2023年02月08日

バスが来ましたよ 由美村嬉々・作 松本春野・絵

バスが来ましたよ 由美村嬉々(ゆみむら・きき)・作 松本春野(まつもと・はるの)・絵 アリス館

 書店の棚にあるのを手に取って、ぺらぺらとめくって、なかなかいい絵本だと思いました。
 善良な内容です。
 視覚障害者の男性を助ける小学生たちのお話です。
 舞台は和歌山市です。

 登場する男性は、眼の病気になって、だんだん目が見えなくなって、10年たって、何も見えなくなってしまったそうです。
 わたしも49歳の時に右目が加齢黄斑変性という病気になって、右目は、視界の中心部がゆがんで見えます。右目だけでは文字を読むことができなくなりました。幸いに左目がよく見えるので、不十分ながらも視界は確保されています。
 歳をとってくると、体のあちこちが壊れてきます。人間はだれしも高齢になるにつれて、体に障害をもつようになります。避けられません。
 目が不自由になってくると、若い時みたいに、物をすぐに見つけられません。目の前にあってもわからないときがあります。目だけではなくて、認識をする脳の力がおとろえてきます。
 たぶん、ここにこういうものがあるのだろうなあと思いながら物があることを判断することがあります。不安定ですが『慣れる』ということはあります。

 男性は、日常生活において、自立で歩くために、三年間ぐらい視界がないなかでの歩行を練習されています。
 人間って、やれそうもないことが、やれたりもします。
 毎日少しずつ、コツコツと努力を積み重ねていく楽しみがあります。
 できなかったことができるようになる喜びがあります。

 男性は、市役所勤務だったからできたこともあるでしょう。
 環境を選ぶ。
 環境を整える。

 『おはようございます』
 あいさつは大事です。
 人間関係は、あいさつから始まります。
 いくら勉強ができても、あいさつができないと働きにくい。
 
 性格のいいこどもさんが出てきます。
 だれかが教えないとそうはいきません。
 ご両親や祖父母のしつけがいいのかもしれません。
 もしかしたら、どこかの宗教団体の教育を受けているのかもしれません。
 少年少女の育成団体とか、スポーツ、文化的サークルに所属して、教育を受けているのかもしれません。
 あるいは、ご家族に障害者がいるのかもしれません。
 優しい心はどこから生まれるのだろう。
 『秩序』があります。(ちつじょ:調和がとれていて、安定している状態。順序や関係がきちんとしている状態)

 小学生女児を描いてある絵を見ていて、たいへんだけど、やりがいとか生きがいを生む言動だと受け止めました。

 『感謝』のメッセージがあります。
 
 障害者への手助けはむずかしい面もありそうです。
 たぶん、ご本人のペース(速度)、ご本人のやり方があります。
 なかなか、一方的にこちらから誘導はしにくい。
 頼まれたら、頼まれたことをするのがいいと判断しています。

 この絵本のお話の特徴は、ひとりで済まないことです。
 さきちゃんという小学三年生の行動が、次の世代の小学生に引き継がれていきます。
 『バスが来ましたよ』
 声の主が変わります。
 こどもさんはどんどん成長して、中学生になっていきます。
 ドキュメンタリー絵本です。(事実の記録)

 障害者福祉の本でした。
 今はちっちゃなこどもたちも、長い年月を経て、やがては高齢者になります。
 目の見えない人の社会参加があります。
 ご本人が優しい人だったから、こどもたちが手助けをしてくれたということはあります。
 制限された世界の範囲内で、心豊かに生きると、制限されていたと思っていた空間世界が、あんがい無限に広かったということを実感できたりもします。
 絵の色合いの色調が穏やか(おだやか)で温かい。きれいです。  

Posted by 熊太郎 at 09:30Comments(0)TrackBack(0)読書感想文