2018年05月16日
この春、とうに死んでるあなたを探して 榎田ユウリ
この春、とうに死んでるあなたを探して 榎田ユウリ(えだ・ゆうり) 筑摩書房
書きだしの文章が気に入って購入しました。転校回数の多さから言葉が始まっています。私自身も転校回数が多いことが共通しました。ただ、大きくなるにつれて知ったのですが、転校回数が多いひとはけっこう多い。めずらしいことではないと知り自慢できなくなりました。
主人公の名前は、「島谷弼(しまたに・たすく)37歳」といいます。ここでまず驚きました。私は、同時進行で複数冊の本を読みます。今は、3冊読んでいます。ついきのうから読みはじめた本の主人公の名前が、野沢佑(のざわ・たすく 小学校5年生)といいます。「たすく」が偶然重なりました。そういうことがあるとうれしい。
こちらの本の弼(たすく)さんは、37歳ですが、出だしは中学生です。苦い思い出から始まります。50ページぐらいの固まりで短編になっていて、次の短編へのつながりがあるようです。1人称のひとり語りが続きますが、小さなことへのこだわり記述なので、ここまで書かなくてもと思うこともありますが、やがて、1人が3人へと広がりをみせてきました。短編が続きます。
「宅急便の宛名伝票と屈辱的なあだな」
タイトルだけを見るとなんのことかわかりませんが、読み終えてみるとよくわかります。
転校生はいじめの標的となりやすいが、勉強ができたので回避できた。(的を射ています。)
鼻血の出だしは面白いのだが、なにもしないのに鼻血が出るというのは、つくりばなしめいて不自然でした。
「肉じゃがは豚か牛か、そしてもんじゃ焼きにおける土手の意義について」
味わいのある文章が続きます。だんだん、それぞれの素性が見えてきました。
肉じゃがの肉が、牛か豚か。そういう論争というか、地域によっての違いは以前あった。だからといって、どちらがいいという話でもない。
ダイヤル式黒電話を使用しているおばあさんが出てきますが、現実にもそういう人がいるのを知っています。
高齢者をターゲットにした不正な訪問販売を扱っています。伏線として、「鼻血」があります。
さきざき、映像化が意識してあるような気配があります。
調べた単語です。「コケシリス:こけしのようなマッシュルームカットをした高齢者をだます詐欺師のような遠藤君のこと。(調べたというよりも読みながら考えました。)」、「ペイズリー柄:ゾウリムシ、ミドリムシ柄、植物、曲線柄」、「サムズアップ:こぶしをにぎり、親指を立てる。」
良かった表現として、両親離婚、再婚した親には、たまに会うだけでいい。それから、ずるずる長居できる家がいい。安息の書物の要素をこの小説はもっています。
30代、ひとり者が3人。(中学の同級生。うちひとりは×1バツイチ)
手紙(中学の担任からの、たすくあての手紙、転校時にもらった。)のことが、さりげなく、文章中におかれました。あとで、なにかの伏線になるのでしょう。
いじめられていた人らしき人からの手紙があります。
「芋けんぴと先生の日記とセシボンの調査力」
だんだん哲学書を読んでいるような雰囲気になってきました。人間はどう生きるかです。お話の中身はかなり深くなってきました。
お話聞きますという喫茶店のおばあさんの方針(ただし、答えは返さない。)
高齢者福祉を扱っているような内容。
中学生生徒から担任教師に対するいじめとその理由。
与謝野晶子
身内の自殺
両親不仲
秘密は深い。
再会しても、これからも連絡を取り合おうとは思わない。
教育とか伝承とか、教えるために小説を書いて残すとか、考えました。恩人がいたから、自分も恩人になる。
調べた単語として、「唯々諾々:いいだくだく。相手のいいなりになる。」、「オノマトペ化:擬音にする。」、「蛇蝎:だかつ。へびとサソリ。人が嫌うもの。」
好印象として、登場人物たちが酒が飲めないことが良かった。(アルコールで人生を失敗しない。)、気に入った表現として、「17歳なのに70歳の目をしていた。」
「二度同じことを言ったら、それは反対の意味になる暗号」
気に入った表現として、「(両親)ふたりとも外面良く、円満な家庭を演じていた。」
ここまで読んで、今年読んで良かった1冊です。(最後まで読んで、そういう世界の話かと驚きましたが、それでも、読んで良かった1冊です。)
幸せって何だろうと読みながら考える本です。
後半に近づくにつれて設定や展開に無理がみられます。せっかく地に足が付いた記述が続いていたのに、奇抜な方向へと舵が切られました。物語が破たんしていくような気配があるのですが、それも含めて小説です。感じ方は読み手それぞれでしょう。
調べた単語として、「窘める:たしなめる。読めませんでした。」
「薔薇と桜と小雪の舞うなかデロリアンに乗り、道の向こうであの人に会ったら」
中学生時期からこれまでを振り返り、死んでいった人たちを思い出します。みな、早逝されました。
手品の種明かしの章です。読みながらうすうす気づいていたことが確定します。
書きだしの文章が気に入って購入しました。転校回数の多さから言葉が始まっています。私自身も転校回数が多いことが共通しました。ただ、大きくなるにつれて知ったのですが、転校回数が多いひとはけっこう多い。めずらしいことではないと知り自慢できなくなりました。
主人公の名前は、「島谷弼(しまたに・たすく)37歳」といいます。ここでまず驚きました。私は、同時進行で複数冊の本を読みます。今は、3冊読んでいます。ついきのうから読みはじめた本の主人公の名前が、野沢佑(のざわ・たすく 小学校5年生)といいます。「たすく」が偶然重なりました。そういうことがあるとうれしい。
こちらの本の弼(たすく)さんは、37歳ですが、出だしは中学生です。苦い思い出から始まります。50ページぐらいの固まりで短編になっていて、次の短編へのつながりがあるようです。1人称のひとり語りが続きますが、小さなことへのこだわり記述なので、ここまで書かなくてもと思うこともありますが、やがて、1人が3人へと広がりをみせてきました。短編が続きます。
「宅急便の宛名伝票と屈辱的なあだな」
タイトルだけを見るとなんのことかわかりませんが、読み終えてみるとよくわかります。
転校生はいじめの標的となりやすいが、勉強ができたので回避できた。(的を射ています。)
鼻血の出だしは面白いのだが、なにもしないのに鼻血が出るというのは、つくりばなしめいて不自然でした。
「肉じゃがは豚か牛か、そしてもんじゃ焼きにおける土手の意義について」
味わいのある文章が続きます。だんだん、それぞれの素性が見えてきました。
肉じゃがの肉が、牛か豚か。そういう論争というか、地域によっての違いは以前あった。だからといって、どちらがいいという話でもない。
ダイヤル式黒電話を使用しているおばあさんが出てきますが、現実にもそういう人がいるのを知っています。
高齢者をターゲットにした不正な訪問販売を扱っています。伏線として、「鼻血」があります。
さきざき、映像化が意識してあるような気配があります。
調べた単語です。「コケシリス:こけしのようなマッシュルームカットをした高齢者をだます詐欺師のような遠藤君のこと。(調べたというよりも読みながら考えました。)」、「ペイズリー柄:ゾウリムシ、ミドリムシ柄、植物、曲線柄」、「サムズアップ:こぶしをにぎり、親指を立てる。」
良かった表現として、両親離婚、再婚した親には、たまに会うだけでいい。それから、ずるずる長居できる家がいい。安息の書物の要素をこの小説はもっています。
30代、ひとり者が3人。(中学の同級生。うちひとりは×1バツイチ)
手紙(中学の担任からの、たすくあての手紙、転校時にもらった。)のことが、さりげなく、文章中におかれました。あとで、なにかの伏線になるのでしょう。
いじめられていた人らしき人からの手紙があります。
「芋けんぴと先生の日記とセシボンの調査力」
だんだん哲学書を読んでいるような雰囲気になってきました。人間はどう生きるかです。お話の中身はかなり深くなってきました。
お話聞きますという喫茶店のおばあさんの方針(ただし、答えは返さない。)
高齢者福祉を扱っているような内容。
中学生生徒から担任教師に対するいじめとその理由。
与謝野晶子
身内の自殺
両親不仲
秘密は深い。
再会しても、これからも連絡を取り合おうとは思わない。
教育とか伝承とか、教えるために小説を書いて残すとか、考えました。恩人がいたから、自分も恩人になる。
調べた単語として、「唯々諾々:いいだくだく。相手のいいなりになる。」、「オノマトペ化:擬音にする。」、「蛇蝎:だかつ。へびとサソリ。人が嫌うもの。」
好印象として、登場人物たちが酒が飲めないことが良かった。(アルコールで人生を失敗しない。)、気に入った表現として、「17歳なのに70歳の目をしていた。」
「二度同じことを言ったら、それは反対の意味になる暗号」
気に入った表現として、「(両親)ふたりとも外面良く、円満な家庭を演じていた。」
ここまで読んで、今年読んで良かった1冊です。(最後まで読んで、そういう世界の話かと驚きましたが、それでも、読んで良かった1冊です。)
幸せって何だろうと読みながら考える本です。
後半に近づくにつれて設定や展開に無理がみられます。せっかく地に足が付いた記述が続いていたのに、奇抜な方向へと舵が切られました。物語が破たんしていくような気配があるのですが、それも含めて小説です。感じ方は読み手それぞれでしょう。
調べた単語として、「窘める:たしなめる。読めませんでした。」
「薔薇と桜と小雪の舞うなかデロリアンに乗り、道の向こうであの人に会ったら」
中学生時期からこれまでを振り返り、死んでいった人たちを思い出します。みな、早逝されました。
手品の種明かしの章です。読みながらうすうす気づいていたことが確定します。
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