の中型トラック:4トントラックぐらいか。
 奇譚のない(きたんのない):遠慮のない。率直な。

 代貸(だいがし):暴力団の組のナンバー2。組長の代理。

 7月16日、群馬県警と栃木県警の合同捜査本部が設置された。事件発生は5月だった。
 犯人を見つけることができなかった10年前のことも含めて、連続殺人事件の容疑者は両県内に、複数名浮かんでいる。
 
 登山用のハイソックスからは、長野県松本市を思い浮かべます。北アルプス登山のイメージからです。

 いいなと思った文章として『……妻が最近元気なのは、(捜査で)きっと自分が家にいないからだ。そう思うと、罪滅ぼしをしている気にもなる(妻は女友だちたちと旅行に行って楽しんでいる)』

 殺人犯人を捕まえるためには手段を選ばないという執念はどこから生まれてくるのだろう。昔読んだ本『勇気ってなんだろう 江川紹子 岩波ジュニア文庫』現実の出来事として、勇気をふりしぼった人は、孤立とか孤独という厳しい環境を体験されています。
 ことがらはどんどん進行していきます。
 かなりおもしろい。

 猟奇殺人(りょうきさつじん):異常な言動を伴う殺人手法で殺人をおかす。この物語に出てくる複数の容疑者たちは、それぞれ異常で奇妙です。
 エクソシスト:ホラー洋画。高校生の頃、映画館で観ました。館内は若い男女で満席でした。そうか、この本を読んですんなり理解できたことがあります。あの少女は多重人格になっていた。悪魔祓い(あくまばらい)が闘っていたのはあの少女ではなくて、あの少女の中に棲む(すむ)別人格者だったのか。もう半世紀ぐらい前に観た映画のことが今になってわかりました。

 お金があっても、つらいことがある家があります。
 お金がなくてつらい家もあります。
 お金ってなんだろう。
 お金は使うもので、お金に振り回されるようになってはいけない。
 お金があってもなくても「志(こころざし。お金をコントロールしていく)」をもつことが大事。
 学力や知力があってもつらい家があります。
 人間とはなんだろう。
 救いを求めるために文学があります。
 読んでいて、犯罪心理学者の篠田准教授の言葉がけっこう響きます。
 親がこどもによる犯罪拡大防止のために自分のこどもを殺す。実際にそういうことがありました。あるいは、こどもといっしょに心中する。(しんじゅう。殺して自分は自殺する。複数で死ぬ。みちづれ)
 篠田教授の言葉に、学びがあります。

 352ページ付近にいます。あと300ページぐらいです。

(つづく)

 嫌疑性(けんぎせい):疑いがあるが十分ではない。
 エクスタシー:うっとりとした状態
 オミット:却下する。省く。除外する。
 証左(しょうさ):事実を明らかにする証拠となるもの。
 忠臣は二君に仕えず(ちゅうしんはにくんにつかえず):一度主君を決めたら、二度と主君を変えないのが忠臣(主君に誠実に従う家来)である。
 
 読んでいて感じるのは、男社会です。警察組織は、女性の社会ではありません。
 そして制服社会です。命令で動く組織です。
 それから担当区域の区域に関するこだわりがあります。

 人間の多面性について考えました。
 正面から見るとシロだけれど、側面から見ると黒や灰色にも見える。

 母親が壊れると、こどもも壊れるのか。

 佐藤:警友会(けいゆうかい。警察官友の会。OBの会(退職者。オールドボーイ))の理事
 ラティーノ:ラテンアメリカ人の世界

 リレー方式で、語り手が変わっていく群像ドラマです。
 長野県の松本市内には昨年観光で行ったので、土地勘があり、そのときの景色をイメージしながら物語を読んでいます。

 文章を読みながら、最近のテレビ番組のバス旅では、イオンに向かってのバス往復路線がよく映像に出てくるなあと思っていました。地方のバス路線は、駅からイオンショッピングセンターにつながる路線が多い。
 398ページに『……今の日本の地方都市はイオンの一人勝ちってことでしょう……』というセリフが出てきました。同感です。

 いい文章が出てきました。
 『犯罪は、周囲の人間を根こそぎ地獄に突き落とす。』
 本当にそうです。当事者ではない者まで被害を受けます。

 疵:きず。
 
 頭がおかしい人、頭がおかしくなっている人がいる。
 自分の思いをとげるためには、違法行為もやる。
 善良な一般市民をだますこともいとわない。
 異常な世界が始まって、混乱が起きる。

 目的を達成するための取引が多くなってきました。
 
 合同捜査本部:地取り班(近隣住民への聞き込み)、鑑取り班(かんどりはん。交友関係を洗う)、証拠班、特命班(証拠の裏付け)、科学資料班の編成

 昔観た高倉健さんの邦画『駅 STATION』を思い出しました。
 根津甚八さんが連続殺人鬼の兄で、彼の妹が烏丸せつこさんでした。(からすま・せつこさん)
 
 知悉(ちしつ):ことごとく細かい点まで知っている。

 犠牲者は、援助交際をしていた若い女性に限られている。

 記者は経験(が大事。必要)
 マスコミというのは、なんのために犯人を追いかけているのだろう。
 新聞を売るためなのか。(収入を増やすためか……)
 捜査のじゃまをして、関係者家族に不快な思いをさせて、ときに、人の道を踏み外すような行為や言動をしてはいないか。

 捜査陣は、この膠着状態をどう打開するのだろう。(こうちゃくじょうたい。ずっと同じままで変化がない)

 スマホの機能として:位置情報をオフにしても、次に、情報追跡機能を無効にしないとグーグルでは、位置情報が追跡・保存されているそうです。(そういうことがあるのか)
 
 ブルートゥース:デジタル機器の近距離無線通信

 十年前の連続殺人事件と今回の連続殺人事件は、なにか関連があるような気がします。
 快楽殺人事件です。人を殺すことを楽しんでいる。

 赤い繊維片(せんいへん):鍵を握る証拠です。わたしは、登山靴をはくときにはく厚手の靴下の繊維片だと思いながら物語を読んでいます。繊維片について、十年前は、一件目と二件目で、種類が異なっていたそうです。

 障害をもつこどもさんは、一家の精神的な支えになる。

 まず、小動物を殺し、次に人間を殺すようになる。

 容疑者は取り調べ中黙っています。黙っているということは、犯行をしているということなのか。犯行をしていないのなら、必死にやっていないと抗議するはずです。

 長野県から群馬県に来て、(よそ者のくせに)群馬県民を殺したのはけしからん。
 警察はあせっています。
 善光寺や松本城の話も出ます。(昨年、自分は善光寺参りをしたあと、松本城見学もしたので、身近に感じます。景色がリアルに脳裏に浮かびます)
 
 ゴム引きの軍手(軍手のてのひら部分にゴムの部分がある。すべり止め)、厚手のハイソックス。

 519ページ。すごいことになってきました。警察は追い込まれました。

(つづく)

 殺人の目的が理解できません。
 人を殺す経過が楽しいらしい。狂気です。
 加害者は頭が悪いわけではありません。むしろ殺人行為についてばれない策略を巡らす頭脳です。
 たいへんなことになりました。
 大きな出来事が起きました。
 なぜ、全裸にするのだろう。
 身元はすみやかにわかってしまうのに。
 
 新聞記者の真意を、読み手である自分はつかめません。
 『……何としても全貌を明らかにしよう。それが新聞の使命だ』

 シリアルキラー:異常な心理の欲求で、殺人を繰り返す者
 美学(びがく):美に関する独特な考え方、趣味
 懺悔(ざんげ):神に対して罪を告白して許しを乞う(こう。頼む)。
 澱(おり):液体のそこにたまったよどみ。かす。
 アップルウォッチ:アイフォンとの連携機能をもつ。この物語では位置情報が活用されている。
 檀家(だんか):警察言葉として、地域の有力者、協力者のこと。
 
 警察や検事や裁判官らの意識が、犯人がだれであってもかまわない。自分が、毎月決まった日に、決まった額の給料をもらえたらそれでいいと思うようになったら、この世は終わりです。

 事実の現象と、これまでのことのつじつまが合わない。

 そうか……(いつも善人は、泣く思いをする。こんな洗脳のされかたがあったのか。被害者なのに被害者意識がない。逆に、被害者が、加害者をかばおうとする)

 加害者は、人格がおかしくなっている。生まれつきそうなのか。生まれてからそうなったのかはわかりませんが、壊れている。

 読み応え(よみごたえ)がありました。
 事件が解決して、だれかが幸せになったのだろうか……

 緊張がピークまで達して、ことが済んで、いまは、抜け殻です。(ぬけがら)

 いつまでも済んでしまったことをひきずる夫と、過去のことをあきらめて未来に希望を見出そうとする妻がいます。

 自己承認欲求:自分で自分を認めたい。
 
 この物語を、加害者の立場から書くと、また、おもしろいものができあがるのでしょう。

 そして、話は最初に戻る。
 物語づくりの基本のひとつなのでしょう。
 
 なかなか良かった。  

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2023年03月31日

しごとば 鈴木のりたけ

しごとば 鈴木のりたけ ブロンズ新社

 こどもさん向けの職業紹介絵本です。
 人物の表情がリアル(本物みたい)です。
 この作者さんによる「しごとば」シリーズ絵本があります。
 だいたいが個人営業主です。サラリーマンはないのね。
 サラリーマンは平凡な職業だけれど大多数は給料もらいの仕事をしています。

 細かい描写で絵ができています。
 この絵本では、美容師、新幹線運転士、すし職人、自動車整備士、木のおもちゃ職人、革職人、歯医者、パティシエ、グラフィックデザイナー、ご自分(絵本作家)が紹介されています。

 美容師のページをながめていたら、おしゃれをしようかなという気持ちになりました。
 
 新幹線運転士は、仕事だから、運転はたぶん楽しくはないと思います。
 死亡や傷害を伴う事故は起こしたくないので、常に警戒と緊張が必要です。
 最近では、列車の車体が外部にあるものと衝突するのではなく、新幹線に限らず、車内で刃物をもって暴れる人が現れました。
 昔、そんな人は聞いたことがありませんでした。
 人の心が荒れています。
 運転士は運転することに気持ちを集中していたい。
 新幹線は、長さが400mもあるそうです。歩いたら5分ぐらいかかりそうです。(たまたまですが、きのう品川から名古屋まで新幹線のぞみに乗りました。品川駅のホームを5号車のあたりから13号車まで歩きました。けっこう長かった)
 絵本では、運転士という人間が、タイムスケジュールに沿って、ロボットのように動きます。
 車や電車、機械の操作では、人間がマニュアル(手引き)に従って、機械のように動くことが求められています。

 すし職人の部分は、おとなが読んでも有益です。
 魚の部位とか、お寿司のつくり方が書いてあります。
 春先の今は、お刺身がおいしい季節だと感じています。

 自動車整備士です。
 電気自動車が増えてきました。(これまでは、ガソリン車とか、ガソリンと電気の混合であるハイブリッド車)整備のしかたも 変わってきているのでしょう。
 絵本では、パンク修理の方法が細かく書いてあります。
 こんなふうにやるのかと驚きました。

 木のおもちゃ職人です。
 そうか。木のおもちゃは、あかちゃんや幼児が口に入れても安全な大きさにしてあるのか。
 知りませんでした。
 こどものおもちゃや遊具は『安全第一』です。

 革職人のページは、学校の工作を思い出します。
 技術が必要ですが、根気(こんき)も必要です。コツコツ少しずつ工作のような作業を進めていくのです。
 
 歯医者。
 先週、歯医者での治療が終わったわたしです。
 歯はだいじです。
 暴飲暴食をして、歯を痛めたことを、歳(とし)をとってから後悔しました。
 でももう新しい歯は生えてきません。残念。
 治療を受けていると、患者のほうは、どんな道具を使用しているのかはわかりません。
 この絵本を見て道具類のことがよくわかりました。

 パティシエ。
 ここまで読んできて、どの職業も道具がいっぱいです。
 パティシエは、ケーキを始めとして、甘くておいしいお菓子をつくります。

 グラフィックデザイナー。
 芸術家です。

 作者(絵本作家)
 この絵本では、おもに、ひとりでする仕事がメインでした。
 よく売れている絵本です。電子書籍よりも紙の絵本がこどもさんには好まれるでしょう。絵画集の趣もあります。(おもむき)
 この絵本は、おとながこどもに読ませたい絵本でしょう。
 絵本であり、図鑑でもありました。  

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2023年03月26日

偉い人ほどすぐ逃げる 武田砂鉄

偉い人ほどすぐ逃げる 武田砂鉄(たけだ・さてつ) 文藝春秋

 初めて読む著者です。
 書評の評判が良かったので、読んでみたくなりました。
 出版社勤務ののちフリーライターをされているそうです。
 1982年生まれ(昭和57年)の男性です。

 43本のエッセイ集です。(エッセイ:思うままに書いた文章)
 純文学の雑誌『文学界』に掲載されたものだそうです。
 読み始めます。

 「偉い人ほどすぐ逃げる」というタイトルのエッセイは見当たりません。エッセイ全体のイメージ、雰囲気が「偉い人ほどすぐ逃げる」だそうです。
 自分には、責任者というのは、責任をとらないために努力する人という印象があります。自身や組織の利益を守るために、非を認めない理屈を駆使して構築します。
 それとは別に、頭のいい人たちの特徴として、いざとなったら「知らん顔」をする人たちがいます。脳みその中にあるのは「利害関係」だけです。
 自分と利害関係がない人間は、石ころ扱いです。昔洋画でそんなシーンを見たことがあります。この地球上には、大陸の数、あるいは大都市の数だけの人間しかいない。
 自分にとって、重要な援助をしてくれる人間だけが、自分にとっての人類だというようなセリフでした。

 2016年の東京都知事選挙の話から始まりました。
 『効率』が優先されます。
 効率をすべてのことに優先させないでほしい。
 効率を追い求めるから、世間が、ぎすぎすするのです。
 むだがあっていいのです。
 心の安定を保つために「ゆとり」という「遊び」の部分は大切です。
 
 書いてある内容は、もう過去のことです。
 過去に起こった時事問題とか事件・事故のことです。
 
 詐欺師のように、大衆の心理をじょうずに誘導した者が一時的に勝つけれど、やがて化けの皮がはがれます。

 文脈から考えると、著者は、政治評論家です。

 24ページまで読んだあと、1ページずつゆっくりめくりながら、258ページの「おわりに」まできました。本が出た日付は2021年4月(令和2年)になっています。コロナ禍が始まって2年目です。

 再び24ページに戻ります。奈良県で銃弾に倒れて亡くなった前首相のことが出てきます。(2022年7月の出来事)
 本というものは、不思議な記録です。本のなかでは生きている人が、現実社会の今現在はこの世におられません。心にしみるものがあります。
 今日、隣にいる人が、明日も隣にいてくれるという保障はどこにもありません。
 家族の場合はせつない出来事になってしまいます。出がけの別れの挨拶をするときは、できるだけ感情的なケンカをしていないようにしたい。
 ケンカ別れが人生最後の別れになると、残った者は苦しい後悔を一生ひきずることになります。

 最後のページまで、ぺらぺらとめくりながら思ったことです。
 北朝鮮がミサイルを撃つことが書いてあります。何年たっても状況は変わっていません。

 政治の世界の不祥事、ゴタゴタが書いてあります。人が変わるだけで、不祥事は後を絶ちません。
 政治の世界では、人間が消耗品のように、現れては消えていきます。

 この本は、政治の本なのか。
 社会学者かコメンテーター(自分の意見や考えを述べる人)の言葉の内容です。

 「税金婚活」という単語が目に飛び込んできました。
 思い出して見れば「少子高齢化」ということは、わたしが二十代後半のころから予測され対策が考えられてきました。もう四十年ぐらい前のことです。
 それでも少子化を止められない。もう、無理なのです。もう無理だとして、じゃあどうしたらいいのかを考える時期に達しています。
 
 24ページに戻って再び読み始めます。
 2017年8月29日北朝鮮のミサイルが発射されて、日本の広域にJアラート(全国瞬時警報システム)が鳴らされています。ミサイルは日本の上空を通過しています。似たようなことが昨年もあったような記憶です。
 2022年10月4日でした。必要のない地域にもアラートが発令された記憶です。東京都の南の島。伊豆諸島、小笠原諸島です。
 読みながら考えたことです。
 日本人は『うわべ』とか『形式』を重んじる民族であることが浮き彫りになりました。

 著者は「人と意見が食い違っているときには、納得がいくまで議論したい方」だそうです。

 政治家というのはパフォーマンスをして目立って、選挙で集票につなげることが常套手段(じょうとうしゅだん。(いつも使うやり方)
 本の内容は、なにかしら世の中のおぞましきものの羅列(られつ)が続きます。パワハラ、長時間労働、自殺など。
 人間というものは、「ぼんやりとしたもの」で「きちっとしたもの」にはなれないと悟ります。気づきがあります。

 「令和」の「令」は、命令の「令」という文章があります。そういう発想って、自分にはありませんでした。

 エッセイの文章を読んで、痛快に感じる読者もいるでしょう。

 ナンシー関(せき):女性。版画家。コラムニスト。1962年(昭和37年)-2002年(平成14年)39歳没。虚血性心不全。青森市出身。

 著者の政治家、世相に対する分析が丁寧です。
 タピオカが出てきます。そんなときがありました。
 出ては消えていく流行が浮いたり沈んだり消えたりしています。
 政治家の名前もその時は日本中に響き渡っていましたが、今となっては、そんな人もいたなあという遠い過去の記憶になっている人もあります。

 政治活動や経済活動における猛烈な競争の中で、体を壊したり、命を落としたりしていく人たちがいます。淘汰(とうた。ふるいにかけられる。生き残り合戦)です。
 書いてあるとおり、原因は個人の資質ではなく、社会的な構造です。厳しさを求める。心身の酷使を容認する、あるいは厳しさと酷使を提唱することが正しい、あるいは妥当であるという慣習が日本社会にあります。
 外国人が不思議がる過労死です。がんばるのです。組織のために命を落としてまでがんばるのです。
 正義があるきれいで美しい世界でがんばるのではなく、どろどろとした悪があって、理不尽、不合理、不条理な世界でがんばれと尻を叩かれるのです。
「死んでもしょうがない。本人の耐性が足りなかった」で済まされるのです。恐るべき日本社会です。怖い。まじめでがんばる人は気をつけた方がいい。真実は、善人が、他者の利益のために、他者に利用されているだけなのです。

 歴史書を読むようです。そのとき表舞台に立っていた人たちが、今はもう表舞台にはいない。

 内容では、マスコミと政治家のありかたに対する攻撃が厳しい。
 ただ、それが世間というものです。世情(感情で動く群衆のなりわい。パターン)ともいえます。
 どうでもいいと思われることを、時間つぶしのためにしているという社会活動の一部があります。

 政治家の技術とは=(自分ではない)誰かの責任にする技術と読み取れます。

 マイナンバーカードとか、特別定額給付金、布マスク、東京五輪、桜を見る会、女性活躍社会、大学入試センター試験の変更、ワンチーム、いろいろありました。いろいろあります。

 文句があるなら、じゃあ、あなたがやってみなさいよという理屈があります。
 自分は長い人生で、そういうケースを何度か体験しました。
 文句を言ったほうが、じゃあやるかというと、やれたためしがありませんでした。
 文句を言ったほうは、まず、じゃあやるとは言いません。
 順番だからと促して、文句を言った本人がやったとしても、出来栄えは、ボロボロでした。
 だれがやってもやれないこともあるのです。

 政治家が発信するメッセージや会社の社員教育が『精神論』になっている。
 精神論で、見えないものが見えたり、聞こえないものが聞こえたり、脳みその中にある思考活動が洗脳されていく。そして、メッセージの受け手の頭の中がおかしくなっていく。
 
 著者のスタイル(立ち位置)は、あたりまえのことをあたりまえに発言することです。
 世間には、あたりまえのことをあたりまえにやれたら、苦労はないという意見があります。
 読んでいて思うのです。
 著者は、だれに向かって語っているのだろう。
 なにも無い空間に向かって話をしているようにみえる文脈です。

 2021年に開催された東京オリンピックについての考察記事が多い。ただし、開催前の状態です。
 結局コロナ禍の中、強硬開催された東京オリンピックって何だったのだろう。
 本の中では『復興五輪』というメッセージに対する(東日本大震災の被災地を含めた)批判があります。見た目の名目(めいもく。口実。表向きの理由)だけの「復興五輪」だと判断されています。
 ほかには、ロゴ(シンボルマーク)盗作騒動でゴタゴタしました。
 国立競技場の建設案の変更がありました。
 この本では、そもそも国立競技場を建て替える必要はなかったとあります。以前の国立競技場は使用が可能だった。
 周辺環境も含めて、新しい競技場のために歴史ある古い建物が壊された。そして、結果論ですが、コロナ禍を押し切っての無観客での開催は、結局、何万人もが入場できる新しいスタジアムを建設する必要はなかったという結論の位置に到達します。
 政府(内閣とその下の機関)はお金を動かすことを考えている。お金は動いた。されど、今になって、談合とか贈収賄が吹き出してきました。権力者たちがもうけるためにオリンピックは開催されたのか。しかたがなかったで、すんでしまうのか。信頼関係は薄らいでいくばかりです。
 
 この本が書かれた時点では表に出ていませんが、問題になっている宗教団体と関係がある議員の発言も出ています。
 
 教育について書いてあります。
 組織に忠実な人間をつくりあげる教育が徹底していた日本でした。
 人間を標準化することから離れて、個々のしたいようにと変化しています。
 いいとか悪いとかは別にして、国力(こくりょく。経済力)は衰退していくのでしょう。
 『……これまで社員の勤勉さと長時間労働が産業競争力を支え、国際競争力の源泉となってきた側面がある……』(著者はそのことを強く批判しています。ただし、わたしは事実だと認めます)

 結婚相談所のキャッチフレーズです。『男の価値は、妻でわかる。』(そんなキャッチフレーズがあるのか)
 役所がからんだ結婚促進事業のことが書いてあります。少子化対策です。
 学歴とか職業とか、ゲーム感覚でとか、いろいろ書いてあります。(まずは愛情で、ずっとこの人といっしょにいたいと思う人と結婚するのではなかろうか)

 著者の仕事はけして人から好かれるものではありません。どちらかといえば嫌われるほうでしょう。
 朝のバラエティ番組の辛口(からくち)コメンティターのようです。分析して、評価して、反論ありき、批判ありきです。黙っていられないのです。長いものには巻かれないのです。人がそうしたいと思ってもなかなかできないことです。反発覚悟のうえでの攻撃的なメッセージの発信です。(そういう仕事も必要です)

 一般的に、同じ利益を追いかけている集団は、仲間同士内での否定は×で、予定調和が○です。著者は、仲良しごっこはできないし、嫌いなのです。自立心が強い。依存心はもたないのでしょう。

 あら探し:相手の欠点や過失を細かいとこまで探して相手を批判したり、責めたりすること。しつこい態度と姿勢があります。
 紋切型(もんきりがた):おきまり。やり方が一定の型にはまっている。ステレオタイプ。
 毒舌(どくぜつ):相手に対してトゲのある言葉、厳しい悪口や皮肉を言うこと。相手が嫌がるようなことを言う。

 夜の商売をしている女性の言葉として『警察は(わたしたちを)守ってくれない。(ヤクザはわたしたちを)守ってくれる。(ヤクザは)こわくない』
 警察は形式だけのことをする。自分の身は自分で守ることが基本なのでしょう。

 身体障害者を使った報道のあり方に対する批判があります。
 感動を生み出すために身体障害者を番組制作の素材扱いするのはやめようです。障害者をほかのものに言い換えることもできるのでしょう。福祉サービスを受ける人たちです。高齢者、ひとり親家庭、ホームレスなど。

 政治家がよく口にする言葉として『丁寧な説明』
 丁寧な説明が必要ですと他人事(ひとごと)のように言って、自分の発言に割り当てられた時間をつぶす。

 社会活動の目的が『お金もうけ』である以上、お金もうけのための嘘八百(うそはっぴゃく。つじつま合わせ)が横行することは、やむを得ないのでしょう。
 ウソが多い世の中で、個々が賢い(かしこい)自分になるように、自分のスタンス(姿勢)を身につけて、身を守ることが大事だと感じました。

 以前セクハラ発言で辞任した国の行政組織の偉い人の話が出てきました。
 一生懸命働きすぎて、たぶん120%ぐらいの力を出して働いていて、(この一線を超えたら、自分はやばいことになる)という判断ができなくなるほど自分を追い詰めて、脳の中が壊れたのでしょう。ちょっと待てと立ち止まる心の余裕(遊び部分)を残しておいたほうがいい。
 頭脳優秀で地位が高い人だからといって、善人であるということはありません。すばらしい高い記録をつくったからといって、人格まで優れている(すぐれている)とは限りません。
 偉業を成し遂げた人でも差別発言はするし、実績と人格は一致しないこともあります。しっかり人を見なければなりません。いっぽう、人間とはそういうものと思うことも大事です。

 そういえば、東京オリンピックのコースが、突然のように、東京都内から札幌市内に変更されました。素直に考えればメチャクチャです。準備をされていた方々は相当お怒りになられたことでしょう。

 テーゼ:定立。ある事柄を肯定的に主張する。
 煽情的(せんじょうてき):感情をあおりたてる。
 顰蹙(ひんしゅく):不快感で顔をしかめる。

 かなり刺激的な内容の本でした。  

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2023年03月24日

『ロストワールド』『メトロポリス』 手塚治虫文庫全集

『ロストワールド』『メトロポリス』 手塚治虫文庫全集 講談社

 第二次世界大戦、戦後間もなくの漫画作品です。
 先日赤塚不二夫さんの『これでいいのだ 赤塚不二夫自叙伝 文春文庫』を読んで、読んでみたくなりました。
 恐竜好きの小学生の孫にプレゼントしてみるつもりです。(読み終えて、ちょっと今の小学生には理解しにくい作品でした。プレゼントはやめておきます)

 『ロストワールド(地球編)』 1948年(昭和23年。終戦が昭和20年)発行
 『ロストワールド(宇宙編)』 1948年発行
 『メトロポリス』 1949年(昭和24年)発行
 ロストワールドというのは、恐竜の世界(恐竜が絶滅した世界)ととらえての前知識です。読んでみて、恐竜がメインの作品ではありませんでした。人造人間の話です。鉄腕アトムが誕生する前、鉄腕アトム誕生に向けての経過的前作品でした。おおもとは、著者がまだ中学生だったときからの作品づくりの続きです。

『ロストワールド』
 やわらかいマンガの絵です。
 ヒゲオヤジが出てきました。ヒゲオヤジは、名探偵「伴俊作」さんだそうです。
 冒頭付近のシーンで、鉄砲で撃たれて死んだのが、理学士の邪我汰良平(じゃがた・りょうへい)です。
 邪我良平氏の左の義眼が大事な宝石だったそうです。(黒曜石のようなみごとな宝石は、敷島健一博士から預かったものです)

 ミイちゃん(男子。あとで、女子にもなれることがわかる):敷島健一博士(まだこどもだが博士)がつくったウサギのロボット。動物の脳みそを手術で人間の脳みそのようにつくり変える。(なんだか、現代のAIロボットのようです)

 花輪さん:撃たれて殺された理学士邪我良平(じゃが・りょうへい)の執事(しつじ。ご主人さまの身の回りのことをする仕事)

 敷島健一博士の研究所は、ポケモンの研究所のようでもあります。ポケモンの研究所のほうは、オーキド博士がいます。

 ホールス:悪者(わるもの)
 ジプュール:悪者

 豚藻負児(ぶたも・まける)博士:敷島博士の知り合いで植物の研究をしている。
 
 山野穴太(やまの・あなた):鉄砲で撃たれて死んだ理学士の邪我汰良平(じゃがた・りょうへい)の執事

 ママンゴ星:星。500万年ぶりに地球に接近している。地球からちぎれて飛んでいった星だそうです。次回、4月4日13時13分13秒に地球に近づくそうです。
 
 山の上に流れ星が落ちて、ママンゴ星と落ちた流れ星とは関係があるらしい。
 アセチレン・ランプ:テンプラ新聞社に勤める記者
 ママンゴ星がらみで発見をした者に、ジュピター博士から1000万円の贈呈がある。
 流れ星が地球に流れ落ちて小さな石になって、その小さな石に電圧をかけるとものすごいエネルギーが生れる。
 そんな流れなのですが、ストーリーをすんなりとは飲み込めません。昭和23年、戦後それほどたっていないので、初期作品だからだろうか。小学生低学年にはむずかしい話の流れです。(作品の構想自体は、作者が中学生のころ、戦前・戦時中、昭和10年代ころだそうです)
 
 コマが大きい部分、ふたりの男の戦いの部分に迫力があります。
 静止画ですが、動きがあります。
 
 悪者が『結社(けっしゃ)』の人間です。『ママンゴ星秘密結社支部』です。
 アフィルが結社の主人です。メンバーとして、ホールスという人物がいます。
 合言葉は『ママ』と『ンゴ』です。
 登場人物の言葉づかいは、まるで、チャンバラ映画のようです。時代が感じられます。

 ウサギの人造ロボットミイちゃんが、エネルギー石のひとつを持っています。(全部で3個)

 エネルギー石=石炭をイメージします。

 理学博士豚藻負児(ぶたも・まける)は、植物を人間化する研究をしている。

 敷島健一博士はママンゴ星に行って、エネルギー石をたくさんとりたい。

 ロケットに乗って、宇宙へ出発です。
 ママンゴ星でエネルギー石を採集します。
 メンバーは、敷島博士(機長)、ヒゲオヤジ(名探偵「伴俊作」。監督のポジション)、うさぎタイプのロボットミイちゃん(命令伝達役)、山野穴太(やまの・あなた。観測、計算、記録担当。鉄砲で撃たれて死んだ理学士邪我汰良平(じゃがた・りょうへい)の執事)、大場加三太郎(おおば・かみたろう。直接発動機担当)、力クン(ちからくん。大場の補佐)、花輪重志(はなわ・おもし。雑役係)、もみじとあやめ(植物からつくった人造人間ふたり女性タイプ)、どういうわけか宇宙へ向かうロケットなのに密航者が三人います。陰謀団だそうです。そのうちのひとりが、新聞記者アセチレン・ランプ(その後、宇宙船から外に飛び出て、星になってしまいます)。ほかに、アフィルとグラターンという人物がいます。

 途中でロケットがエンコ(故障)してしまいました。
 心配されましたが、ロケットは、ママンゴ星の引力に引っ張られて動き出しました。4月4日13時13分13秒の出来事でした。(時刻は、地球への衝突時刻ではありませんでした。最接近時刻でした)

 ママンゴ星に到着しました。
 ママンゴ星探検の始まりです。
 太古の恐竜がいます。地球だと恐竜時代は、紀元前2億年から紀元前6600万年ぐらいです。三畳紀、ジュラ紀、白亜紀があります。
 恐竜がいるママンゴ星は、地球がまだ若かった時の状態なのです。
 エネルギー石は、レアアースみたいな位置づけです。(希少金属。テレビやパソコン、スマホなどに使われる)

 昭和23年頃の作品です。今の時代だとけっこうやばい表現があります。セクハラ、パワハラ、女性蔑視(べっし。さげすむ)な表現があります。

 最後のドタバタは『正義VS悪』です。

 読む前にたぶんこんなお話だろうと思っていたものとは内容が違います。洋画、ジュラシックパークのような恐竜ものだと思っていました。されど、静止画が動画のように見えておもしろい。

 ジュピター博士:ママンゴ星の状態を明らかにした者への1000万円の提供者。
 ママンゴ星には、地球の過去の姿があった。(ロストワールド(前世紀))
 そして、ママンゴ星は、これから未来に向かって、地球と同じような歴史を刻み(きざみ)始める。

 このお話の部分のあとに、作者のコメントがあります。
 このマンガの素材となる創作は、作者の中学生時代からということだそうです。第二次世界大戦中が作者の中学生時代です。
 漫画の中には、戦争の影はありません。

『メトロポリス』
 メトロポリスというのは、中心都市とか大都市というそうです。
 恐竜たちの絵から始まりました。
 ベル博士の話です。
 氷河時代にサーベルトラが現れた。(ネコ科に属する食肉獣)
 時代は経過して、人間が誕生した。
 人間は発達した科学のために自分を滅ぼしてしまうのではないか(核戦争。ロシアや北朝鮮の脅威がある今、現実味を帯びています。1949年、昭和24年ころの作品ですが、予言書の意味をもった漫画作品です。その時期がこの本では「19××年夏」と書かれています。今はもう2000年代に入って、だいぶ年数がたちました)

 国連警察、まぼろしの死の商人秘密組織「レッド党」。
 メトロポリス(大都市)で、全世界科学者総会が開催されます。レッド公爵(こうしゃく)がいて、チャールス・ロートン博士の腎臓細胞のデータを狙っているそうです。

 総会の最中に、太陽に黒い点がたくさん発生します。(その後、黒い点のことはうやむやになっています)(中盤で「人工黒点」として再登場します。人工黒点は、地表の温度が上昇することにつながる。南極の氷を解かすために利用する。人工黒点は人造細胞をつくるのに役立つ)

 地球上の人間が混乱します。
 人造たんぱく質。
 この漫画のころ(昭和24年)、鉄腕アトムは誕生していません。誕生は1951年(昭和26年)です。
 この漫画のなかで、鉄腕アトムにつながるらしきキャラクターが描かれています。『ミッチイ』という名前の女の子です。(ただし、ボタンを押すと男にもなれる)
 ケン一という男の子(ケン一の叔父(おじ(父母の弟)が、ヒゲオヤジ探偵伴俊作)がミッチイの世話をしてくれています。
 
 警視総監ノタアリン。
 ガニマール警部:パリから来た。
 名探偵オホンシャーロック・ホームズ氏:ロンドン在住。
 フィフィ:奴隷ロボット。
 
 児童虐待というのは聞きますが、ロボット虐待は初めて聞きました。

 トロンガス:おそろしいガス
 オモテニウム:引力を遮断する物質。オモテニウムは、長靴島に存在する。
 エンミイ:すみれ売りの少女
 ヨークシャ・ベル博士
 ミキマウス・ウォルトディズニーニ:ねずみの姿をした動物。
 科学、宇宙、ロボット、人造人間、親子の情愛、鉄腕アトムの前身(前の形)となるキャラクター。
 アトランチス号:豪華船。世界航路船
 キン肉マンみたいなロボットが出てきます。

 静止画に動きがあります。
 この漫画家さんの特徴です。
 奴隷として使われていたロボットの反乱です。
 ロボットが人間を攻撃します。

 あとがきに手塚先生の言葉として『……主人公のミッチイは、……あとでアトムを生み、サファイアに発展するのです(リボンの騎士のサファイア姫でしょう)……』
 作者の言葉を読むと、いろいろな作品の模倣(もほう。まね)を下地にして、創造力を発展させてキャラクターや事象を描いておられることがわかります。

 最後の解説部分には、手塚治虫さんの父親が漫画好きで、たくさんの漫画本を息子の手塚治虫さんに買い与えたということです。
 資金があるのであれば、こどもにたくさんのことを提供することは良いことだと受け止めました。むだづかいではないのです。  

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2023年03月20日

大ピンチずかん 鈴木のりたけ

大ピンチずかん 鈴木のりたけ 小学館

 書評の評判がいいので取り寄せてみました。楽しみです。

 パラパラっとめくって、ちょっとりくつっぽそうでもあります。

 厚い表紙をめくると、表紙の裏に、地球の上で、男の子5人がうろたえているパターンがあります。金色の下地(したじ)がある絵です。初めて見る雰囲気の絵本です。色と紙が上等です。

 5ページ、笑えます。テーブルの上に牛乳パックからこぼした牛乳を口で吸っていると、頭がコップにぶつかって、こんどは、コップに入っていた牛乳がこぼれます。

 『くらしの なかには たくさんの 大ピンチが ある。ひとは みんな 大ピンチに なると あわててしまう』
 先月わたしも大分県にある別府駅前で、記念写真撮影に夢中になりすぎて、手荷物のひとつを駅前に置き忘れてパニックになりました。
 荷物を探し(さがし)に戻ったら、わたしの大きな手提げ袋が、駅前のオブジェ(温泉の湯が沸き出している記念の造形物)の横にちょこんと立っていました。
 中身は何も盗られていませんでした。
 なんて安全な街なのだろうかと大感激しました。

 本にある作者のコメントでは、板ガムを少しずつちぎって食べていたら、そのまま飲み込んでしまったそうです。(そんなことがあるのか)
 ジュースなどの紙パックストローが穴の中に入り込んでとれなくなる。(そういうことあります)
 絵本というよりも『資料集』のような雰囲気です。
 シロップのふたが開かない。(そうなのか。自分はシロップを飲むことはありません)
 ポケットの底から砂が出てくる。(あります。あります)
 シャンプーが目に入った。(あります)
 おふろで耳に水が入った。(たまにあります)
 おふろに栓(せん)をしないで、お湯を入れてしまった。おふろのお湯がからっぽなことに、全裸(ぜんら)になってから気づいた。(たまにあります)
 リュックサックの中から、古くなって汚くなったものが出てくる。(ありそうです)
 カブトムシが夜中に部屋の中を飛び回っていた。自分は実際に体験したことがあります。小学二年生の頃に、山でたくさん捕まえてきたカブトやクワガタが箱から逃げ出して、家の中を飛び回って大騒ぎになりました。
 当時の夏はまだ、蚊帳(かや。蚊よけ)を部屋の中につって寝ていたので、カブトやクワガタたちが蚊帳(かや)にからまって、とるのがたいへんでした。

 おなかがすいてうごけない。(そういうこと、あります)
 いい本です。
 トイレの紙がない。(最近はウォッシュレットのところが増えたのでだいじょうぶなときもあるでしょう。お尻が乾くまで待たねばなりませんが)

 良く練られた(ねられた。事例を集めて、組み合わせを考え抜いた)本です。アイデア賞です。

 『フンを ふんだ』 うんこふんじゃったです。たまーにあります。フンをふむとはあまり言わない。上品です。

 どしゃぶりなのに傘がない。
 ああ、そういうことってあります。
 井上陽水さん(いのうえ・ようすいさん)の歌『傘がない』を思い出しました。(曲が古いなあ。リアルでその歌を聴いていた世代は、もうみんなおじいさんやおばあさんになってしまいました。青春時代の若い人の心理を歌った歌です)

 最後のほうまできて、そうだ! 人生はLOVE(ラブ)だ!
 なかなかいい絵本でした。
 今度新一年生になる孫にプレゼントします。

 トイレで「大」がしたいのに、個室が使用中で自分が使えない。(たまにあります。かなりつらい。たとえば駅とかで。)  

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