2025年01月26日
ハピネス 桐野夏生
ハピネス 桐野夏生(きりの・なつお 女性) 光文社文庫
ハピネス:英語で、幸福、幸せ、満足
第一章から第六章まであります。
2016年(平成28年)出版の文庫本です。単行本は、2013年(平成25年)の発行です。
『第一章 タワマン』
1 落下するもの
タワーマンション:20階以上、高さ60mを超える超高層マンション(わたしは住みたくありません。まず、地上から部屋まで、部屋から地上というエレベーターによる移動時間がかかることがイヤです。くわえて、上層階は鳥が住む世界です。わたしは高いところはにがてです)
登場人物たちが住んでいるタワーマンションです。
分譲と賃貸があるそうです。
『ベイタワーズマンション(通称がBT)』:ベイウエスト・タワー(BWT52階建て。西に建つ。イーストより高級という位置づけ。眺望がいい)とベイイースト・タワー(BET。東に建つ)で構成されている。洗濯物を干していい時間帯は、午前11時から午後1時までだそうです。強風でバルコニーに置いてあるものが飛びやすいそうです。洗濯物はやむなしですが、干せる時間帯が短い。
YONEDA:重機メーカーのオフィスビル。32階建てで、ベイタワーに日陰をつくる。
岩見有紗(いわみ・ありさ):タワマンに住む若い母親。朝寝坊をする。朝は、娘の花奈(かな)に起こされる。なんだかだらしない母親です。う~む。問題ありの母親です。仕事はしていない。実態として、首尾よく妊娠してできちゃった婚に持ち込んだ。江東区の埋め立て地に建っている高層マンションベイイースト・タワー(BET。東に建つ)の29階に住んでいる。部屋は賃貸物件である。夫は、IT会社、シカゴ勤務の単身赴任、その後ウィスコンシン州に異動
岩見花奈(いわみ・かな):岩見有紗のひとり娘。3歳2か月
岩見俊平:岩見有紗の夫。31歳。優柔不断な男だった。できちゃった婚で結婚して父親になったが、今は、アメリカ合衆国に単身赴任中でひとり暮らしをしている。
岩見晴子(いわみ・はるこ):岩見有紗の夫の母親。ヨーロッパ物産展の品物で、ロバのぬいぐるみを孫の花奈にくれた。家事代行業のアルバイトをしている。町田のお祖母(おばあちゃん)と言われている。孫が付けた別名が『ロバしゃん』です。
岩見陽平:岩見有紗の夫の父親。定年退職したばかり。ボランティアとゴルフをしている。元市役所職員。68歳
岩見有紗の実父:肺がん検査での入院歴あり。実家は新潟県にある。
竹光裕美(たけみつ・ゆみ):竹光いぶきのママ。『いぶママ』。52階建てベイウエスト・タワー47階の西南角部屋に住んでいる。『一等地』と呼ぶそうです。(おもしろい)。ママ友社会でボスの役割を果たしている。航空会社のCA(キャビンアテンダント)をしていたという噂がある。育ちの良さそうな細い顎(あご)、きれいにひかれたアイライン、指にはブランドもののリングをつけている。
竹光晴久(たけみつ・はるひさ):竹光裕美の夫。東京銀座にある出版社で編集の仕事をしている。
栗原洋子。美雨ママ(みうまま。栗原美雨の母親):駅前にある普通のマンションに住んでいる。美雨(みう)は、2歳6か月の女児。夫は11歳年上。親の意向に従って結婚した。夫に対する愛情が強かったわけではない。
芽玖(めぐ):こどもさん。芽玖(めぐ)ママ
真恋(まこ):こどもさん。真恋(まこ)ママ
バルコニーから強風で、『イワミカナ』と書いてある幼児用プラスチックシャベルが飛んで落ちてしまった。(バルコニーに風で飛ぶものを置いてはいけないというルールがあるそうです)
(わたしの考えとして)共働きでの子育てをした体験者として思うのは、なぜ妻は、こどもさんを保育園に預けて働かないのだろうということでした。ご主人の給料がいいわけか。
こどもは、いい幼稚園に入れる(いれる)そうです。幼稚園の受験があるそうです。(そういう世界の話か。裕福な人たちです)
ママ友グループはあるけれど、けして、各自の部屋には入れてくれない。
ミッフィー:うさぎの女の子のキャラクター絵。オランダのデザイナーの作。『うさこちゃん』
朝からこどもにインスタントラーメンを食べさせる母親です。こどものままおとなになったようなおとなが増えました。日常生活をきちんと送る生活能力がありません。
北千住:東京都足立区の地名。
デコメール:絵文字、色付き文字や背景、アニメーション画像などがある電子メール
BWT(ベイウエスト・タワー、52階建て)の52階にラウンジがある。こどもの遊び場としても利用されている。
なんだか、重苦しい世界があります。母子グループの世界です。
こどもがいれば、こどもを介したつきあいがありますが、こどもがいないと、隣は何をする人ぞになるのが、分譲マンション暮らしです。
部屋を所有している人と賃貸の人だと、あまり交流はないような気がします。所有と賃貸では意識が異なります。
2 上がって下りて、また上がる
ママ友仲良しグループは、全員で5人です。全員が30歳過ぎです。なかなかややこしい。
リーダー格、分譲の部屋住まい高級な西棟の47階西南の部屋(52階建て):いぶママ(竹光裕美たけみつ・ゆみ)。竹光いぶきのママ。夫は一流会社勤務
分譲の部屋住まい、高級な西棟:芽玖(めぐ)ママ。夫は一流会社勤務
分譲の部屋住まい、高級な西棟:真恋(まこ)ママ。夫は一流会社勤務
賃貸の部屋住まい、陽があたる時間が短い東棟、ランク落ちの棟:岩見有紗(いわみ・ありさ、主人公)、ひとり娘が、花奈(かな)。
駅前にある普通のマンション住まい、美雨ママ:栗原美雨の母親。夫は飲食業。美雨(みう)ママは美人。背が高い。やせている。『江東区の土屋アンナ』という名づけがある。派手でかわいい顔をしている。ときおり、ぐさりと本質をえぐるようなことを言う。本音で生きるタイプです。
西棟の最上階52階にあるラウンジがこどもの遊び場、ママ友の交流の場となっている。きれいな服装で行き、飲み物は各自が持参する。(なんだか、自分がこどものころは、着の身着のままのボロを着ていたので、違和感がたっぷりあります)
ラウンジは、オートロックです。(住人は、幸せなのだろうか。拘置所のようです)
バトラー:マンションの執事、秘書。まあ、管理人ということか。
マンションのロビーは、ホテルのように美しい。
なんだかよくわかりませんが、エレベーターでの移動はかなりめんどうで時間がかかるようです。途中の階から上には行けない。いったん1階のホールに下がってから上階をめざすそうです。
エレベーターの中では、ベビーカーはたたむような指示があります。たいへんだあ。
タワーマンションは、いろいろと制限が多い窮屈な環境にあります。
高層階で暮らしていると、(飛び降りて)死にたくならないかというような話が出ます。
オーク:ナラの木。広葉樹。秋には、ドングリができる。
3 ラウンジママたち(なんというか、この数字を設定しての文章の区切りが、ちょっとわずらわしい。物語の進行のしかたが、読んでいて、しっくりしません(かみあう、組み合う))
シリコンバンドのデジタル腕時計:手首にはめるブレスレット。シリコンは、ケイ素。岩石や土壌の成分
ラウンジママ(一日中、こどもをラウンジで遊ばせている。自室の電気代やトイレの水道代を節約している。ラウンジにトイレがあるそうです。ラウンジは共有部分):ママ友グループとは別の若い女二人のママのことをラウンジママというです。足を広げて座る。携帯をいじる。ペットボトル持参。ひとりは茶髪で細い。ギャル曽根に似ている。もうひとりは太い体をしている。黒くて長い髪をしている。子連れで来て、ラウンジを散らかしている。(こんな人って、いるのかなあ。まあ、いるのでしょうね)
文章を読み取ることがむずかしいのですが、こちらのタワーマンションには高層階部分にまわりがすけて見える廊下部分があるそうです。『両側が素通しの強化ガラスに覆われた(おおわれた)狭い廊下』、『ラウンジからエレベーターホールに向かう通路は、両脇を強化ガラスに包まれた、空中に浮遊するトンネルになっている』。高所がにがてな人には恐怖を感じる通路でしょう。
本のタイトル『ハピネス』の意味は、『(物語では、うわべだけの)幸福、幸せ』です。
なんだか、重苦しい人づきあいについて書いてある文章です。出てくる人たちはどの人もいい人とは思えません。公共の場でのちゃんとしたふるまいができていません。
あいさつをしない人が増えました。孤独な人が増えたということです。複数でいても、ひとりなのです。昔、薬師丸ひろ子さんが歌っていました。『ふたりでいたって、ひとりは消えない……』。曲名は忘れました。
4 上の空
だんだん化けの皮がはがれてきます。うわべでは、お金があって、幸せそうな家族ですが、実態は反対なのです。
見栄っぱり(みえっぱり):まわりの目を気にする。自分について、実際よりも良く見せる。誇張する。(こちょう。おおげさにふるまう)。うそをつく。
日常生活のことは、ありのままでいい。うそはつかないほうがいい。
いいママを演じていると、心の病気になってしまいます。
渡鬼(わたおに):渡る世間は鬼ばかり。橋田寿賀子脚本のドラマ。
となりの芝生:橋田寿賀子脚本のドラマ
羅刹の家(らせつのいえ):嫁姑(よめしゅうとめ)戦争のドラマ
なにかしら、強風でベランダから飛んで行ってしまったプラスチックのシャベルにこだわりがあります。(シャベルには、『イワミカナ』と書いてある)
超高層マンションの高層部に住む人間たちの心理として、『他者を蔑みたい(さげすみたい)、蔑むことで、自分の立場を誇示、維持したい。そんな比較があります』
岩見有紗の家族・親族の秘密が読み手に語られます。
有名幼稚園を受験できるような家族状況ではありません。
タワーマンションのママたちは、働かない人たちです。
わたしが社会に出たとき驚いたことがあります。五体満足で口が達者でも働けない人がいるということでした。世の中には、自立・自活する人と、その自立・自活している人に依存しながら生活する人がいるということを知りました。人間界全体は、そういう仕組みでまわっているのです。
5 公園要員
タワーマンションのリッチなママ友3人に都合のいいように利用されている賃貸部屋の岩見有紗と別の一般的な分譲マンションに住んでいる栗原美雨(みう)ママです。
3歳児の花奈(かな)を美雨(みう)の実家(深川)に預けて、美雨(みう)ママとふたりで飲みに行きたい岩見有紗です。
岩見有紗は、いろいろうそをついているので、ややこしい。夫の実家(町田市)を自分の実家だといっている。(本当は新潟県)
いぶママの家の車は、ゲレンデヴァーゲン(メルセデス・ベンツGクラス(最上級))、芽玖(めぐ)ママの家が、銀色のプリウス、真恋(まこ)ママの家が、フォルクスワーゲンシロッコ
岩見有紗はママ友のボスに声をかけられるけれど、本気で誘われているわけではない。(わたしをばかにするなとプライド(誇り、自信)をもったほうがいい)
タワーマンションの中は、あれをしてはダメ、これをしたらダメという世界です。こどもにとっては、とっても窮屈な世界です。
半世紀前のこどもたちの遊び場は、道や野原、山や川や海でした。日本人のこどもたちの生活がすっかり変化してしまいました。電子的なゲーム遊びが多すぎます。人間の心身までが機械的になってきています。
3歳の花奈ちゃんがいいます。『(もう、インスタント)ラーメンいや』
花奈(かな)ママがいいます。『(コンビニで買う)おにぎりにしよう』
6 夜の船出
まあ、いろいろあります。うまくいかないできちゃった婚とか、義父母からこども(孫)をうちに残して自由に生きてくれ(離婚してくれ)とか、専業主婦じゃなくて働いてくれとか、どちらがいいとか悪いとかいう話でもなく、なかなか結論が出せない話です。
ZARA(ザラ):服飾メーカー。衣類の小売業。低価格
いったん壊れた夫婦関係を修復することはかなり困難です。
口を噤んだ(つぐんだ):口を閉じる。黙る。ものを言わない。
これから、どうなるのだろう。
『第二章 イケダン』(イケダン:いけてる旦那。仕事ができて、家庭サービスも充実している。高評価される旦那さん。
1 かなちゃんのさべる(プラスチックのシャベルのこと)
106ページまで読んでの感想です。
作者のメッセージとしての、『夫の収入に依存しながら生活する働かない女の人たちを批判する』ということが、浮き彫りにされている作品です。依存するみかえりとして、女性が、妻の役割、母親の役割を果たせていないのです。
夫が、『とにかく離婚してくれ』と訴えています。
一時の欲望で関係をもって、こどもができて、責任をとらされる形で、できちゃった婚という形で結婚してみて、ようやく、相手の女性の性格と性質がわかったのです。女性は、男性に依存とか寄生をする生き方をする人だったです。
妻は、とことん働く気はない。いい生活はしたい。こどもには、幼稚園のお受験をさせる。お金は、夫と夫の実家に出してもらう。
衣食住の家事を適切にこなせる能力がない。こどもの食事は、朝からインスタントラーメン、お昼はコンビニのおにぎり、そして、カレー、そんな感じです。
妻に、自分に悪いところがあるという意識はいっさいありません。うまくいかないのは、相手のほう(夫側の人間)です。
こういうことって、現実にあるのだろうなあ。
栗原由希子(くりはら・ゆきこ):栗原洋子(美雨(みう)ママ)の妹。元保育士。バンドをやっている。ベビーシッターのバイトもしている。
タワーマンションの回覧板は、ネットで閲覧する方式だそうです。
『イワミカナ』と名前が書かれたプラスチックのシャベルが、お怒りの手紙とともに、ドアノブにぶらさげられていました。風で飛んできて、ガラスに当たって、ガラスが割れるかもしれなかったそうです。どなたがシャベルをもってきてくれたのかはわかりません。(なんだか、たいへんです。タワーマンションが、快適な居住空間とは思えません)
H&M:スェーデンの服飾メーカー。安価
深川:江東区墨田川の西、両国の南。栗原洋子の夫(寿司職人)が働く店がある。なお、店は、栗原洋子の親が経営しているチェーン店の寿司屋です。
トモヒサ:栗原洋子(美雨(みう)ママ)の同級生。東京深川にある居酒屋で働いている。未婚
2 門仲の女王 門仲(もんなか):深川地域にある門前仲町。神社仏閣がある門前町、商店街
まあなんというか、先日動画配信サービスで観た昔の映画、『阿修羅のごとく(あしゅらのごとく)』のような世界になってきました。(不倫と浮気のオンパレードです)。お金があって、仕事をしてなくて、ヒマな時間があるからかなあ。こどもはどうなるんだろう。
KY:空気が読めない。空気読め。
あん肝(きも):アンコウの肝を使った料理。珍味
結婚する相手を間違えた。
『孤独』は、怖い(こわい)。『孤独』は、ときに、犯罪につながることがあります。
3 さよならの夢
(岩見有紗が夫となる岩見俊平と出会った昔の話として)
梨花ちゃん:合コンメンバー
岩見有紗は車がない。
夫もアメリカ赴任でいない。アメリカ合衆国ウィスコンシン州にいるが、ママ友にはニューヨークにいるとうそをついている。(岩見有紗は、どうして夫と一緒にアメリカ合衆国へ行かないのだろう)
エレベーターで同乗した酔った男が28階で降りて行った。同じマンションに住んでいても、顔見知りでなければ、住人同士あいさつはしない。(その男は、181ページで再登場します。4歳か5歳の男児を連れています。小学生の兄がいるそうです。父親は、サービス業か自由業に見える)
公園要員:ママ友の中で格下扱いされるママのこと。利用されているだけ。
なんというか、読んでいると、なんだかなあとか、話を聞いてもしょうがないという気分になってくる内容です。
あわせて、こどもがいない人がこの部分を読んでも内容はわからないだろうし、実感もないのだろうなあと思うのです。
こどもがいない人には、保育園と幼稚園の違いは、わからないでしょう。
もう40年ぐらい前、わたしたちが親になったころの保育園は、こどもを預けて働くためにありました。保育園は、こどもを預かってくれるところでした。
いっぽう幼稚園は、専業主婦のお宅が、小学校入学前のこどもを小学校生活に事前に慣らす(ならす)ために教育するところでした。
現在は昔と違って、保育園と幼稚園が同じような扱いになっているのかもしれません。
本の中では、何歳から幼稚園に行かせるかとか、何年保育にするかとか話が出てきますが、うちのこどもは生後2か月ぐらいから保育園に預けました。夫婦ともに裕福な家庭で育ったわけではなかったので、こどもたちを小さい頃から預けて必死で働いて稼ぎました。当時、育児休業の制度はまだありませんでした。児童手当の制度もなかった記憶です。
その後、こどもたちからは、ちいさいころから預けられてたいへんだったと反発もありましたが、なにせ、生活をしていくためにはお金が必要なのです。こどもたちには、いっぱい泣く思いをさせてしまいました。後悔することも何度かありましたが、老齢期を迎えてみると、あれはあれで良かったと思うのです。そういう努力を、この本の中にいる人たちはしようとしないのです。夫の経済力に頼って、夫のエキス(利益となるもの)を吸って生きていく女の人たちです。
4 上から目線
こどもは商品だろうか。ママ友たちによるそれぞれのこどもを比較しての評価です。
見遣った:みやった。読めませんでした。
おでこが秀でて:おでこがひいでて。立派な額(ひたい)。品が良く知的
岩見有紗は、ほんとうに夫の俊平が好きなのか。策略をもって、結婚したのではないか。
岩見有紗は、結婚当時29歳で、結婚にあせっていた。だから、これで(俊平で)、手を打った。
新潟県から出てきて、新潟県へ帰りたくなかった。結婚して、東京に住み続けたかった。そのために俊平を利用した。
格落ち(かくおち):本では、人間に対して使われています。地位が低い。
フープ型のピアス:リング状の輪っか
ANTERPRIMA:アンテプリマ。ファッションブランド
学歴自慢の話が続きます。
すさまじいなあ。女の戦いです。
『第三章 ハピネス』
1非通知
なんだか話がややこしくなってきました。
主人公の岩見有紗に、もうひとりこどもがいるのです。男児です。
瀬島雄大(せじま・ゆうだい):10歳
岩見有紗は、離婚歴ありか。こどもはだんなが引き取ったのか。
それで、新潟の実家あたりを出て、東京でやりなおしたのか。
まあ、人生いろいろあるわいな。
山本:岩見有紗の定年退職した父の友だち。ゴルフ、温泉旅行仲間
詮ないこと(せんないこと):やっても、思ったような効果がないこと
なんというか、幼稚園のお受験の記事あたりを読んでいると、去年観光で訪れた、東京、『日枝神社(ひえじんじゃ)』での七五三風景とか、靖国神社あたりを黒礼服の集団で、親子で歩いていたおそらく有名私立小学校の在校生とその母親のみなさんの姿を思い出します。
老齢期にあるわたしなんぞは、幼稚園も保育園も行ったことがありません。わたしが幼児のときに暮らしていた熊本県の離島には、幼稚園というものはなかったような気がします。もしあったとしても、うちの親はお金がもったいないといって行かせてくれなかったでしょう。
岩見有紗が産んだこどもふたりが、それぞれ、会えない親に会いたいと言う。(新潟にいる前夫が引き取ったこどもと、アメリカで働いている父親に会いたいという娘のふたりです。どうかなあ。それは大人が考えるこどもの世界と理屈です。こどもは、ふだんから自分の世話をしてくれていない親になんぞ会いたいとは思いません。育児の義務を果たしてくれないそんな親は、こどもから見れば、サヨナラです。こどもが会いたいと思うのは、自分のことを親身に扱ってくれた親とか、残念ながら病気とか事故で亡くなってしまった親です。もう天国にいってしまって、会いたくても会えないのです)
話の変化が、びっくりするような状況設定です。
2 だましたわけじゃない
う~む。なんというか、主人公の岩見有紗は、結婚してはいけない女性、結婚しない人生を歩むべき人です。意識が、中学二年生レベルです。こどものままおとなになっている。やりたいことをやって、やりたくないことをやらないのは、こどもです。おとなは、やりたくないことでも、やるべきことは、がまんしてやります。
世の中では、少子高齢化対策としてあれこれ施策が出てきますが、男女をただくっつけてこどもを産んでもらえばいいというものではありません。親をやれない人が親になると、こどもは不幸です。配偶者や親族にも迷惑です。本を読みながらそんな気持ちになりました。
瀬島鉄哉(せじま・てつや):岩見有紗の前夫。前夫と岩見有紗との間に男児がいて、前夫の家族が引き取っている。岩見有紗より3歳歳下(としした)。26歳の時に、29歳だった有紗と結婚してこどもができた。こどもの瀬島雄大は、現在10歳。夫は、瀬島農園の次男坊。有紗が23歳のときに結婚した。
瀬島家の長男が病気で亡くなって、次男が農園を継いだ。農園の嫁になることがイヤで、有紗は3歳の雄大を置いて家を出た。有紗は、再婚した岩見俊平にそのことを話さずに29歳のときに結婚した。瀬島鉄哉は、『ドメバ(ドメスティックバイオレンス。家庭内暴力の加害者)』だった。(まあ、DVにもなるわいなあ)
岩見有紗の兄:9歳と5歳の男の子がいる。兄嫁の名前が、優子。嫁と義母とは折り合いが悪い。嫁は、有紗とも関係は良いほうではない。
驚喜(きょうき):思いがけず嬉しいことが起きた。
木村さん:岩見有紗の母親のお友だち。お茶を習っている。
岩見有紗は、義父母から、アメリカ合衆国ウィスコンシン州にいる夫にいっしょに会いに行って、話し合いをしないかと誘われますが断りました。
3 嫌いになりたい
なんというか、岩見有紗はイヤな人間です。
自活・自立の意思をもたいない依存症、寄生虫のような存在です。
夫と義父母の金銭負担が重い。タワーマンションの家賃が、23万円で、毎月の生活費の援助が10万円です。自分の生活費を自分で稼ぐ意識がいっさいありません。働こうかなと口で言うだけです。
ロンパース:あかちゃんが着るつなぎのようなベビー服
フリース:化繊、秋冬もの、起毛仕上げ、あたたかく見える。
ストール:婦人用の肩掛け
4 いい夫婦
加納久志:岩見有紗の兄。新潟の実家で、両親と妻、息子と生活している。
加納豊一郎:豊ちゃん(とよちゃん)。加納久志の息子
加納優子:加納久志の妻。豊一郎の母親
瀬島雄大:岩見有紗の息子。離婚した前夫瀬島鉄哉と暮らしている。瀬島鉄哉は再婚している。
加納豊一郎と瀬島雄大は、いとこにあたる。ふたりは1歳違い。ふたりとも新潟で同じ小学生サッカークラブに所属している。ふたりの交流はある。
ペーズリー模様:羽のような模様が連続的にある。
226ページ付近を読んでいます。全体で442ページありますが、もうこれ以上読んでも得るものがなさそうです。本の中では、いや~な雰囲気が続いています。
美雨(みう)ママ(栗原洋子)は、タバコを吸います。タバコを吸う人にいい人はいません。
ふと母親について、いろいろ考えます。
この本では、自活・自立の意思がなく、他者に依存する女性像が書いてあります。派生して(枝分かれして)、こどもを金ずるにする母親っています。各種手当の受給が目的です。いや~な気持ちにさせられます。
5 タワママの会
喘鳴(ぜんめい):ひゅーひゅー、ぜーぜーという呼吸の音
岩見俊平は、岩見有紗を本当はそんなに好きじゃなかった。こどもができてしまったから、できちゃった婚につながってしまった。
またひとりタワーマンションのベランダでタバコを吸っている男の人がいます。岩見有紗宅の階下の人です。タバコを吸うこの男性もいい人ではありません。
疚しさ:やましさ。良心がとがめて、うしろめたい。
本の中でのことですが、どうして、ママ友同士は相手を呼ぶ時に、『○○ちゃんママ』と呼び合うのだろう。奇妙です。ちょっと気持ち悪い。本体の人格から離れた呼び方です。
人を利用することしか考えていない人たちです。
差別意識と仲間意識は強い。岩見有紗がいるべき場所ではありません。
あっちこっちでこどもをつくると相続関係がややこしくなります。
なんというか、『標準』の中に居れば、法令は個人を守ってくれますが、『標準』から外に出ると、法令で個人を守ることがむずかしくなるということはあります。
岩見俊平は、前婚とこどもがいることを隠して自分と結婚した妻である岩見有紗を捨てる。妻を捨てるけれど、娘の花奈(かな)は捨てない。岩見俊平の両親を含めて、そんな展開に発展してきました。
言葉の綾(ことばのあや):言葉の言い回し、言い方
『第四章 イメチェン』
岩見有紗は、いちから人生をやり直したほうがいいけれど、もうそれもできない。こどもがふたりいて、ひとりは、前夫に引き取られて、もうひとりは、もうすぐ、やはり現在の夫に引き取られそうです。
岩見有紗は、また離婚して、また、自分が依存・寄生できる男性を探すのだろうか。
こどもはじぶんのものと主張するけれど、こどもはいつまでもこどもでいるわけではありません。こどもはあんがい早く、おとなになっていきます。こどもは、母親を捨てて自立していきます。
新潟の実家に日帰りで帰る岩見有紗です。どういうわけか、美雨(みう)ママの栗原洋子がついいて行きます。
期待したような成果は得られなかった帰省でした。
2 冬の桜
小説というよりも、随筆(エッセイ)を読むようです。
岩見有紗の心情がずーっと続きます。
巻末の記録を見ると、2010年(平成22年)7月号から2012年(平成24年)10月号まで雑誌に連載されています。実に2年4か月の長さです。
文章はかなり長い。全体で、442ページあります。今読んでいるのは、355ページ付近です。
なんだかんだとゴタゴタ話が続きます。
なんというか、いろいろと隠し事があります。
ありのままにやればいい。
知っているのに黙っているとあとでばれたときにもめます。
信頼関係が崩壊することもあります。
3 おうちにかえろう
岩見有紗も車の運転ができたら世界が広がるのにと思いますが、車の運転が不向きな人はけっこう多い。事故になるといけないので、向いていない人は運転をしないほうがいい。被害者になっても加害者になってもつらい。
幼稚園の受験というのはそんなにだいじなことなのだろうか。
わたしは、自分の体験として、小学校入学前に幼稚園も保育園も行ったことがありません。でも、ちゃんと生きてきて、ふつうに老齢期を迎えました。
離婚の話です。慰謝料の支払いについて、わたしはよくわかりませんが、こどもの養育費の支払いは、決めても、払ってくれるのは、最初の数回だけで、あとは音沙汰(おとさた)なくなることが多いと聞きました。前夫の給料や預金を差し押さえるにしてもかなりの手間と費用と時間がかかりそうです。前夫に財力がなければなんともしようがありません。
生みの親と育ての親の話がでます。
こちらの本ではそう深刻には書いてありませんが、重松清作品、『卒業』では、かなり深いところまで立ち入っていって、こどもの気持ちが語られています。涙なくしては読めない短編群です。名作です。
こちらの作品では、暗い話が続きます。
『第五章 セレクト』
1 ドロー
412ページあたりまで読んできて、ようやく中身がまともになってきました。主人公の岩見有紗が自分の態度や思考のしかたを改める方向へと変化しました。自立・自活をめざすのです。人は、こうあって欲しい。岩見有紗は、五体満足で口が達者でも働けない人でした。くわえて、働かない人でもありました。
そこにたどりつくまでの395ページあたりまで読んできて、疲労感と、いい話は何もないという失望感が胸に広がっていました。読む行為に大量の時間を費やしています。
岩見有紗の言動が、ただの怠け者、がんばれない人、どうしようないという気持ちにさせるのです。
2 ママ友解散
ばかばかしいうわべだけの仲良しごっこをしているママ友グループも解消です。
後半まで、ひどい人たちがひどいことばかりをしていました。
こんなふうな親だと、まともなこどもは、心がおかしくなってしまいます。こどもからの反発を覚悟しなければなりません。お金があっても、さみしい人たちです。
『第六章 エピローグ(終わりということ)』
なんだか、あっけなく終わってしまいました。何だったのだろう。まっ、いいか。
最後の章まできて、やっとちゃんとしてきました。
生き方、生活のしかたとして、『(わたしを)助けて』(依存、寄生)ではなく、『(自分で)努力します』(自活、自立)であって欲しい。
タワマンに住む富裕層は、妻は専業主婦でなければならないとか、幼稚園のお受験をしなければならないとか、ばかばかしい限りです。
こどもがおかしくなってしまいます。こどものままおとなになる人間が育ってしまいます。親自身も、こどものままおとなになった状態です。人生での体験不足です。
<解説 本当は怖い 「絵にかいたような幸福」 斎藤美奈子 文芸評論家>
卑近な物語(ひきんなものがたり):身近でありふれている物語という評価がありました。
ハピネス:英語で、幸福、幸せ、満足
第一章から第六章まであります。
2016年(平成28年)出版の文庫本です。単行本は、2013年(平成25年)の発行です。
『第一章 タワマン』
1 落下するもの
タワーマンション:20階以上、高さ60mを超える超高層マンション(わたしは住みたくありません。まず、地上から部屋まで、部屋から地上というエレベーターによる移動時間がかかることがイヤです。くわえて、上層階は鳥が住む世界です。わたしは高いところはにがてです)
登場人物たちが住んでいるタワーマンションです。
分譲と賃貸があるそうです。
『ベイタワーズマンション(通称がBT)』:ベイウエスト・タワー(BWT52階建て。西に建つ。イーストより高級という位置づけ。眺望がいい)とベイイースト・タワー(BET。東に建つ)で構成されている。洗濯物を干していい時間帯は、午前11時から午後1時までだそうです。強風でバルコニーに置いてあるものが飛びやすいそうです。洗濯物はやむなしですが、干せる時間帯が短い。
YONEDA:重機メーカーのオフィスビル。32階建てで、ベイタワーに日陰をつくる。
岩見有紗(いわみ・ありさ):タワマンに住む若い母親。朝寝坊をする。朝は、娘の花奈(かな)に起こされる。なんだかだらしない母親です。う~む。問題ありの母親です。仕事はしていない。実態として、首尾よく妊娠してできちゃった婚に持ち込んだ。江東区の埋め立て地に建っている高層マンションベイイースト・タワー(BET。東に建つ)の29階に住んでいる。部屋は賃貸物件である。夫は、IT会社、シカゴ勤務の単身赴任、その後ウィスコンシン州に異動
岩見花奈(いわみ・かな):岩見有紗のひとり娘。3歳2か月
岩見俊平:岩見有紗の夫。31歳。優柔不断な男だった。できちゃった婚で結婚して父親になったが、今は、アメリカ合衆国に単身赴任中でひとり暮らしをしている。
岩見晴子(いわみ・はるこ):岩見有紗の夫の母親。ヨーロッパ物産展の品物で、ロバのぬいぐるみを孫の花奈にくれた。家事代行業のアルバイトをしている。町田のお祖母(おばあちゃん)と言われている。孫が付けた別名が『ロバしゃん』です。
岩見陽平:岩見有紗の夫の父親。定年退職したばかり。ボランティアとゴルフをしている。元市役所職員。68歳
岩見有紗の実父:肺がん検査での入院歴あり。実家は新潟県にある。
竹光裕美(たけみつ・ゆみ):竹光いぶきのママ。『いぶママ』。52階建てベイウエスト・タワー47階の西南角部屋に住んでいる。『一等地』と呼ぶそうです。(おもしろい)。ママ友社会でボスの役割を果たしている。航空会社のCA(キャビンアテンダント)をしていたという噂がある。育ちの良さそうな細い顎(あご)、きれいにひかれたアイライン、指にはブランドもののリングをつけている。
竹光晴久(たけみつ・はるひさ):竹光裕美の夫。東京銀座にある出版社で編集の仕事をしている。
栗原洋子。美雨ママ(みうまま。栗原美雨の母親):駅前にある普通のマンションに住んでいる。美雨(みう)は、2歳6か月の女児。夫は11歳年上。親の意向に従って結婚した。夫に対する愛情が強かったわけではない。
芽玖(めぐ):こどもさん。芽玖(めぐ)ママ
真恋(まこ):こどもさん。真恋(まこ)ママ
バルコニーから強風で、『イワミカナ』と書いてある幼児用プラスチックシャベルが飛んで落ちてしまった。(バルコニーに風で飛ぶものを置いてはいけないというルールがあるそうです)
(わたしの考えとして)共働きでの子育てをした体験者として思うのは、なぜ妻は、こどもさんを保育園に預けて働かないのだろうということでした。ご主人の給料がいいわけか。
こどもは、いい幼稚園に入れる(いれる)そうです。幼稚園の受験があるそうです。(そういう世界の話か。裕福な人たちです)
ママ友グループはあるけれど、けして、各自の部屋には入れてくれない。
ミッフィー:うさぎの女の子のキャラクター絵。オランダのデザイナーの作。『うさこちゃん』
朝からこどもにインスタントラーメンを食べさせる母親です。こどものままおとなになったようなおとなが増えました。日常生活をきちんと送る生活能力がありません。
北千住:東京都足立区の地名。
デコメール:絵文字、色付き文字や背景、アニメーション画像などがある電子メール
BWT(ベイウエスト・タワー、52階建て)の52階にラウンジがある。こどもの遊び場としても利用されている。
なんだか、重苦しい世界があります。母子グループの世界です。
こどもがいれば、こどもを介したつきあいがありますが、こどもがいないと、隣は何をする人ぞになるのが、分譲マンション暮らしです。
部屋を所有している人と賃貸の人だと、あまり交流はないような気がします。所有と賃貸では意識が異なります。
2 上がって下りて、また上がる
ママ友仲良しグループは、全員で5人です。全員が30歳過ぎです。なかなかややこしい。
リーダー格、分譲の部屋住まい高級な西棟の47階西南の部屋(52階建て):いぶママ(竹光裕美たけみつ・ゆみ)。竹光いぶきのママ。夫は一流会社勤務
分譲の部屋住まい、高級な西棟:芽玖(めぐ)ママ。夫は一流会社勤務
分譲の部屋住まい、高級な西棟:真恋(まこ)ママ。夫は一流会社勤務
賃貸の部屋住まい、陽があたる時間が短い東棟、ランク落ちの棟:岩見有紗(いわみ・ありさ、主人公)、ひとり娘が、花奈(かな)。
駅前にある普通のマンション住まい、美雨ママ:栗原美雨の母親。夫は飲食業。美雨(みう)ママは美人。背が高い。やせている。『江東区の土屋アンナ』という名づけがある。派手でかわいい顔をしている。ときおり、ぐさりと本質をえぐるようなことを言う。本音で生きるタイプです。
西棟の最上階52階にあるラウンジがこどもの遊び場、ママ友の交流の場となっている。きれいな服装で行き、飲み物は各自が持参する。(なんだか、自分がこどものころは、着の身着のままのボロを着ていたので、違和感がたっぷりあります)
ラウンジは、オートロックです。(住人は、幸せなのだろうか。拘置所のようです)
バトラー:マンションの執事、秘書。まあ、管理人ということか。
マンションのロビーは、ホテルのように美しい。
なんだかよくわかりませんが、エレベーターでの移動はかなりめんどうで時間がかかるようです。途中の階から上には行けない。いったん1階のホールに下がってから上階をめざすそうです。
エレベーターの中では、ベビーカーはたたむような指示があります。たいへんだあ。
タワーマンションは、いろいろと制限が多い窮屈な環境にあります。
高層階で暮らしていると、(飛び降りて)死にたくならないかというような話が出ます。
オーク:ナラの木。広葉樹。秋には、ドングリができる。
3 ラウンジママたち(なんというか、この数字を設定しての文章の区切りが、ちょっとわずらわしい。物語の進行のしかたが、読んでいて、しっくりしません(かみあう、組み合う))
シリコンバンドのデジタル腕時計:手首にはめるブレスレット。シリコンは、ケイ素。岩石や土壌の成分
ラウンジママ(一日中、こどもをラウンジで遊ばせている。自室の電気代やトイレの水道代を節約している。ラウンジにトイレがあるそうです。ラウンジは共有部分):ママ友グループとは別の若い女二人のママのことをラウンジママというです。足を広げて座る。携帯をいじる。ペットボトル持参。ひとりは茶髪で細い。ギャル曽根に似ている。もうひとりは太い体をしている。黒くて長い髪をしている。子連れで来て、ラウンジを散らかしている。(こんな人って、いるのかなあ。まあ、いるのでしょうね)
文章を読み取ることがむずかしいのですが、こちらのタワーマンションには高層階部分にまわりがすけて見える廊下部分があるそうです。『両側が素通しの強化ガラスに覆われた(おおわれた)狭い廊下』、『ラウンジからエレベーターホールに向かう通路は、両脇を強化ガラスに包まれた、空中に浮遊するトンネルになっている』。高所がにがてな人には恐怖を感じる通路でしょう。
本のタイトル『ハピネス』の意味は、『(物語では、うわべだけの)幸福、幸せ』です。
なんだか、重苦しい人づきあいについて書いてある文章です。出てくる人たちはどの人もいい人とは思えません。公共の場でのちゃんとしたふるまいができていません。
あいさつをしない人が増えました。孤独な人が増えたということです。複数でいても、ひとりなのです。昔、薬師丸ひろ子さんが歌っていました。『ふたりでいたって、ひとりは消えない……』。曲名は忘れました。
4 上の空
だんだん化けの皮がはがれてきます。うわべでは、お金があって、幸せそうな家族ですが、実態は反対なのです。
見栄っぱり(みえっぱり):まわりの目を気にする。自分について、実際よりも良く見せる。誇張する。(こちょう。おおげさにふるまう)。うそをつく。
日常生活のことは、ありのままでいい。うそはつかないほうがいい。
いいママを演じていると、心の病気になってしまいます。
渡鬼(わたおに):渡る世間は鬼ばかり。橋田寿賀子脚本のドラマ。
となりの芝生:橋田寿賀子脚本のドラマ
羅刹の家(らせつのいえ):嫁姑(よめしゅうとめ)戦争のドラマ
なにかしら、強風でベランダから飛んで行ってしまったプラスチックのシャベルにこだわりがあります。(シャベルには、『イワミカナ』と書いてある)
超高層マンションの高層部に住む人間たちの心理として、『他者を蔑みたい(さげすみたい)、蔑むことで、自分の立場を誇示、維持したい。そんな比較があります』
岩見有紗の家族・親族の秘密が読み手に語られます。
有名幼稚園を受験できるような家族状況ではありません。
タワーマンションのママたちは、働かない人たちです。
わたしが社会に出たとき驚いたことがあります。五体満足で口が達者でも働けない人がいるということでした。世の中には、自立・自活する人と、その自立・自活している人に依存しながら生活する人がいるということを知りました。人間界全体は、そういう仕組みでまわっているのです。
5 公園要員
タワーマンションのリッチなママ友3人に都合のいいように利用されている賃貸部屋の岩見有紗と別の一般的な分譲マンションに住んでいる栗原美雨(みう)ママです。
3歳児の花奈(かな)を美雨(みう)の実家(深川)に預けて、美雨(みう)ママとふたりで飲みに行きたい岩見有紗です。
岩見有紗は、いろいろうそをついているので、ややこしい。夫の実家(町田市)を自分の実家だといっている。(本当は新潟県)
いぶママの家の車は、ゲレンデヴァーゲン(メルセデス・ベンツGクラス(最上級))、芽玖(めぐ)ママの家が、銀色のプリウス、真恋(まこ)ママの家が、フォルクスワーゲンシロッコ
岩見有紗はママ友のボスに声をかけられるけれど、本気で誘われているわけではない。(わたしをばかにするなとプライド(誇り、自信)をもったほうがいい)
タワーマンションの中は、あれをしてはダメ、これをしたらダメという世界です。こどもにとっては、とっても窮屈な世界です。
半世紀前のこどもたちの遊び場は、道や野原、山や川や海でした。日本人のこどもたちの生活がすっかり変化してしまいました。電子的なゲーム遊びが多すぎます。人間の心身までが機械的になってきています。
3歳の花奈ちゃんがいいます。『(もう、インスタント)ラーメンいや』
花奈(かな)ママがいいます。『(コンビニで買う)おにぎりにしよう』
6 夜の船出
まあ、いろいろあります。うまくいかないできちゃった婚とか、義父母からこども(孫)をうちに残して自由に生きてくれ(離婚してくれ)とか、専業主婦じゃなくて働いてくれとか、どちらがいいとか悪いとかいう話でもなく、なかなか結論が出せない話です。
ZARA(ザラ):服飾メーカー。衣類の小売業。低価格
いったん壊れた夫婦関係を修復することはかなり困難です。
口を噤んだ(つぐんだ):口を閉じる。黙る。ものを言わない。
これから、どうなるのだろう。
『第二章 イケダン』(イケダン:いけてる旦那。仕事ができて、家庭サービスも充実している。高評価される旦那さん。
1 かなちゃんのさべる(プラスチックのシャベルのこと)
106ページまで読んでの感想です。
作者のメッセージとしての、『夫の収入に依存しながら生活する働かない女の人たちを批判する』ということが、浮き彫りにされている作品です。依存するみかえりとして、女性が、妻の役割、母親の役割を果たせていないのです。
夫が、『とにかく離婚してくれ』と訴えています。
一時の欲望で関係をもって、こどもができて、責任をとらされる形で、できちゃった婚という形で結婚してみて、ようやく、相手の女性の性格と性質がわかったのです。女性は、男性に依存とか寄生をする生き方をする人だったです。
妻は、とことん働く気はない。いい生活はしたい。こどもには、幼稚園のお受験をさせる。お金は、夫と夫の実家に出してもらう。
衣食住の家事を適切にこなせる能力がない。こどもの食事は、朝からインスタントラーメン、お昼はコンビニのおにぎり、そして、カレー、そんな感じです。
妻に、自分に悪いところがあるという意識はいっさいありません。うまくいかないのは、相手のほう(夫側の人間)です。
こういうことって、現実にあるのだろうなあ。
栗原由希子(くりはら・ゆきこ):栗原洋子(美雨(みう)ママ)の妹。元保育士。バンドをやっている。ベビーシッターのバイトもしている。
タワーマンションの回覧板は、ネットで閲覧する方式だそうです。
『イワミカナ』と名前が書かれたプラスチックのシャベルが、お怒りの手紙とともに、ドアノブにぶらさげられていました。風で飛んできて、ガラスに当たって、ガラスが割れるかもしれなかったそうです。どなたがシャベルをもってきてくれたのかはわかりません。(なんだか、たいへんです。タワーマンションが、快適な居住空間とは思えません)
H&M:スェーデンの服飾メーカー。安価
深川:江東区墨田川の西、両国の南。栗原洋子の夫(寿司職人)が働く店がある。なお、店は、栗原洋子の親が経営しているチェーン店の寿司屋です。
トモヒサ:栗原洋子(美雨(みう)ママ)の同級生。東京深川にある居酒屋で働いている。未婚
2 門仲の女王 門仲(もんなか):深川地域にある門前仲町。神社仏閣がある門前町、商店街
まあなんというか、先日動画配信サービスで観た昔の映画、『阿修羅のごとく(あしゅらのごとく)』のような世界になってきました。(不倫と浮気のオンパレードです)。お金があって、仕事をしてなくて、ヒマな時間があるからかなあ。こどもはどうなるんだろう。
KY:空気が読めない。空気読め。
あん肝(きも):アンコウの肝を使った料理。珍味
結婚する相手を間違えた。
『孤独』は、怖い(こわい)。『孤独』は、ときに、犯罪につながることがあります。
3 さよならの夢
(岩見有紗が夫となる岩見俊平と出会った昔の話として)
梨花ちゃん:合コンメンバー
岩見有紗は車がない。
夫もアメリカ赴任でいない。アメリカ合衆国ウィスコンシン州にいるが、ママ友にはニューヨークにいるとうそをついている。(岩見有紗は、どうして夫と一緒にアメリカ合衆国へ行かないのだろう)
エレベーターで同乗した酔った男が28階で降りて行った。同じマンションに住んでいても、顔見知りでなければ、住人同士あいさつはしない。(その男は、181ページで再登場します。4歳か5歳の男児を連れています。小学生の兄がいるそうです。父親は、サービス業か自由業に見える)
公園要員:ママ友の中で格下扱いされるママのこと。利用されているだけ。
なんというか、読んでいると、なんだかなあとか、話を聞いてもしょうがないという気分になってくる内容です。
あわせて、こどもがいない人がこの部分を読んでも内容はわからないだろうし、実感もないのだろうなあと思うのです。
こどもがいない人には、保育園と幼稚園の違いは、わからないでしょう。
もう40年ぐらい前、わたしたちが親になったころの保育園は、こどもを預けて働くためにありました。保育園は、こどもを預かってくれるところでした。
いっぽう幼稚園は、専業主婦のお宅が、小学校入学前のこどもを小学校生活に事前に慣らす(ならす)ために教育するところでした。
現在は昔と違って、保育園と幼稚園が同じような扱いになっているのかもしれません。
本の中では、何歳から幼稚園に行かせるかとか、何年保育にするかとか話が出てきますが、うちのこどもは生後2か月ぐらいから保育園に預けました。夫婦ともに裕福な家庭で育ったわけではなかったので、こどもたちを小さい頃から預けて必死で働いて稼ぎました。当時、育児休業の制度はまだありませんでした。児童手当の制度もなかった記憶です。
その後、こどもたちからは、ちいさいころから預けられてたいへんだったと反発もありましたが、なにせ、生活をしていくためにはお金が必要なのです。こどもたちには、いっぱい泣く思いをさせてしまいました。後悔することも何度かありましたが、老齢期を迎えてみると、あれはあれで良かったと思うのです。そういう努力を、この本の中にいる人たちはしようとしないのです。夫の経済力に頼って、夫のエキス(利益となるもの)を吸って生きていく女の人たちです。
4 上から目線
こどもは商品だろうか。ママ友たちによるそれぞれのこどもを比較しての評価です。
見遣った:みやった。読めませんでした。
おでこが秀でて:おでこがひいでて。立派な額(ひたい)。品が良く知的
岩見有紗は、ほんとうに夫の俊平が好きなのか。策略をもって、結婚したのではないか。
岩見有紗は、結婚当時29歳で、結婚にあせっていた。だから、これで(俊平で)、手を打った。
新潟県から出てきて、新潟県へ帰りたくなかった。結婚して、東京に住み続けたかった。そのために俊平を利用した。
格落ち(かくおち):本では、人間に対して使われています。地位が低い。
フープ型のピアス:リング状の輪っか
ANTERPRIMA:アンテプリマ。ファッションブランド
学歴自慢の話が続きます。
すさまじいなあ。女の戦いです。
『第三章 ハピネス』
1非通知
なんだか話がややこしくなってきました。
主人公の岩見有紗に、もうひとりこどもがいるのです。男児です。
瀬島雄大(せじま・ゆうだい):10歳
岩見有紗は、離婚歴ありか。こどもはだんなが引き取ったのか。
それで、新潟の実家あたりを出て、東京でやりなおしたのか。
まあ、人生いろいろあるわいな。
山本:岩見有紗の定年退職した父の友だち。ゴルフ、温泉旅行仲間
詮ないこと(せんないこと):やっても、思ったような効果がないこと
なんというか、幼稚園のお受験の記事あたりを読んでいると、去年観光で訪れた、東京、『日枝神社(ひえじんじゃ)』での七五三風景とか、靖国神社あたりを黒礼服の集団で、親子で歩いていたおそらく有名私立小学校の在校生とその母親のみなさんの姿を思い出します。
老齢期にあるわたしなんぞは、幼稚園も保育園も行ったことがありません。わたしが幼児のときに暮らしていた熊本県の離島には、幼稚園というものはなかったような気がします。もしあったとしても、うちの親はお金がもったいないといって行かせてくれなかったでしょう。
岩見有紗が産んだこどもふたりが、それぞれ、会えない親に会いたいと言う。(新潟にいる前夫が引き取ったこどもと、アメリカで働いている父親に会いたいという娘のふたりです。どうかなあ。それは大人が考えるこどもの世界と理屈です。こどもは、ふだんから自分の世話をしてくれていない親になんぞ会いたいとは思いません。育児の義務を果たしてくれないそんな親は、こどもから見れば、サヨナラです。こどもが会いたいと思うのは、自分のことを親身に扱ってくれた親とか、残念ながら病気とか事故で亡くなってしまった親です。もう天国にいってしまって、会いたくても会えないのです)
話の変化が、びっくりするような状況設定です。
2 だましたわけじゃない
う~む。なんというか、主人公の岩見有紗は、結婚してはいけない女性、結婚しない人生を歩むべき人です。意識が、中学二年生レベルです。こどものままおとなになっている。やりたいことをやって、やりたくないことをやらないのは、こどもです。おとなは、やりたくないことでも、やるべきことは、がまんしてやります。
世の中では、少子高齢化対策としてあれこれ施策が出てきますが、男女をただくっつけてこどもを産んでもらえばいいというものではありません。親をやれない人が親になると、こどもは不幸です。配偶者や親族にも迷惑です。本を読みながらそんな気持ちになりました。
瀬島鉄哉(せじま・てつや):岩見有紗の前夫。前夫と岩見有紗との間に男児がいて、前夫の家族が引き取っている。岩見有紗より3歳歳下(としした)。26歳の時に、29歳だった有紗と結婚してこどもができた。こどもの瀬島雄大は、現在10歳。夫は、瀬島農園の次男坊。有紗が23歳のときに結婚した。
瀬島家の長男が病気で亡くなって、次男が農園を継いだ。農園の嫁になることがイヤで、有紗は3歳の雄大を置いて家を出た。有紗は、再婚した岩見俊平にそのことを話さずに29歳のときに結婚した。瀬島鉄哉は、『ドメバ(ドメスティックバイオレンス。家庭内暴力の加害者)』だった。(まあ、DVにもなるわいなあ)
岩見有紗の兄:9歳と5歳の男の子がいる。兄嫁の名前が、優子。嫁と義母とは折り合いが悪い。嫁は、有紗とも関係は良いほうではない。
驚喜(きょうき):思いがけず嬉しいことが起きた。
木村さん:岩見有紗の母親のお友だち。お茶を習っている。
岩見有紗は、義父母から、アメリカ合衆国ウィスコンシン州にいる夫にいっしょに会いに行って、話し合いをしないかと誘われますが断りました。
3 嫌いになりたい
なんというか、岩見有紗はイヤな人間です。
自活・自立の意思をもたいない依存症、寄生虫のような存在です。
夫と義父母の金銭負担が重い。タワーマンションの家賃が、23万円で、毎月の生活費の援助が10万円です。自分の生活費を自分で稼ぐ意識がいっさいありません。働こうかなと口で言うだけです。
ロンパース:あかちゃんが着るつなぎのようなベビー服
フリース:化繊、秋冬もの、起毛仕上げ、あたたかく見える。
ストール:婦人用の肩掛け
4 いい夫婦
加納久志:岩見有紗の兄。新潟の実家で、両親と妻、息子と生活している。
加納豊一郎:豊ちゃん(とよちゃん)。加納久志の息子
加納優子:加納久志の妻。豊一郎の母親
瀬島雄大:岩見有紗の息子。離婚した前夫瀬島鉄哉と暮らしている。瀬島鉄哉は再婚している。
加納豊一郎と瀬島雄大は、いとこにあたる。ふたりは1歳違い。ふたりとも新潟で同じ小学生サッカークラブに所属している。ふたりの交流はある。
ペーズリー模様:羽のような模様が連続的にある。
226ページ付近を読んでいます。全体で442ページありますが、もうこれ以上読んでも得るものがなさそうです。本の中では、いや~な雰囲気が続いています。
美雨(みう)ママ(栗原洋子)は、タバコを吸います。タバコを吸う人にいい人はいません。
ふと母親について、いろいろ考えます。
この本では、自活・自立の意思がなく、他者に依存する女性像が書いてあります。派生して(枝分かれして)、こどもを金ずるにする母親っています。各種手当の受給が目的です。いや~な気持ちにさせられます。
5 タワママの会
喘鳴(ぜんめい):ひゅーひゅー、ぜーぜーという呼吸の音
岩見俊平は、岩見有紗を本当はそんなに好きじゃなかった。こどもができてしまったから、できちゃった婚につながってしまった。
またひとりタワーマンションのベランダでタバコを吸っている男の人がいます。岩見有紗宅の階下の人です。タバコを吸うこの男性もいい人ではありません。
疚しさ:やましさ。良心がとがめて、うしろめたい。
本の中でのことですが、どうして、ママ友同士は相手を呼ぶ時に、『○○ちゃんママ』と呼び合うのだろう。奇妙です。ちょっと気持ち悪い。本体の人格から離れた呼び方です。
人を利用することしか考えていない人たちです。
差別意識と仲間意識は強い。岩見有紗がいるべき場所ではありません。
あっちこっちでこどもをつくると相続関係がややこしくなります。
なんというか、『標準』の中に居れば、法令は個人を守ってくれますが、『標準』から外に出ると、法令で個人を守ることがむずかしくなるということはあります。
岩見俊平は、前婚とこどもがいることを隠して自分と結婚した妻である岩見有紗を捨てる。妻を捨てるけれど、娘の花奈(かな)は捨てない。岩見俊平の両親を含めて、そんな展開に発展してきました。
言葉の綾(ことばのあや):言葉の言い回し、言い方
『第四章 イメチェン』
岩見有紗は、いちから人生をやり直したほうがいいけれど、もうそれもできない。こどもがふたりいて、ひとりは、前夫に引き取られて、もうひとりは、もうすぐ、やはり現在の夫に引き取られそうです。
岩見有紗は、また離婚して、また、自分が依存・寄生できる男性を探すのだろうか。
こどもはじぶんのものと主張するけれど、こどもはいつまでもこどもでいるわけではありません。こどもはあんがい早く、おとなになっていきます。こどもは、母親を捨てて自立していきます。
新潟の実家に日帰りで帰る岩見有紗です。どういうわけか、美雨(みう)ママの栗原洋子がついいて行きます。
期待したような成果は得られなかった帰省でした。
2 冬の桜
小説というよりも、随筆(エッセイ)を読むようです。
岩見有紗の心情がずーっと続きます。
巻末の記録を見ると、2010年(平成22年)7月号から2012年(平成24年)10月号まで雑誌に連載されています。実に2年4か月の長さです。
文章はかなり長い。全体で、442ページあります。今読んでいるのは、355ページ付近です。
なんだかんだとゴタゴタ話が続きます。
なんというか、いろいろと隠し事があります。
ありのままにやればいい。
知っているのに黙っているとあとでばれたときにもめます。
信頼関係が崩壊することもあります。
3 おうちにかえろう
岩見有紗も車の運転ができたら世界が広がるのにと思いますが、車の運転が不向きな人はけっこう多い。事故になるといけないので、向いていない人は運転をしないほうがいい。被害者になっても加害者になってもつらい。
幼稚園の受験というのはそんなにだいじなことなのだろうか。
わたしは、自分の体験として、小学校入学前に幼稚園も保育園も行ったことがありません。でも、ちゃんと生きてきて、ふつうに老齢期を迎えました。
離婚の話です。慰謝料の支払いについて、わたしはよくわかりませんが、こどもの養育費の支払いは、決めても、払ってくれるのは、最初の数回だけで、あとは音沙汰(おとさた)なくなることが多いと聞きました。前夫の給料や預金を差し押さえるにしてもかなりの手間と費用と時間がかかりそうです。前夫に財力がなければなんともしようがありません。
生みの親と育ての親の話がでます。
こちらの本ではそう深刻には書いてありませんが、重松清作品、『卒業』では、かなり深いところまで立ち入っていって、こどもの気持ちが語られています。涙なくしては読めない短編群です。名作です。
こちらの作品では、暗い話が続きます。
『第五章 セレクト』
1 ドロー
412ページあたりまで読んできて、ようやく中身がまともになってきました。主人公の岩見有紗が自分の態度や思考のしかたを改める方向へと変化しました。自立・自活をめざすのです。人は、こうあって欲しい。岩見有紗は、五体満足で口が達者でも働けない人でした。くわえて、働かない人でもありました。
そこにたどりつくまでの395ページあたりまで読んできて、疲労感と、いい話は何もないという失望感が胸に広がっていました。読む行為に大量の時間を費やしています。
岩見有紗の言動が、ただの怠け者、がんばれない人、どうしようないという気持ちにさせるのです。
2 ママ友解散
ばかばかしいうわべだけの仲良しごっこをしているママ友グループも解消です。
後半まで、ひどい人たちがひどいことばかりをしていました。
こんなふうな親だと、まともなこどもは、心がおかしくなってしまいます。こどもからの反発を覚悟しなければなりません。お金があっても、さみしい人たちです。
『第六章 エピローグ(終わりということ)』
なんだか、あっけなく終わってしまいました。何だったのだろう。まっ、いいか。
最後の章まできて、やっとちゃんとしてきました。
生き方、生活のしかたとして、『(わたしを)助けて』(依存、寄生)ではなく、『(自分で)努力します』(自活、自立)であって欲しい。
タワマンに住む富裕層は、妻は専業主婦でなければならないとか、幼稚園のお受験をしなければならないとか、ばかばかしい限りです。
こどもがおかしくなってしまいます。こどものままおとなになる人間が育ってしまいます。親自身も、こどものままおとなになった状態です。人生での体験不足です。
<解説 本当は怖い 「絵にかいたような幸福」 斎藤美奈子 文芸評論家>
卑近な物語(ひきんなものがたり):身近でありふれている物語という評価がありました。
Posted by 熊太郎 at 07:32│Comments(0)│TrackBack(0)
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