2020年06月15日
ジョゼと虎と魚たち 邦画DVD
ジョゼと虎と魚たち 邦画DVD 2003年公開
いい映画でした。今年観て良かった1本です。
原作は、田辺聖子さんの恋愛小説です。
ジョゼは、足が悪くて歩行ができない20代の身体障害者女性で、本名は、「くみ子」さんですが、ご自身が、フランソワーズ・サガンの小説「すばらしい雲」を読んで、その主人公ジョゼから名前をもらって、自称「ジョゼ」で通しています。池脇千鶴さんが好演しています。毎度映画で演技を観るたびに、芸達者な役者さんだと感服しています。
ジョゼの恋愛相手になるのが、大学4年生、麻雀荘でアルバイトをしている恒夫くんで、妻夫木聡さんが演じます。
タイトルにある「虎」というのは、ふたりで、動物園で見た「虎」、「魚たち」は、ふたりで、水族館で観たかったけれど観ることができなかった「魚たち」だと思います。
冒頭にある麻雀荘のシーンは、麻雀荘の雰囲気とか、麻雀のゲーム内容を知らない人が観たら、実感がわかないかもしれません。麻雀がわかる人にとっては、おもしろい導入手法です。麻雀荘で飼っている子犬のミミーちゃんをお散歩させるのもバイト仕事のうちです。
本来、赤ちゃんや幼児が乗るベビーカーに、足の悪い成人女性が毛布をかぶって顔を隠しながら乗っているというのもすごいのですが、男女ふたりの最初の出会いのシーンが、かなり恐ろしい瞬間があって、びっくりして映像に引きつけられました。
ジョゼが住む老朽平屋建て家屋の雰囲気がいい。おいしい朝ごはん。出し巻き卵のシーンがいい。池脇千鶴さんはほんとうに演技がうまい。
女性たちのがら(素行、言葉づかい)が悪い映画です。そこが、おもしろい。
「うちあんたのお母さんになったるわ」は、詩の世界です。映像に現れるしばらく前に不祥事で消えてしまった男優さんも若くて演技上手です。できることなら、17年前の彼に戻してあげたい。
障害者である女性との両思いがあります。
障害者女性ジョゼの祖母の言葉がきついけれど、祖母の言葉に対しては、なかなか反論はできません。「あのこは、こわれもんです。あんたみたいな人に、どないかできるもんではありません。もうここへは、こんといてください」
関西弁の祖母を演じる亡新谷英子さん(しんや・えいこさん)と、九州弁で演じる妻夫木聡さんです。
観ていて、人が人を好きになるって、なんなんだろうなあと考えこみました。根本は、お互いに支えあいたい、支えたいと思うことなのですが、相手が障害者だと、克服するべきハードルが上がるのだろうか。されど、現実社会では、障害者同士の結婚もあります。
「人生は、傷だらけ」そんな、文節が思い浮かびました。
『ばあちゃんが、死んだ』ジョゼと恒夫の久しぶりの再会で、ジョゼが、「帰れ」と繰り返しながら、妻夫木聡さんの背中をたたき続けます。胸が痛んでせつなくなるシーンでした。
妻夫木さんを巡る女同士のたたき合いに、小学生低学年の女児が背中を向けるシーンも胸にぐっときました。女の世界があります。
障害者は、強気に攻めないと、言いくるめられて、損をしてしまう。ジョゼは、障害者を見下す健常者の意識の根底にある心理と闘います。妻夫木さんの元カノから、「障害者のくせして、私の彼氏を奪うなんて」という差別発言が、どーんと出ます。ただ、妻夫木君の元カノの気持ちもつらいのが、観ていてわかります。障害の有無とは関係なく、女子が好きになった男子の取り合いです。三角関係です。
少人数の演劇を観ているようでした。
後半部に、ジョゼの本音がゆっくり語られます。胸にぐっときます。目を閉じて、「うちがおった世界や。光も音もなくて……」今年観て良かった1本です。
厳しいけれど優しくて、温かい映画でした。
ふたりのツーショットを撮った男性が、昔のカメラのシャッターを半押ししてピントを合わせて、「ハトが出るよー」とふたりに声をかけたシーンが、ほほえましくて笑えました。
それから、ジョゼが妻夫木さんに、「ごほうびに、この世で一番……していいよ」のくだりも良かった。
あとは、歩けないジョゼが、妻夫木君の背中にのっかっているシーンも良かった。
後半に向かって、情感が深まっていく映画でした。終わり方も良かった。がんばろうという気持ちになれます。
いい映画でした。今年観て良かった1本です。
原作は、田辺聖子さんの恋愛小説です。
ジョゼは、足が悪くて歩行ができない20代の身体障害者女性で、本名は、「くみ子」さんですが、ご自身が、フランソワーズ・サガンの小説「すばらしい雲」を読んで、その主人公ジョゼから名前をもらって、自称「ジョゼ」で通しています。池脇千鶴さんが好演しています。毎度映画で演技を観るたびに、芸達者な役者さんだと感服しています。
ジョゼの恋愛相手になるのが、大学4年生、麻雀荘でアルバイトをしている恒夫くんで、妻夫木聡さんが演じます。
タイトルにある「虎」というのは、ふたりで、動物園で見た「虎」、「魚たち」は、ふたりで、水族館で観たかったけれど観ることができなかった「魚たち」だと思います。
冒頭にある麻雀荘のシーンは、麻雀荘の雰囲気とか、麻雀のゲーム内容を知らない人が観たら、実感がわかないかもしれません。麻雀がわかる人にとっては、おもしろい導入手法です。麻雀荘で飼っている子犬のミミーちゃんをお散歩させるのもバイト仕事のうちです。
本来、赤ちゃんや幼児が乗るベビーカーに、足の悪い成人女性が毛布をかぶって顔を隠しながら乗っているというのもすごいのですが、男女ふたりの最初の出会いのシーンが、かなり恐ろしい瞬間があって、びっくりして映像に引きつけられました。
ジョゼが住む老朽平屋建て家屋の雰囲気がいい。おいしい朝ごはん。出し巻き卵のシーンがいい。池脇千鶴さんはほんとうに演技がうまい。
女性たちのがら(素行、言葉づかい)が悪い映画です。そこが、おもしろい。
「うちあんたのお母さんになったるわ」は、詩の世界です。映像に現れるしばらく前に不祥事で消えてしまった男優さんも若くて演技上手です。できることなら、17年前の彼に戻してあげたい。
障害者である女性との両思いがあります。
障害者女性ジョゼの祖母の言葉がきついけれど、祖母の言葉に対しては、なかなか反論はできません。「あのこは、こわれもんです。あんたみたいな人に、どないかできるもんではありません。もうここへは、こんといてください」
関西弁の祖母を演じる亡新谷英子さん(しんや・えいこさん)と、九州弁で演じる妻夫木聡さんです。
観ていて、人が人を好きになるって、なんなんだろうなあと考えこみました。根本は、お互いに支えあいたい、支えたいと思うことなのですが、相手が障害者だと、克服するべきハードルが上がるのだろうか。されど、現実社会では、障害者同士の結婚もあります。
「人生は、傷だらけ」そんな、文節が思い浮かびました。
『ばあちゃんが、死んだ』ジョゼと恒夫の久しぶりの再会で、ジョゼが、「帰れ」と繰り返しながら、妻夫木聡さんの背中をたたき続けます。胸が痛んでせつなくなるシーンでした。
妻夫木さんを巡る女同士のたたき合いに、小学生低学年の女児が背中を向けるシーンも胸にぐっときました。女の世界があります。
障害者は、強気に攻めないと、言いくるめられて、損をしてしまう。ジョゼは、障害者を見下す健常者の意識の根底にある心理と闘います。妻夫木さんの元カノから、「障害者のくせして、私の彼氏を奪うなんて」という差別発言が、どーんと出ます。ただ、妻夫木君の元カノの気持ちもつらいのが、観ていてわかります。障害の有無とは関係なく、女子が好きになった男子の取り合いです。三角関係です。
少人数の演劇を観ているようでした。
後半部に、ジョゼの本音がゆっくり語られます。胸にぐっときます。目を閉じて、「うちがおった世界や。光も音もなくて……」今年観て良かった1本です。
厳しいけれど優しくて、温かい映画でした。
ふたりのツーショットを撮った男性が、昔のカメラのシャッターを半押ししてピントを合わせて、「ハトが出るよー」とふたりに声をかけたシーンが、ほほえましくて笑えました。
それから、ジョゼが妻夫木さんに、「ごほうびに、この世で一番……していいよ」のくだりも良かった。
あとは、歩けないジョゼが、妻夫木君の背中にのっかっているシーンも良かった。
後半に向かって、情感が深まっていく映画でした。終わり方も良かった。がんばろうという気持ちになれます。
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