2023年05月24日

あつかったらぬげばいい ヨシタケシンスケ

あつかったらぬげばいい ヨシタケシンスケ 白泉社

 絵のふちのほうの模様がすごい。
 昔のラーメン丼の模様のようです。

 読み終えて、おとなのための絵本でした。良書です。

 『あつかったら ぬげばいい』から始まります。
 (そりゃそうだ)

 『ふとっちゃったら なかまをみつければいい』
(笑いました。仲間はすぐに見つかるでしょう)

 大事な人が亡くなったときのことが書いてあります。
 悲しむだけ悲しんだら、次のステップに進めばいいと思います。
 路線バス乗り継ぎ旅のえびすさんは、最初の奥さんを病気で亡くして号泣したあと、さびしさに耐えきれなくなって再婚されました。悲しみをいつまでもひきずっていても、つらいだけです。亡くなった奥さんも『いいよ』と許してくれます。

 ひとつのことにゆきづまったら、次にいけない人がいます。
 『いみのわからないページがあったら バンバンとばして わかるとこだけ よめばいい』
 省略ができるようになれば、気持ちが楽になれます。

 まじめだけではなくて、したたかに生きる手法も例示してあります。
 人生訓です。(悩み多き人生を、人はどう生きるのかの秘けつ(コツ))
 人生相談の答えのようでもあります。
 どれもなかなかいい。
 こどもさん向けではなく、大人向けの絵本で、昔読んだエドワード・ゴーリーの絵本のイメージがあると気づきました。絵本の大きさもこの絵本と同じぐらいの小型判です。
 うちには『優雅に叱責する自転車 柴田元幸・訳 河出書房新社』『ギャシュリークラムのちびっ子たち 柴田元幸・訳 河出書房新社』『うろんな客 柴田元幸・訳 河出書房新社』の三冊が本棚にあります。ブラックユーモアです。不幸が連続します。内容は、明るくはありません。

 読んでいると、熊じいさんのモットーである(信条:自分が正しいと信じる)自分で作った言葉を思い出します。『人生は60点で十分生きていける』

 絵本でのアドバイスは、どちらかといえば、後ろ向きです。『逃げ』があります。
 ときには、立ち向かって、壁を打ち破るなり、ハードルを飛び越えるなりしなければならないときがあります。
 動物が危機に面した時の行動の順番です。
 ①じっとしている。
 ②逃げる
 ③拳(こぶし)を上げて相手にぶつかっていく。闘う(たたかう)

 環境を変える。
 先日思ったことがあるのです。
 学校でイジメがあると、いじめられた被害者のほうが転校します。
 いじめた加害者のほうが転校すべきです。

 『せかいがかわってしまったら じぶんもかわってしまえばいい』
 第二次世界大戦後の日本人のアメリカ合衆国に対する態度の変化が思い出されます。
 戦時中は敵国で憎む(にくむ)対象だったのに、戦後はあこがれて讃えて(たたえて)、ついていきます。
 日本人の変わり身のすばやさは、なかなかのものです。(とにかく生きていかねばならないのです)

 『すぐになくしてしまうなら ひもでむすんでおけばいい』
 (クスッと笑ってしまいました。忘れ物を何度も繰り返す人はいます)

 『136おくねんのうちゅうのれきしに……』とあります。
 わたしの手書き歴史メモノートだと、宇宙の始まりが138億年前(こちらの絵本とは、2億年の差があります)、46億年前に地球誕生、BC2億年~BC6600万年が、恐竜時代とあります。人類が出てくるのは、1万年前ぐらいからです。その当時の日本は縄文時代です。

 老いて(おいて)からのことが書いてあります。
 四十代後半から、体のあちこちが、順番のように壊れていきます。女性も更年期障害でたいへんだと聞きます。
 いちど壊れたら戻らなくなることが多い。あきらめます。
 熊じいさんは、歳をとってきて、もう遠い国外まで旅行へ行く自信がありません。最近は、坐骨神経痛(ざこつしんけいつう)で右足が痛くて整形外科に通っています。
 テレビの映像を見て、旅をした気分になる日々を送っています。先日は、出川哲朗さんの充電バイクの旅47都道府県全国制覇を観ながら、海や山に囲まれた日本の自然は素敵だなと感心しました。日本各地に絶景の景色があります。

 絵本では、最後の締めがいい。
 なるほど。最初に戻るのです。
 『さむかったら きればいい』
 いい本でした。

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