2020年05月06日

海炭市叙景 DVD

海炭市叙景(かいたんしじょけい、かいたんしの風景の文章化) 邦画DVD 2010年公開

 勘違いをしていました。以前、台湾の九ふんというところに行ったときに、そこを舞台にした映画があると聞きました。その映画だと思って観ました。間違っていました。台湾のほうは、「悲情城市(ひじょうじょうし)」でした。金の採掘をしていた場所でした。今回観た映画での、海炭市というのは、ベースが、北海道の函館市でした。また、文字の「炭」から、炭鉱の映画を想像しましたが、この映画の場合、冒頭では、造船産業のドック閉鎖とか人員削減のお話から始まっていました。

 調べたところ、函館市出身で、自殺して亡くなった芥川賞候補作家佐藤泰志(さとう・やすし)さんという方の短編の一部を映画化したものだそうです。

 最初のうちは、内容は暗く、重苦しい。怒りは直線的すぎておもしろくない。
 ドキュメンタリーのようでもありました。(事実記録)
 造船会社の当局と労働組合との労使交渉があります。

 昭和40年代ぐらいの昔の日常風景の描写があります。古い住宅、ニワトリ、ヤギの飼育。都市計画事業実施のための立ち退きを要請されるおばあさんがいます。彼女は、どかない(立ち退かない)と主張します。
 
 日本におけるこの半世紀の地方都市の変化が描かれています。
 衰退した部分もあるし、発展した部分もあります。
 時勢の変化に対応できた人もいるし、できなかった人もいます。
 「まち」というものは、一時的にその状態でそこにあるもので、常に未来に向かって変わろうとしています。それが、この半世紀の出来事でした。

 映像を観ていて思ったことは、かつて、「お金を出して水を買う時代」が来るとは思えなかった」、「公共事業のための立ち退きは頻繁に行われた」、「ガスと電気が、ガス会社でも電気会社でも扱うことができるようになるとは思いもつかなかった」

 新しい世代には理解できないかもしれませんが、なにもかもが、大昔から現在のように整備されてこの世に存在していたわけではないということを再確認しました。

 後半にある市電の運行風景が良かった。
 
 日本人の暮らしぶりをさかのぼる映画でした。