2019年01月16日

昨日がなければ明日もない 宮部みゆき

昨日がなければ明日もない 宮部みゆき オール読物11月号

 単行本が出ているようですが、雑誌掲載のこの作品だけを読んでみます。
 三世代大家族で住む竹中家に居候しているようにみえる杉村探偵事務所の私立探偵杉村という男性です。彼は離婚していて、娘の桃子は妻が引き取っています。
 事件勃発の張本人は、クチダ・サザナミという中1の娘の自称29歳よりもっと老けて見える彼女の母親朽田美姫(くちだ・みき)です。
 杉村の一人称で進行します。巧田美姫はクレーマーです。
 中学1年生漣(さざなみ)の言葉がおとなのようですが、これはこれでOKです。
 描写は細かい。

(つづく)

 シングルマザー朽田美姫の私立探偵杉村に対する相談ごとは、別れた夫鵜野一哉のもとにいる実子小学1年生鵜野竜聖が殺されそうだということなのですが、それは、客観的に妄想ではないかと話は明瞭ではありません。鵜野竜聖は、高齢者女性のブレーキ踏み間違えで交通事故に遭い入院中です。

 親族関係は戸籍の届があってもなくても複雑です。シングルマザー朽田美姫は、母子家庭を援助する制度を活用して収入を得ながら男と別居結婚みたいな状態です。まあ、制度から言えば制度の悪用をして不正を働いています。
 
 戸籍小説という印象をもちます。親族関係がややこしく、メモをして、ページを何度か振り返りながら読み進めます。緻密です。

 「嫁VS姑」の構図があります。それは、姑が望んだものではありません。どうすることもできない確定した対立です。
 読んでいると朽田美姫の言動に腹が立ってきますが、なにか、仕掛けを感じます。
 シングルマザーの美姫が、子どもを「金ずる」にしている様子があるのですが、そこが、彼女の真意かどうかで物語の印象ががらりと変化します。

 美姫の「自分の子どもが殺されそうになっている」という妄言とも思えることが小説の材料になるのだろうか。
 
 離婚に関して、探偵杉村自身の離婚体験を対象者の行動に重ねるのは効果的です。

 推理小説というよりも、人間の苦悩を浮かび上がらせる小説です。どうして、正しい方が裁かれるのか。なんだか、救われない気持ちになりましたが、「小説」の中だけでの出来事だと思いたい。

 調べた単語などとして、「宥めて:なだめて」、「だしにする:自分のために利用する」、「譫言:うわごと。筋道のない言葉」、「スノウドーム:みやげ品、玩具。ドーム型のなかに造作して雪が降っている景色をつくりだす」、「駿州:すんしゅう。駿河」、「直話:じきわ。直接聞く話」、「ジオラマ:立体展示」、「スカイプ:インターネット電話」、「おくびにもださない:腹の中にある気持ちを口から出さない。おくび=ガス」、「天の配剤:善には善、悪には罰、素行に応じて結果が降りてくる。もうひとつ、タイミングよく事柄が起こる」、「三白眼:白目の部分が左右・下方にある瞳」、「目を瞠った:めをみはった」

 印象に残った言葉として、「どんな人間でも、母親は母親」

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