2023年05月16日

宙ごはん(そらごはん) 町田そのこ

宙ごはん(そらごはん) 町田そのこ 小学館

 読みながら感想を継ぎ足していきます。

宙(そら):女の子 産みの親である実母が川瀬花野で、育ての親が、川瀬花野の異父妹である日坂風海(ひさか・ふみ)。宙は、日の崎第二小学校小学一年生

宙にとっての「ママ」 日坂風海(ひさか・ふみ):幼稚園卒園までの宙(そら)の育ての親。育児能力にかける姉の川瀬花野に代わって、宙を育ててきた。夫と宙のいとこにあたる娘がいる。川瀬花野より二歳年下

パパ 日坂康太:32歳。日坂風海の夫。どうも、日坂家は、仕事の関係で、親子三人がシンガポールに行ったらしい。宙は、川瀬花野のこどもなので、いっしょには行かなかったもようです。まあ、宙の親権者は母親でしょうからしかたがありません。宙の父親はどうなってるのか?

いとこ 萠(めぐむ):日坂夫婦の娘。宙のいとこ

宙にとっての「お母さん」 川瀬花野(かわせ・かの):宙の実母。かぐや姫みたいな長い髪。白い肌。人形のような華やかな顔。細い体。美しい人。ハスキーな声。八重歯。宙は、実母を「カノさん」と呼ぶ。花野は宙を『あんた』と呼ぶ。
 芸術家タイプ。イラスト画家。イラスト製作の仕事に追われている。世間の人気はある。
 本人の成育歴に暗い影があり、こどもの育て方がわからないようすです。
 料理はできない。おふろにはちゃんと入らない。ゲップもおならもどこでもする。牛乳はパックから直接飲む。
 大人なのに大人らしくない。こどもに干渉しない。下品なアニメを見る。行儀が悪い。感情がそのまま顔や態度に出る。宙に自分を「母」と呼ばせない。宙は実母を「カノさん」と呼ぶ。
 いやに乱暴な人で、読んでいて、この人は精神病ではないかとすら思います。クレイジー(狂っている)な面があります。

佐伯恭弘(さえき・やすひろ):川瀬花野の二学年下の同級生。中学一年生でいじめにあっていたとき川瀬花野に助けられたことで、花野を慕っている。
 川瀬宅に来て料理をつくっている。花野のことを好きだが、花野は佐伯のことをなんとも思っていない。「やっちゃん」が愛称。花野の異父妹である日坂風海の中学同級生

柘植(つげ):川瀬花野の恋人。花野よりかなり年上の人。柘植と川瀬花野の関係は、パトロン(資金の出資者)と踊り子(資金源のパトロンにつくす人)の関係のようです。見た目とお金だけの付き合いです。(そうでもありませんでした)

大崎マリー:五月生まれの保育園児。三月生まれで体格に劣る宙をいじめていた。

舞台となる土地:樋野崎市(ひのさきし)。政令指定都市から電車で数駅の位置にある。
 自然が残っている。発展途上の街。小高い山として『日の崎山』がある。そこに宙の実母の家がある。築80年を超す古い家屋。日坂家は、昔はそのあたりの大地主だった。

 第一話から第五話まであります。それぞれ食べもののタイトルが付いています。

『第一話 ふわふわパンケーキのイチゴジャム添え』
 ちょっと刺激的な出だしです。
 『お母さん』と『ママ』は、まったく別のものだと宙(そら)は思っていたから始まります。
 産みの親と育ての親だと気づきます。実母と養母でしょう。その後、実母と養母が姉妹であることがわかります。(養母ではありませんでした)
 その部分を読んでいて思い出したことがあります。
 まだ自分自身が乳幼児だった頃のことを母や母の妹である叔母と話したときのことです。
 わたしの母が『わたしはあんたを育てた覚えがない』と言いました。まあ、わたしが小さいころのことです。わたしは覚えていません。
 母の妹である(四姉妹の三女。母は長女)叔母が『○○ちゃんは(わたしのこと)わたしが育てた』
 これから始まるこの物語と内容がくっつくような気がしたのです。
 昔は子だくさんで、兄弟姉妹が多かった。兄弟姉妹が親代わりになって、下の子や、兄弟姉妹が産んだ子(おいとかめいとか)のめんどうをみることがよくあったのです。

 しらかば保育園年長クラスすいか組所属の宙です。
 三月生まれ(早生まれ)の宙は、五月生まれの大崎マリーにいじめられます。

 こどもを産んでも母親の役割を果たせない女性っていると思います。そういうことって、あんがい特別なことでもないような気がします。

 30ページ付近まできました。
 いまのところ、『こども』の話です。

 父親の仕事の人事異動でシンガポールへ旅立った日坂ファミリーと別れた小学一年生の宙は、川瀬花野の家で、実母の川瀬花野にほったらかしにされて孤独です。
 (宙は、自分が何のために生まれて来たのだろうかと悩むだろうなあ)

 宙の実母の川瀬花野は、絵の世界でいくらいい仕事をしていたとしても、人としてダメです。
 いるんだろうなあ。こういう人って。女でも男でもいるんだろうなあ。ステージ上(職場)では輝いていても、家では厄介者(やっかいもの)なのです。
 育児放棄に属する児童虐待です。そもそも川瀬花野に育児能力がありません。
 宙について、なにか得意なことをつくってあげなければ、宙は、生き続けることができません。

 料理が、宙を救うようです。
 師匠登場です。
 師匠は、佐伯恭弘です。
 師弟関係が結ばれた雰囲気があります。
 パンケーキづくりが始まります。
 マンガを思い出しました。『包丁人味平(ほうちょうにんあじへい。古いですけど)』とか『美味しんぼ(おいしんぼ)』とか。

 実母は『(こどもの)可愛がり方を、知らないんだ』
 読んでいて、自分もこどものころに似たような体験があります。自分には記憶がないのですが、両親が祖父母とけんかをしたらしく、わたしを祖父母宅に置いて家を出て行ったことがあります。幼児期のわたしは、母方と父方の祖父母に育てられたようなものです。あんがい、昔は、そういうことってあったんじゃなかろうか。こどもの側からいえば、ごはんを食べさせてくれる人がいれば、めんどうをみてくれるのは、だれでもいいような気がします。(わたしは割り切りがいい人間です)
 自分が成人してから、昔、そんなことがあったと母方の祖母が教えてくれました。ずいぶん昔に亡くなった祖母には感謝しかありません。

 川瀬花野は、ひとりで生きてきた。
 川瀬花野の実母は、二回結婚した。一度目は正式なもので、二度目は内縁関係でしょう。
 親に強制されて、いやいや結婚した婿として迎えた最初の夫とのこどもが花野だった。
 花野の実母は、夫と花野を自分の実家に残して、別の男と駆け落ちをした。
 実家を飛び出したあとの同棲相手との間でできたこどもが日坂風海(ひさか・ふみ)です。
 ということは、異父姉妹(川瀬花野と日坂風海の関係)です。
 その後、花野の父親は、花野を置いて、花野の実家を出ていった。
 花野は母方祖父母に育てられたが、祖父母には可愛がってもらえなかった。
 (かなりややこしい。以前読んだことがある『彼女の家計簿 原田ひ香 光文社』の設定に類似した部分があります)

 読んでいて思ったことです。
 自分には、結婚にしても就職にしても基本的にこれができるようになってほしいという項目があります。①社交辞令でもいいから『挨拶(あいさつ)』ができること。(人づきあいを円滑に進めるための言葉づかい) ②『ありがとう』という感謝の言葉と意思表示ができること ③つくり笑いでもいいから必要なときには笑顔ができること このみっつができないと、結婚にともなう親戚づきあいも仕事も無理です。読んでいると、どうも、川瀬花野さんには無理そうです。

 これはだめだと思いながら読んでいくと、60ページから感動的な展開になっていきます。

 自分の性欲処理のためにお金を使う初老の男が一番クズな人間なのでしょう。(されど、川瀬花野は男にぞっこんです。その後わかりますが、男には正妻がいます)

 人は、おいしいものを食べた時に『今までつらいことがたくさんあったけれど、これまで、生きてて良かったなあ。また、これを食べるためにがんばろう』という気持ちになることがあります。

 味わいのあるいい作品です。
 人間同士の付き合いでは、誤解と錯覚がつきものです。
 お互いをわかり合うために、言いにくいことであっても相手に向かってちゃんと言ったほうがいいという趣旨の作品です。人間を『理解』するための作品です。
 腹を割って、本心を話せる関係からユーモア(人の心をなごませる上品な笑い)や笑いが生れて幸福感が広がることがあります。

『第二話 かつおとこんぶが香るほこほこにゅうめん』
 自分はおとなになってずいぶんたつまで『にゅうめん』を知りませんでした。
 奈良県の明日香村(あすかむら)に行って、石舞台古墳とか高松塚古墳、飛鳥寺などを見学したあと入った食堂で生れて初めて『にゅうめん』なるものを食べて、世の中にこんなにおいしいものがあったのかとびっくりしました。あたたかいソーメンで、具だくさんでした。

 この本は、こどもの本だろうかという疑問をもちがなら読んでいますが、第二話を読み終えて、こどもの視線で、おとなの世界、あるいは、おとなの社会を描いている本であると理解しました。
 主人公の川瀬宙(かわせ・そら)は、第一話で小学一年生でしたが、この第二話で、小学6年生に成長しています。話がすすむごとに年齢があがっていくのだろうと予想しました。

 元町勇気(もとまち・ゆうき):川瀬宙と大崎マリーと同じ6年3組。わがまま勝手な児童で、めんどうくさい男です。こういう男っています。脳みそが、こどものままでおとなになります。

 主人公の川瀬宙がなんだか、樹木希林さん(きききりんさん)の娘さんの内田也哉子さん(うちだ・ややこさん)のように見えます。お父さんは内田裕哉さんです。
 芸術家タイプの親に、こどもを育てる能力が欠けています。川瀬宙の家庭における子育ては、一般家庭のような子育てではありません。こどもはつらい。
 母親の川瀬花野は絵画系のアーチストです。川瀬花野は、ペットを可愛がるように宙に接します。
 自分が産んだこどもの宙(そら)よりも、かなり年上の男性(柘植(つげ)花野の恋人)に心がいく川瀬花野です。
 男性に依存しないと生きていけない女性が川瀬花野です。そして、川野花野はこどもの宙に甘えています。宙は気持ちが不安定になります。

 北川:6年3組の担任教師です。頼りない。教師失格です。こどもを甘やかします。こどもに優しいのではなく、やる気がないのです。教師に向いていません。

 やっちゃんお料理教室:生徒は、川瀬宙。第一第三土曜日に『ビストロ サエキ』で開催される。料理の先生は、川瀬宙の母親を慕うけれど相手にされていない母親川瀬花野の中学で二年後輩の佐伯恭弘(今年で37歳。以前は金髪だったが、今はやんちゃなところはなくなった。父親が亡くなってレストランの二代目オーナーになっておとなしくなった)です。宙は小学一年生の時から佐伯恭弘に料理を教わっています。
 ソフリット:イタリア料理に用いられる香味のベースとなるもの
 ボロネーゼ:イタリア料理・フランス料理のソース
 
 田本:川瀬家の家政婦。70歳。きちんとしている。
 直子:佐伯恭弘の母親

 川野花野の不倫の恋人である柘植氏が急死します。(心筋梗塞)
 川野花野は半狂乱です。
 角野:柘植の右腕。川瀬花野と柘植のパイプ役(連絡役)

 いろいろなことが判明します。

 川瀬花野にとって、越えてはいけない一線がありますが、花野は一線を越えようとします。騒動になります。かなり厳しいやりとりになります。
 ふとこの部分を読んでいて思い出したことがあります。わたしは長いこと生きてきたので、何度もお葬式に行ったことがあります。
 もうずいぶん前のことですが、とある男性の奥さんが病気で何年間も入院していて亡くなったことがあります。わたしは、奥さんのお葬式にお参りに行きました。一週間ぐらいがたって、ご主人は自死されました。そして、今度はご主人のお葬式がありました。
 ご主人は、奥さんがいないこれからの人生を考えられなかったようです。『純愛(じゅんあい)』だと思いました。

 不純な不倫の世界が描いてあります。

 佐伯恭弘が優しい。

 桃子:柘植の娘

 読み手が、大きなショックを受ける展開になってしまいました。(ここには書けません。本を買って読んでください)
 川瀬宙の生みの親である川瀬花野は、おとなじゃありません。こどものまま歳をとった人です。
 
 こじれた話の回収のしかたがすばらしい。
 すぐれた推理小説を読むようです。
 
 母親に『十分に母親であることを』求めない。
 
 (この作者さんは、今一番のっている作家さんではなかろうか。記述と展開がじょうずですばらしい。絶好調です)

 そして『にゅめん』で話をまとめる。
 けっこう重たい話ではありました。

『第三話 あなたのための、きのこととろとろポタージュ』
 第三話では、主人公の川瀬宙が、中学三年生までに成長しています。
クラス一の美人:森田香織
バレーボール部員:槇原樹里
森田香織の元カレ:小松真司(森田香織と別れて、1学年下、中2の美術部員女子と付き合い始めた)
神丘鉄太:今回の話で、川瀬宙の彼氏のようになる中学三年生男子。いろいろわけありの家庭です。父子家庭。父は正彦。母親は鉄太が小学生のときに病死した。現在21歳の姉佳澄(かすみ)は、高校生のときにバイト先の店長のこどもを妊娠して出産、高校は中退、店長と結婚したが、店長が浮気、離婚、シングルマザーとなって実家に戻ってきたが精神状態不安定。精神的な病気になっているもようです。

葵(あおい):上岡鉄太の姉の子(姪めい)。3歳女児

 佐伯恭弘は、自分が経営するレストランの従業員だった女性と結婚しました。
 川瀬宙の夢だった、自分の母親川瀬花野と佐伯恭弘の結婚、三人家族になる希望は失われました。家庭持ちの不倫相手が急死してしまった花野は、花野を慕う佐伯恭弘との結婚を拒否しました。

春川智美(はるかわともみ):佐伯恭弘の新妻

 第二話では、文章から凄み(すごみ。背筋がぞくぞくとする感じ)が伝わってきました。
 第三話も最後まで読んで感嘆しました。(かんたん:完成度の高さに感動しました)

 男女間の別れを表現してあります。
 中学生同士の別れがあり、あわせて、おとなの愛情がかなわぬ別れがあります。
 そこにちびっこの葵(あおい)3歳女児がからんできます。

 ひらがなをじょうずに使ってある文章です。
 人→ひと

 複数の異性と付き合って、いろいろな気持ちを経験したい。
 恋の始まりと終わりを経験してみたい。
 中学生同士の「好きだ」は、まだ、試行錯誤の年齢層にある言葉です。

 読んでいての感想です。
 しみじみと、男と女は、どうして離婚するのかと思う。
 なんのために結婚するのか。
 男と女は、いっしょに暮らしてみないと相手のことがわからないということはあります。
 相手が、(なになにが)できると思っていたことができなかったりもします。
 素(す)の自分を相手に見せていなかったということが判明します。
 仕事場では、仕事をしない人が一番嫌われます。仕事をしない人の仕事を、ほかの人がやらなければならなくなるからです。だれしも負担を嫌います。
 家庭では、家のことをやらないメンバー(家族の構成員)は嫌われます。
 (この本では、197ページに男女の出会いと別れについての宙の考察があります)

 登場人物たちである女性たちは、みな繊細(せんさい:きめこまやかな)な感情をもっています。その感情は『涙』につながります。
 
 いい文章として『……いつも、不満を小出しにできずに溜めに(ために)溜めて爆発させて……』

 浮気をする人に、いい人はいないと思う。

 母さんを頼りたいけれど、母さんはもう死んでいて、頼れない。(神丘鉄太の言葉の要旨)

 人間って、思いどおりにいかないことが多い。
 (いいなあ。この本の作品群)

 シマネトリコ:樹木の名称です。うちの玄関先にも植えてあります。

 3歳女児は「ごっこ遊び」が好きです。
 葵を「ごっこ遊び」にもちこむ川瀬宙です。(うまい)

 最近の小説創作世界では『ごはん』がはやりなのだろうか。(流行)
 『おいしいごはんが食べられますように 高瀬準子(たかせ・じゅんこ) 講談社』
 こちらの宙(そら)の作品とも相通じる人の思いがあります。
 ごはんをちゃんと食べない家がふえているのかも。
 昔は、とくに夕食は、家族全員がそろって食卓を囲んで食べていたものでした。昭和の時代がそうでした。
 なんでも効率優先で、お金もうけ優先の社会になって、家族が食事時にそろうことが少なくなりました。これでいいのだろうか。ゆえに、小説の世界で、ちゃんとごはんを、しっかりごはんを食べましょうというメッセージが生れてきたのでしょう。

 173ページ、泣けてくるようなお話です。
 あとの世代に伝えていくもの。『料理』です。
 21歳のママがひきこもりです。3歳の娘さんはほったらかしです。
 ママはちょっと精神病気味(ぎみ)です。たしか、任意入院とか医療保護入院とかいう手段がありました。あばれたらだめです。たしか、自傷他害(じしょうたがい。自分を傷つけ、人に危害を加える)でした。
 
 宙(そら)が優しい(やさしい)。
 
 『とてもいいひとなの……』(佐伯恭弘さんのことです)(やっちゃんは、ひとを労り(いたわり)包みこむような料理をいつもつくってくれる……)

 『あなたのために作ったんです』

 話のふくらませかたが、うまい!

 202ページ。すごいなあ!
 ここまで人生を思いつめる。
 今年読んで良かった一冊になりました。
 ラストの数行がすばらしい。

『第四話 思い出とぱらぱらレタス卵チャーハン』
 まず家系図です。
 川瀬花野(かわせ・かの)と日坂風海(ひさか・ふみ)は、異父姉妹です。(川瀬花野の母親の敦子は、花野を実家において男と家を出た。その男とのこどもが日坂風海(ひさか・ふみ))
 (父から認知されていない)日坂風海(ひさか・ふみ)が9歳の時に一緒に暮らしていた父親がいなくなった。母子ふたりは川瀬花野が居る川瀬敦子の実家に帰った。祖父母がいました。日坂風海(ひさか・ふみ)が高校三年生の時に、母親の敦子は病死します。
 川瀬敦子の父親が川瀬正、母親が川瀬菊です。(ふたりとも気性が荒かった)
 
 川瀬花野の長女が、川瀬宙です。
 日坂風海の夫が、日坂康太です。
 そのふたりの長女が、日坂萠(ひさか・めぐむ)です。今は、シンガポールで大学生です。
 長女萠の下に双子がいます。今は、10歳です。シンガポールの寄宿舎付き学校にいます。ちょっと性別はわかりません。男子同士のようでもあるし、男の子と女の子のようでもあるしというのが、わたしが感じたことです。たぶん男子同士でしょう。どこかに書いてあって、わたしに読み落としがあるかもしれません。

 川瀬家は、昔は地元では、大地主の名家だったそうです。
 そんな川瀬家のあとを継いだ川瀬花野が、古くなった屋敷をリフォームします。
 いらないものは廃棄です。どんどん廃棄します。
 トラブルになります。
 シンガポールから帰国した異父妹の日坂風海(ひさか・ふみ)さんが怒り狂います。
 川瀬宙は、17歳、高校二年生に成長しています。

 いろいろゴタゴタが起きます。
 読んでいて違和感がありました。
 日坂風海(ひさか・ふみ)は、川瀬花野が実家に置いてあった家財類を捨てたことについて、なぜそんなに怒るのだろうかと。
 外国滞在後も大阪転勤で、夫婦で、大阪暮らしで(こどもたちはシンガポールに残って現地の大学や寄宿舎付きの学校に進学している)長期間実家にいなくて、実家である家屋を管理していないから、日坂風海(ひさか・ふみ)に実害はありません。
 
 物を捨てられない人っています。
 取捨選択ができない人です。
 とりあえずとっておこうです。
 (正直迷惑です)
 もう、仏壇とかお墓も必要な時代ではないと思います。
 少子化の時代です。維持管理ができません。納骨堂に納骨します。お寺さんに、永代供養をお願いします。葬儀は、家族葬です。

 『毒親』がいます。日坂風海(ひさか・ふみ)です。かなりひどい。
 体罰をする人にいい人はいません。
 暴力では物事は解決しません。復讐心が生れるだけです。
 日坂風海(ひさか・ふみ)の頭脳の中は、まだこどもです。(246ページに「子どもより自分の承認欲求が優先なんだ……精神的に未成熟なんだ……」とあります)
 
 川瀬宙の頭の中にあった日坂風海についてのなつかしきいい思い出は『誤解』だったのです。

 川瀬宙と神丘鉄太の恋愛はうまくいっていません。
 ふたりは、異なる高校に進学しました。
 異性はたくさんいます。目移りします。

 世間に出れば、理解のないおとなたちがいます。
 親族でもわずらわしい人がいます。
 なんかかんか、ケチをつけて文句を言いたい人がいます。
 ただし、やりたい放題のことをする人は、最後に孤独になります。人が離れていきます。

 長い人生を送っていると、十年に一回ぐらいしんどい時が訪れるということが、自分が体験した実感です。なにをやってもうまくいきません。仕事はだめだし、体を壊したりもします。そんなときは、じっとがまんです。一年間ぐらいすると流れが良くなります。

 みんな、精神病みたいな人ばかりです。思いつめておかしくなっています。
 『……普通じゃない母親なんて、もううんざり!』
 今回は、このこじれた話を、どう作者は、回収するのだろう。
 『……正論すぎて困ることもあるけどさ』
 
 両親の仲がいいということは、こどもにとっては幸せなことです。

 複雑な心のからまりあいがあります。
 心が屈折する原因となる出来事がいくつもあります。
 みせかけだけのお金持ちです。
 オープンに、隠さずに話せば、こんなことにならなかったのにと読んでいて思うのですが、言い出せなかったということはあると思います。ゆえに、苦しい。
 夫婦とか親子の関係の修復話です。
 
 花野は、虐待を受けていたのか……

 ターナー:フライ返しのこと。

 宙の父親のこと。

 ふと思う。この本は、第三話まででよかったような……
 (話が重すぎる)
 川瀬花野が、実は料理上手だったという内容の変化もどうかと思う。
 作者は次の最終話でどう全体をまとめるのだろうか。

『第五話 ふわふわパンケーキは、永遠に心をめぐる』
 最終話です。
 いろいろと、秘密が明らかにされるのでしょう。

 (つづく)

 読み終えました。
 第一話から第五話までそれぞれタイトルが付いているのですが、タイトルが長すぎることと、内容とぴったりくるという瞬間的な感覚が生れないので、タイトルを見てピンとくるものがありませんでした。

 お話全体の終わりに向けて、内容の展開がうまくいっていない印象があります。
遠宮廻(とおみや・めぐる):高校を退学した川瀬宙の同級生(宙は高校三年生に進級しています。宙がこの同級生男子を知らないというところから始まるのですが、隣のクラスの生徒とはいえ、知らないなんで、そんなことはないでしょとつっこみたくなるのです。遠宮廻の話では、図書館でいつも宙のそばにいたそうです)
 遠宮は父子家庭。父親に犯罪歴あり。本人はクールでおとなびている。イケメン。モデルみたいなスタイル

理恵:遠宮の父親の恋人。三十歳ちょっとすぎ。刃傷(にんじょう。刃物で傷つけあい)事件の被害者だが、起点としては加害者

 読んでいて思うのは、やはりこの本は、第三話で終わっていたほうが良かったのではないか。
 第四話以降は、読み手各自が自分の頭の中でつくればいいのではないか。

三城奈々(みしろ・なな):川瀬宙のクラスメート

和田ヒロム:(ワルグループに圧力をかけられての)万引き少年。小学校5年生
和田雅美(わだ・まさみ):和田ヒロムの母親

 第四話と第五話は、2回分の枠を埋めるために書いた部分のように見えます。
 
 (料理のことはどうなるのだろう)
 
 遠山廻が、高校卒業後県外で就職することは、あたりまえのことで、異常なことではありません。
 そこがいけないことだとなると、お話の基盤がゆらぎます。

 『謝罪』と『赦し(ゆるし。許し)』について書いてあります。
 ウクライナの人のロシアに対する感情のことが思い浮かびました。『絶対に忘れない。絶対に許さない』
 第二次世界大戦時の歴史から、韓国や中国の人が日本を許せないという感情をもつのと同じだと感じました。
 物語の話は進んで『(加害者側の)自己満足のための謝罪』について書いてあります。謝れば(あやまれば)、この件については済むという謝罪です。ところが『絶対に許してもらえない謝罪』があります。命を失ったときの謝罪です。
 以前読んだ小説家のエッセイ本に、人生でとりかえしがつかないこととして『自殺』と『殺人』のふたつがあると書いてありました。同感です。

 飲酒運転は、免許一発取り消しのときもあるので、お話の内容の設定は苦しい。
 
 優しい夫の条件として、
 妻に対して『ごめんなさい』と『ありがとう』が言えること。
 『君は大丈夫?』と妻に声かけができること。
 酒飲みのDV(家庭内で暴力をふるう)夫なら、いないほうがいい。

 第五話は、理屈の主張が情緒の描写よりも先んじていて、中身が薄くなってしまっています。
 読み手は、読むことが苦しい。
 352ページまで読んできて、この本の主人公は、川瀬宙ではなく、レストラン「ビストロ サエキ」の店主であった佐伯恭弘であったことがわかりました。
 パンケーキです。最後に、最初の位置に戻ることが物語づくりの基本です。
 358ページ、きれいな終わり方は良かった。

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