2020年05月13日

スローなブギにしてくれ 邦画DVD

スローなブギにしてくれ 邦画DVD 1981年公開

 もう39年前の映画です。時をさかのぼってふりかえる思いで観ました。
 二十歳の浅野温子さんを子猫の野良猫として扱います。彼女とはべっこに、三人の男女が家賃を負担し合って借家暮らしをしています。男と、男と、女の三人です。あとは、バイクの青年がからんできて物語は進行していきます。文学作品を読むように観る映画でした。

 現在、老齢の時期を迎えている方たちや、すでに亡くなった人たちも出演されています。スクリーンのなかで演技をしている人たちの様子は、まるで異国の風景を観ているようでした。黄泉の国(よみのくに。神話で出てくるあの世)の出来事のようでもありました。
 書物は文書としてこの世に残り、映画は映像としてこの世に残り続けます。次の世代がそれを読んだり観たりして、その時を考えます。あのころは、みんな、幸せだったのだろうかと。

 古い一万円札(聖徳太子)、大きなラジカセとカセットテープ、あの当時はよく見かけたでかいアメ車(あのころの車は、日本の普通車でも、エアコンが付いてないものがあったから、夏の車内は暑かった)

 自由だけれど、すさんだ生活を送る男女たちがいます。日常生活があって、子猫がいる。本物の猫もいますが、子猫は主人公の女性さち乃を演じる浅野温子(あさの・あつこ)さんと重ねてあります。
 束縛される関係がないから仲間のようで仲間ではない。
 みんな、何者かにだまされていたのか、この暮らしが素晴らしいと錯覚していたのか。
 登場人物の死があります。長生きすることは案外むずかしい。
 うまくいかないのは、人と人との距離が近すぎたからなのか。

 強い生活臭がただよっている作品でした。

 気に入ったセリフとして、「(行方がわからなくなっている)オレの女をどうしたんだ」に対して、そう言われた相手が、「おまえの女だったのかなあ」

 つくったセリフのやりとりが続きました。そういう点で、映画なんだなあという実感がありました。

 ブギ:反復フレーズ