2018年10月07日

水の匂いがするようだ 野崎歓

水の匂いがするようだ 野崎歓(のざき・かん) 集英社

 小説家井伏鱒二(いぶせ・ますじ)氏の研究書です。
 井伏鱒二:1993年平成5年95才没。山椒魚、黒い雨ぐらいしか知りません。明治31年生まれ

 井伏鱒二氏は、魚が好きらしい。だから、「鱒(ます)」という字が名前に入っている。先入観とはいけないもので、優等生だと思っていたら、そうでもないらしき経歴が書かれていました。魚を主題として書く作家ともあります。

 「山椒魚」を読んだのは2012年のことでした。太りすぎて岩の間から出ることができなくなった山椒魚と、山椒魚がいじわるで意図的に自分のいる場所に閉じ込めたカエルのやりとりがありました。それを人間に置き換えて考える。井伏自身もひきこもりではなかったのか。

 面白かった記述主旨として、「大学には、絶望した人、病人は来ない」、「質屋に行くような貧窮作家になりたい」

 子ども好きな面もあるようです。戦場で我が子を楽しませる童話を書いた外国人作家に親しみを述べています。

(つづく)

 井伏鱒二氏の漢詩の翻訳がすばらしい。漢字だけなのに上手に日本語に転換されています。

 『さざなみ軍記』という作品に長文が使用されています。

 よくわからないのですが、架空の翻訳として、原作がないのに、翻訳本を作成したとか、よそから話をもってきたとか、そういう不可解、不思議な手法で書かれた作品もあるようです。

 1930年代に肥満で悩む。30代です。作品に太った自分のかわりを登場させる。

 旅人になる。釣り師になる。

 太宰治が弟子。

 作品の内容の背景がこの本では詳しく書かれています。戦時中のこととして初耳のことも多い。大阪城に作家、画家、漫画家、マスコミ関係者が兵隊として集められた。

 1年間の輸送船への乗船で戦地体験あり。やはり小説家は体験が大事だと感じる。
 戦争は正しくありませんとあります。

 「日記」の重要性、習慣性が書いてあります。

 昭和45年70才でも魚釣りと創作意欲は盛り上がっています。釣りに熱中するのは、弟子の太宰治が入水自殺したからであるという説です。太宰治との関係を「水」を素材にして濃密に表現してあります。これが、この本のタイトル「水の匂いがするようだ」につながります。続いて太宰の故郷青森の記述へと流れていきます。
 
 印象に残った言葉として、「井伏文学の『川』」

 調べた単語類として、「ヴェクトル:物事の向かう方向と勢い」

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