2024年01月22日

日々憶測(ひびおくそく) ヨシタケシンスケ

日々憶測(ひびおくそく) ヨシタケシンスケ 光村図書

 想像だが、誤解がともなうのが、『憶測』です。(憶測:いいかげんな推測)
 絵本のようなつくりの本です。
 ヨシタケシンスケさんが、絵の中にある通り(とおり)を歩いています。憶測が始まるのです。
 9ページで、人間の思考を図にしてあります。
 
 『世界は誤解と錯覚で成り立っている』
 昔読んだ本にそう書いてありました。
 世界各地を女ひとりで旅をした著者の経験談でした。
 アフリカの森で道に迷い、怖い一夜をすごしたあと、現地住民の集落に着いた。襲われるのではないかと恐怖心でいっぱいだったが、現実は違っていた。とても心優しい人たちで親切にしてもらったという記録の記述がありました。
 相手を自分に危害を加えてくる怖い(こわい)者として、誤解して恐れて、相手を攻撃して排除したいという気持ちが生まれるときに、自分の側に、誤解と錯覚が生じるのです。
 この地球上の世の中で暮らしている大半の人たちは、善良ないい人なのです。

 この本は、気持ちがへこみそうな人を励ますことを目的にした本です。

 おもしろい。
 いろんな人がいます。

 ホッと息抜きができる本です。
 なるほど、いい本です。
 
 タイトル『どれが何』
 「先日入ったお店のトイレは、どれが「流す」のボタンなのかが、しばらくわかりませんでした。」とあります。
 新幹線のトイレで、ボタン式開閉ドアを思い出しました。ボタンを押して、ドアの開閉をするのです。いなか暮らしの年寄りには操作がむずかしい。
 昔見た、太川陽介さんとえびすよしかずさんの路線バス乗り継ぎ人情旅の番組で、えびすさんが、どこかにあったボタン式トイレにボタンを押してドアを開けて入ったあと、トイレから出ることができないと大声を出し始めて、結局トイレの中でボタンを押さず、力づくでドアをこじあけてトイレから出てきたシーンがあったと思います。

 20ページには、ジェット旅客機に登場しているキャビンアテンダントの話が出てきます。
 先日の羽田空港でのジェット機炎上事故を思い出します。乗客全員助かって、本当に良かった。CAさんお疲れさまでした。

 『選ぶのが苦手なので、いつもつい「一般的なプラン」を聞いてしまいます。』つまり、『…… みなさんフツーどうされてます?』
 自分のことを人に決めさせようとする人っています。うまくいかなかったときは、アドバイスした人を責めるのです。卑怯者(ひきょうもの)です。

 けっこうページ数があります。(140ページぐらいです)
 
 おもしろい。クスッと笑ってしまう。
 
 『空(から)のペットボトルを(おそらく無意識に)リズミカルにへこませながら歩いているおじさんがいました。』とあります。以前どこかで読んだ記事に、ペットボトルを押して、ペッコペッコという音をさせると、熊がその音を嫌がると書いてありました。去年は野生の熊の被害が多かったのですが、熊よけの方法のひとつになるそうです。たしかに、熊はその音は、奇妙でイヤだろうなあ。

 宿泊したホテルに備え付けてある歯ブラシのブラシの横に誤ってチューブの歯磨き粉を出してしまったとあります。おもしろい。ありそうです。

 60ページ、ここまで読んできて、おもしろい。漫才のネタ集のようでもあります。

 65ページから1冊の絵本みたいな書きかたになりました。
 タイトルは、『よみきかせロボ メデタシー』です。
 ちびっこたちに絵本の読み聞かせをするロボットが出てきます。
 こどもたちは、おとなになって、絵本を読まなくなりました。
 少子化のせいか、こどもがいなくなってしまいました。
 そんなお話ですが、最後は同好の友ができるのです。

 94ページには、『時空間移動』があります。
 洋画、『バックトゥザフューチャー』シリーズを思い出しました。いい映画でした。
 
 96ページ、見開き2ページの展望シーンの絵がいい感じです。
 先月鹿児島市に行ったときにながめた場所、城山公園展望広場を思い出しました。この絵のように、海(鹿児島湾)と山(桜島)がきれいに見えました。絵のように、市街地も見えました。

 トイレットペーパーとボックス型ティッシュペーパーを比較して、男女の恋は、ボックス型のように、『突然終わる』というたとえが良かった。

 ヨシタケシンスケさんは、日常生活を送りながら、作品のネタ探しのために事象を常に観察しています。そして、おそらく、分析もされています。学者さんのようです。そんなお姿が目に浮かびます。

 ハゲとか育毛の話が出てきます。
 熊太郎は歳を取りましたが、ハゲてはいません。友人・知人はみんなハゲています。
 以前、どうして自分の頭はハゲないのだろうかと思ったことがあります。(理容店でそんな話をしたら、ハゲの人は、ハゲていることでとても悩んでいるので、そういうことは、ハゲている人の前では話さないほうがいいと勧められました。自分で思うに、母方祖父がハゲておらず(父方祖父はハゲていました)、全部真っ白な、白髪頭でした。自分は、母方祖父からの遺伝でハゲていないのでしょう)

 コロナ禍がありましたので、『マスク』の話も出てきます。

 119ページの、『ものは言いよう』が良かった。
 本当は失敗しているのに、失敗していないかのごとく案内をするのです。
 『(料理、食べ物)できたてをお持ちしますので少々お待ちいただけますか?』(ほんとうは、つくるのが遅れている)

 絵の内容とは直接関係がないのですが、絵を見ていて思ったこととして、『安全確保のために、三密になる場所は、なるべく避けた方がいい。(密閉、密集、密接)

 『文字のゆくえ』
 お店の看板の一文字がとれてしまうのです。『せん魚』の『ん』がとれてしまったことの絵が描いてあります。
 先日読み終えた本を思い出しました。
 『とんこつQ&A』 今村夏子 講談社
 街の大衆食堂の店舗名が、『とんこつ』ですが、とんこつラーメンの提供はしていません。
 本来の店舗名は、『敦煌(とんこう。中国の都市名)』だったのですが、店名『とんこう』の、『う』の上にある点の部分がはずれて、『とんこつ』となったそうな。
 メニューに、しょうゆラーメンはあるけれど、とんこつラーメンはないそうです。

 全部を読み終えて、人間にとって大事なものって何だろうなあと考えました。
 『人生という与えられた時間』を楽しむことだと思いました。
 時間は限られています。今年は、中村メイ子さんと八代亜紀さんの訃報を聞き、若い頃から知っているおふたりでしたので、しみじみくるものがありました。  

Posted by 熊太郎 at 07:28Comments(0)TrackBack(0)読書感想文