2019年04月04日

日本国紀 百田尚樹

日本国紀 百田尚樹 幻冬舎

 よく売れている日本史の本です。以前読んだ同氏の本に、他の国では、ありもしなかったことをあったとして、日本を攻撃してくると書いてあり、目からうろこが落ちる思いでした。読書がきっかけで、物事の真実の実態が別の方向から見えるようになってすっきりと理解ができました。
 冒頭の「序にかえて」で、日本国を優れた国とほめておられます。平和第一、支配者が威張らない、庶民第一、長く継続するひとつの国の歴史などが、最初のほうに書いてあります。太平洋戦争が残念な出来事でした。あの当時戦死した人たちが生きていたら世の中はずいぶん変わっていたでしょう。
 現在のような警察組織、裁判、法律制度のなかった頃の古代の日本人が、外国人から見て、「風俗は乱れていない」、「盗みはしない」、「争いごとは少ない」とあるのは、日本人として誇りに思います。
 万葉集が、お金の無い人から身分の高い人まで、さまざまな人たちの短歌が集めたものということは初めて知りました。
 「神道」は、宗教ではないのではないかという違和感にも同意したい。
 まだ、飛鳥時代のところを読んでいるところなので、後日追加します。

(つづく)

 平和を愛する日本人とはいえ、国を動かす上層部は、内戦とか外国とか、権力争いで、争いは多い。たぶん庶民はいつの世もそれに振り回されていた。
 身分制度はあるけれど、規制はゆるかったということは、当時日本にいた外国人の手記で読んだことがあります。恋愛を規制することはできない。身分を超えて実質的に結婚することもできます。公式ではないが、農民や町民も苗字を持っていた。自由です。なんて素敵なのでしょう。
 江戸中期は平和です。街道は整備され、治安も良く、文化が花開いています。やはり、平和は大切です。繁栄があります。「犬のお伊勢参り」のような話は夏休みの子ども向け読書感想文課題図書で読んだことがあります。

 200ページぐらいまで読みました。平和を愛する民族と最初にありましたが、記述は争いごとが多い。権力者同志、親子・兄弟、叔父甥、親族間で血なまぐさい闘争があります。復讐が多いような気がします。それでも「平和」というのは、しもじもの人間は仲が良かったということなのでしょう。寺子屋学習で識字率が高かった。教育の力は強い。

 江戸時代初めの大名の数が200人ほど、中期が260人~270人ほど。多いような少ないような。

 自然災害に立ち向かうために「忍耐強い」、「互いに助け合う」、「過去を振り返らない」、「あきらめがよい」は、説得力があります。

 言霊主義として、鎖国に対する外国からの要求に対して「何もしない」という選択は、大きな災難を招く。原発事故も同様でした。

 天皇は、日本人の精神的な柱。

 幕末当時の幕府の人たちは官僚・公務員のようです。異文化に対して、がちがちに凝り固まって余裕がない。変化を好まず今までいた箱の中にいたがる。
 
 日本人の優秀な能力が際立ちます。島津斉彬の言葉、西洋人も人なり、佐賀人も人なり、薩摩人も人なりからは、同じ人だから同じことができるという誇りと強い意志が伝わってきます。

 日本はよくヨーロッパの植民地にならなかった。

 切羽詰まった幕末時期のことがよく描かれています。外から責められ内から崩れる。激動の時代です。準備不足の幕府です。

 徳川幕府のメンバーは新政府の一員として残れると思っていた。それは、ふつーに考えてありうることです。大河ドラマせごどんを見ているようです。

 280ページ付近にある日本人庶民の美意識が、同作者の「永遠の0(ゼロ)」に通じています。

 明治以降の記述が200ページを超えます。力が入る部分です。
 
 軍事力と財政力がなければ、国際社会で見下される。
 富国強兵が戦争への道へとつながっていきます。
 
 ときおり白人の有色人種に対するきつい差別対応が出てきます。差別するための労力の量は大量です。浪費に思えます。
 日露戦争で日本が日本開戦で、白人ロシアのバルチック艦隊を破ったことが、差別されていたアジア諸国の有色人種に夢を与えます。アジア人が目覚めたと記述があります。
 
 戦争の記述が続きます。戦争を体験したことがない世代が多くなりました。
 第一次世界大戦の戦死者は1千万人。ヴェルサイユ条約。(第二次世界大戦時の日本人の死者数が約320万人。当時の人口が約7300万人)
 第二次世界大戦は日本が仕掛けたのではなく、日本の破滅を目的として、諸外国に計略的に追い込まれて、戦争を選択するしかなかったという構図で説明があります。
 その根底に欧米白人の有色人種に対する差別意識があります。日本を植民地にして、日本人を奴隷にするつもりでした。戦争は、自衛のための戦争だった。物事の真実が見えてくるきっかけとなる本です。満州地域が深くかかわっています。戦争への流れはだれにも止めることができなかった。
 
 印象的だった表現の趣旨は、「外交はだましあいの一種である」、「独裁者。ソ連にスターリン、ドイツにヒトラー、イタリアにムッソリーニ」、「賢者は過ちを避けるために歴史から学ぶ」、「国家総動員法:国家は国民を自由に徴用できる」、「昭和15年開催予定の東京オリンピックと万博を返上」、「宥和政策:ゆうわせいさくにより相手に力を与えてしまった」、「外交のミス」、「現代の官僚の一部は、当時の軍人指揮官クラスに似ている」、「無条件降伏」、「日本は沖縄を捨て石にはしていない」、「原爆は実験として落とされた」、「作為的に日本人の精神を粉砕する」、「君臨すれども親裁せず:主君として国を治めるが、政治に関する可否は決定しない」、「統治権の総攬者:司法権、立法権、行政権を手にすること」、「ウォー・ギルト・インフォーメーション・プログラム:戦争に関する罪悪感を日本人の心に植え付けるプログラム」、「戦後の日本人は死に物狂いで働いた」、「平和を唱えるだけでは戦争は止められない」

 女性の参政権が認められたのは戦後のこと。

 共産主義や社会主義への反発が強い。また、マスコミに対する不信感があります。偏向報道、イメージ報道、世論操作誘導報道です。物事には多面性があるので記述内容の妄信は避けたいのですが、真実を気づかされる記述も多く、今年読んで良かった1冊です。作者は、言論の自由を希求し、自主憲法の制定を訴えています。

 話題の多い、「日韓基本条約(1965年、昭和40年)」、韓国政府と国民に対する強い不信感があります。
 著者の考えでは、朝日新聞は敵です。
 
 思うに「平成時代」は、大規模な自然災害が多い時代でした。大地震や津波、豪雨や暴風雨です。次の元号の時代も大規模自然災害は続くと思われ、これまでのことから考えると、想定を超えることが起るとして各自・各家庭で準備をしておいたほうがいい。
 
 調べた単語などとして、「容喙:ようかい。横から口出しをする」、「讒言:ざんげん。うそをついて、その人のことを目上の人に悪く言う」、「擾乱:じょうらん。秩序をかき乱すこと」、「通史:全部の時代をとおして総合的に記載された歴史書」、「尊号宣下:後続の称号。天皇が言葉を述べ下す。そんごうせんげ」、「冊封:さくほう。名目的な君臣関係」、「毀誉褒貶:きよほうへん。ほめたり、けなしたり」、「嚆矢:こうし。最初」、「占卜:せんぼく。占い」、「極卑賤:ひせん。身分・地位が低い」、「唯物史観:ゆいぶつしかん」、「トランシット:角度を計測する測量機器」、「実相:じっそう。真実」、「開闢:かいびゃく。世界の始まり」、「言霊主義:あってはならないことを口に出してはいけない」、「夷狄:いてき。外国人」、「小栗忠順:おぐりただまさ」、「業績:成果」、「勅許:ちょっきょ。天皇の許可」、「奸物:かんぶつ。悪知恵の働く人」、「怯懦:きょうだ。臆病で気が弱い」、「帰趨:きすう。物事が行きつくところ」、「バルカン半島:イタリアの東」、「山東半島:さんとうはんとう。朝鮮半島の西」、「マリアナ諸島、マーシャル諸島:サイパン、グァムとその南東」、「ポーツマス条約:日露戦争後の条約」、「遷延:せんえん。のびのびにする」、「幣原首相:しではらきじゅうろう。幣原喜重郎」、「阿る:おもねる。気に入られようとする」、「自虐史観:自分で自分をいじめる。戦争に関する戦後の日本人の感じ方」、「讒訴:ざんそ。人を陥れる告げ口」、「持て囃される:もてはやされる」、「貶める:おとしめる。さげすむ」

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