2022年10月17日

おぼえていても、いなくても 蛭子能収(えびす・よしかず)

おぼえていても、いなくても 蛭子能収(えびす・よしかず) 毎日新聞出版

 2021年7月の出版ですから、今から1年ちょっと前のことになります。
 第1章のタイトルが『珈琲(コーヒー)は好きだが、違いはわからない』とあります。昔インスタントのコーヒーコマーシャルがありました。宣伝文句が、違いがわかるコーヒー通(つう。コーヒーに詳しい。コーヒーにこだわりがある)が選ぶコーヒーというものでした。自分の知人が、違いがわかる人がどうしてインスタントコーヒーを選んで飲むのだろうかと疑問を呈して(ていして。提示して)いました。その理屈に、妙に納得できました。

 えびすさんは、本読み嫌いのくせに、この世にたくさん本を出版されています。
 たぶん、優秀な編集者がついて、出版社の強力なバックアップがあるのでしょう。
 えびすさんは組織にとって、お金になる人なのです。

 目次の最後に『なるべく楽して稼ぎたい』とあります。
 えびすさんらしい。

 四コマ漫画付きのエッセイ集となっています。

(つづく)

 庶民が日曜日にギャンブルをする理由が明快です。『仕事がない休日に、仕事がわりに儲ける(もうける)方法はないかと集まってきているのだ。』
 でもサラ金で借金までしてギャンブルに投資するのは心の病気です。(えびすさんは、サラ金に入店しても、お金を貸してもらえなかったそうです)

 転々とギャンブルをする場所を変えながら国内を移動することを『旅打ち』というそうです。マージャンを思い浮かべるのですが、えびすさんの場合は、ボートレースです。
 えびすさんは、ギャンブルの旅とあわせて、太川さんとの路線バス乗り継ぎの旅も体験して、日本国内のいろいろなところに足跡を残しています。なのに、忘れています。さらに、認知症になっています。ある意味、すごいです。

 名言があります。『お金は働かないと増えないのだ。』
 お金の話が続きます。自分が思うに、お金がたまらないのは、アルコールの大量摂取、ニコチン中毒、ギャンブル中毒、車の保有などが理由としてあげられます。最近では、宗教団体への常識を越えた寄附金額が、問題視されています。

 ページのつくりとして、右ページが『文章』、左ページが『四コマ漫画』と配置されていますが、逆の配置のほうが読みやすい。
 右ページが『四コマ漫画』左ページが『文章』のほうが、全体を把握してから詳細を知るという流れになって、内容が自然に頭に入ってきます。逆だと文章で読んだことと同じことがマンガになっているだけでくどいです。

(つづく)

 眼科の話と顎(あご)がはずれた話があります。
 おもしろい。だれもがあるようなエピソードです。(短くて興味が湧くお話:エピソード)

 歳をとって思うことが四コマ漫画とエッセイにあります。
 『歯』の話です。
 若い時は、異性というのは、見た目がきれいとか、可愛い、イケメン、スタイルがいいとかで気持ちがひかれますが、歳をとって思うのは、見た目よりも、体が健康であることのほうが大切ということです。

 『歯』が大丈夫かどうかで、老後の暮らしがずいぶん違ってきます。
 半年に1回は点検のために歯科受診をお勧めします。
 自分は、一日三回、毎食後、歯磨きをしています。
 それでも歯茎(はぐき)に痛みはあります。
 若い人たちは、自分のためにちゃんと歯磨きをしておいたほうがいいですよ。

 本のほうは、淡々とした語り文章が笑いを生みます。

 えびすさんは、不謹慎な人です。
 お葬式のときに笑い出す人です。
 悲しみの場面にいると笑いたくなるのでがまんするそうです。
 おかしな人です。
 笑いたくなる理由は明確には書いてありません。理由がないということもあるのでしょう。
 酒もたばこもやらない。刺身のような海鮮類は食べることができない。
 競艇きちがい。なにかしら、脳みその中のバランスが片寄っています。

 えびすさんの思考は変わっています。
 貧乏な長屋生活体験から、きれいな服や靴を着ることが苦手です。新品をわざと汚します。きちんとしたかっこうをすることが苦手です。下着はきれいなものを着ますが、そのうえにはぼろな服を着て気持ちを落ち着けます。目立ちたくないそうです。ただ、そういう気分ってあります。

 とっぱらい:出演料や労役代金を当日現金払いで受け取ること。
 
 『夏の富士山は(雪をかぶっていないので)パンツを脱がされた人(みたいなもの)……』の部分がおもしろかった。

 眠っているときにみた夢をヒントにしてマンガを描いていたそうです。
 自分もふとんの横にメモ用紙を置いてあって、発想したことを忘れないようにメモしています。

 寝ているときに、うなされて、腕をぶんぶん振ることがあるそうです。
 自分も現役で働いていたころ、仕事のストレスで、夜中にふとんの中で大声をあげることがありました。そんなとき、家族に何度か、やかましいから静かに寝なさいと文句を言われました。いたわってもらえません。世の中は厳しいのです。

 2020東京オリンピックのことが書いてあります。
 2022年夏になって、終わったはずのオリンピックは、汚職でボロボロです。

 車の運転が好きだそうです。そのように見えないけれど好きなのでしょう。
 運転免許証は68歳のときに返還されたそうです。返して良かった。認知症になったし……。

 23歳ぐらいの頃、デートしていた女の子に「キスしてもいい」と声をかけたら、「わたしのこと好き?」と聞かれて返事ができなかったそうです。当然キスはさせてもらえませんでした。えびすさんらしい。ウソが言えません。彼女は怒って帰ってしまいました。

 2019年年末に「ローカル路線バス乗り継ぎの旅」を卒業した。長いことやめたかったようすです。
 タレントとか俳優の仕事って、本人の気持ちでやるのではなく、周囲がやらせる(まあ、お金のために)という職業の一面があります。
 
 「(コロナの)変異ウィルス」という言葉を「ヘンリー・ウィリアムズ」という外国人の名前だと思っていたそうです。えびすさんらしい。「ヘンリー・ウィリアムズが日本に来る」

 中学生のとき、いじめにあっていた。
 ストレス解消で、マンガを描いて、マンガの中で、いじめる相手を暴力で痛めつけた。なるほど、そういう克服のしかたもあります。

 自殺を思いとどまるようにしてねというメッセージがあります。
 死にたくなったら、まず歌う。次に、おいしいものを食べる。
 おなかいっぱい食べたらぐっすり眠る。

(つづく)
 
 ロケ地での宿泊場所は日本旅館よりもビジネスホテルがいいそうです。気持ちはよくわかります。機能性が優先です。気楽が一番です。

 『鶴瓶の家族に乾杯』は時々見ます。
 ゲストさんは大変です。
 千鳥の『相席食堂』はよく見ます。
 こちらも主演するタレントさんたちはたいへんです。
 知らない人とお話することはむずかしい。
 たしか、えびすさんは両方の番組に出られています。

 物忘れのことが書いてあります。
 歳をとると、今こうしなきゃと考えていることを次の動作をした瞬間に忘れてしまうこともあります。

 この本では、きちんと規定の文字数の中に文章をまとめてあります。ライターか編集者が整理しているのでしょう。ご本人にできるとは思えません。

 『ローカル路線バス乗り継ぎの旅 台湾編』の映画は観ました。なかなかの名作でした。チャレンジは成功しました。2015年9月ロケでした。台風直撃来襲のなか、台湾の北から南まで、路線バスを乗り継ぎながら三泊四日で移動できました。
 ゲストの三船美佳さんが良かった。現地の人が、あなたのことは知らないけれど、あなたのお父さんの三船敏郎さんことは知っています。あなたのお父さんは、台湾でも大スターですと三船美佳さんに教えておられました。

 えびすさんの波乱の人生です。
 平成10年(1998年)雀荘で賭けマージャンをしていて逮捕された。
 平成13年(2001年)前妻が病死。
 平成19年(2007年)再婚。その後、3人のこどもと8人の孫に恵まれる。この年から『ローカル路線バス乗り継ぎ人情旅』が始まる。

(つづく)

 長崎県のことが書いてあります。何度か自分も長崎を訪れました。
 『のぼせもん』おもしろいことを言ったりやったりして人を楽しませる人は、知りませんでした。
 有名人として、美輪明宏さん、前川清さん、さだまさしさん、福山雅治さん、役所広司さん、大仁田厚さん、えびすさんは、こどものころ、美輪明宏さんの家の近所に住んでいたので、当時の若くて美しい美輪さんを見たことがあるそうです。
 えびすさんが福山雅治さんとドラマ『ガリレオ』で共演できたのは地縁のような気がします。人間界は、地縁・血縁・学校の同窓生などで人間関係や仕事の配分が決まる傾向にあります。『知っている』という互助組織です。働くときに『知っている』は大事です。とかく疑心暗鬼(ぎしんあんき。疑う)な世の中で、信頼関係の構築につながります。
 
 えびすさんの、ひとり暮らしを始めたころのことが書いてあります。
 自分も九州の高校を卒業して都会に出て、18歳から10年間近くひとり暮らしをしました。それなりにさびしい生活で、早く結婚して家族がほしいと願いました。
 結婚してこどもができて家族が増えたら、やっぱりひとり暮らしのほうが気楽で良かったと思ったこともありました。

 親離れ、子離れのことが書いてあります。
 えびすさんの体験と自分の体験が重なる部分もあるので、読んでいて共感します。
 昔は、新幹線は東京・大阪間だけでした。九州からの東京方面への移動は寝台列車でした。自分も何度も寝台車に乗りました。今は新幹線も飛行機も通じて本数も多くて、ほんとうに便利になりました。

 貧乏人のごちそうは『カレーライス』だった。
 娯楽は『映画』だった。
 昔は、地方に住むこどもは義務教育が終わると就職していた。
 えびすさんが主演されたという『任侠野郎(にんきょうやろう)』を調べたら、動画配信サービスで観ることができることがわかったので、近いうちに観てみます。出演者の人たちが豪華でびっくりしました。
 
 後半部はまじめな内容です。本人が心をこめて文章をつくっていることが伝わってきます。
 地方出身者の苦労が書いてあります。昔は交通が不便だったので、都会と田舎の間を簡単に行き来はできませんでした。
 若い頃は、映画監督を目指してシナリオ教室に通ったことがあるそうです。
 そのうち漫画家をめざした。ヘタウマというジャンルで売れた。絵はへただが、マンガを描くことは好きだった。

 熱湯風呂のことが書いてあります。
 お湯は熱かったそうです。
 ただし、ギャラは、サラリーマンの1か月分の給料ぐらいあったそうです。
 
 自身が『レビー小体型認知症とアルツハイマー型認知症』の合併症で、軽度の認知症があることについてのお話があります。
 奥さんの睡眠時間を確保するためにショートステイを利用しているそうです。(宿泊をともなう短期施設入所)最初は1か月間利用したそうです。相手(配偶者)に悪いと思わずに割り切って利用する方がお互いの健康のためにいい。介護は、周囲から見られて、いい人でいようという感情にしばられると悩みます。介護対応では、親孝行とか夫婦仲良しな、いい人と思われなくていい。
 えびすさんは、病気の発見につながったテレビ番組で司会をしている東野幸治さんを別の本で「東尾さん、東尾さん」と呼び続けます。やはり認知症があるのでしょう。えびすさん本人はこちらの本で東野幸治さんにたいへん感謝されています。
 ご本人いわく『いろんなことを少しずつ忘れていく(状態にある)』そうです。
 ご本人の記憶が消えてもご本人の記録が書いてある『本』は残ります。

 えびすさんの出身地は長崎県ですが、生まれは熊本県天草下島(あまくさしもじま)にある牛深(うしぶか)というところだと説明されています。わたしも幼児のときに一時的に牛深にいたことがあります。海や島がきれいなところでした。ブルーの海に浮かぶ船とか、美しい橋の思い出が脳みその奥に残っています。先日、90歳近くになった実母と会話をしたのですが、実母がわたしに、牛深には昔炭鉱があったと思い出話をしてくれました。昭和30年代当時は、天草下島(あまくさしもじま)には、いくつかの炭鉱があったそうです。そんなことからも自分はえびすさんに共感を覚えるのです。

(その後 邦画『任侠野郎(にんきょうやろう)』をテレビの動画配信サービスで観ました。2016年(平成28年)作品1時間8分)
 意外と言っては失礼ですが、なかなか良かった。
 俳優陣です。柳楽優弥(やぎらゆうや)、トリンドル玲奈(とりんどるれいな)、橋本マナミ、北原里英、千鳥の大吾、イジリー岡田、EXILE橘ケンチ、佐藤二朗ほか。
 タイトルからして反社会的勢力(暴力団)のお話なのですが、演者の演技を観ているとやくざには思えません。始めのうちはコメディだろうかと思いながら観ていました。主演がえびすさんで、えびすさんの仕事はクレープ焼きだし、ヤンキー少年ふたりはやせっぽちで非力な体格で、ほかの人も強そうに見えるけれどよく見るとケンカしたら弱そうな人が多い。
 
 ストーリーの骨格はありますが、中味はありません。娯楽映画です。
 スーパー銭湯建設の利権争いです。組同士の利益の取り合いです。
 娘の父親を殺した男とその娘の話でもあります。(映画の途中では秘密事項とされていますが、娘は事実を知っていると自分は判断しました。そのとおりでした)

 昔の邦画を思い出します。
 最近ふと思い出したのですが、昭和30年代から40年代のころ、身近な場所に映画館が複数ありました。自分たちが住んでいる長屋の集落のなかにも映画館がありました。
 中学生のころ『しなの川』という映画で、由美かおるさんが、すっぽんぽんの裸の後姿になった映画ポスターが、映画館や集落の長屋の壁などに掲示してあった記憶です。ほかに、日活ロマンポルノ映画のエロいポスターも堂々とはってありました。それでもだれもなんとも思っていませんでした。映画を観るのに年齢規制というものはなかったと思いますが、さすがに中学生では入れない映画でした。近所の人からも映画館の入口から中学生が入るところを見られてしまいます。この『任侠野郎』もその当時の雰囲気を感じる映画です。
 
 映画の観客に対する売り部分として、
 ①えびすさん起用の意外性。えびすさんは以外に演技がじょうずです。なめらかなセリフの言い回しです。うまい。顔はえびすさんじゃないみたいに極道の表情を化粧でつくっています。大声をあげたりするのではなく、静かな怒りをつくり出しています。あとは、ちゃっかりボートレースの宣伝も出てきます。
 ②若い女性たちが男たちといちゃいちゃするエッチシーン。風俗嬢とか、愛人とか。
 ③佐藤二朗さんの好演技。

 しっかり観ていると『生きろ!』というメッセージがあります。

 良かったセリフとして、
 『やめろよ! ヤクザにプライドもクソもねえ。あるのは仁義だけだ。ムダ死にするな!』
  仁義(じんぎ):親分、子分の関係において、上の者の命令には絶対服従する。
 『来るな、死ぬぞ』
 『頼むぜ あいぼー(相棒)』
 『こどもが喜ぶ顔が見たいんです』

 三味線と和太鼓のバックグランドミュージックが闘争シーンにぴったり合っていました。かっこいい。おじさんだけど。
 映画出演はいい思い出になったことでしょう。
 けっこうおもしろかった。
 静かな恐怖を狙っています。
 ラストシーンでは、えびすさんが、なんだかゾンビみたいになっちゃいました。

 えびすさんが歌っています。
 長崎で、少年合唱団に入っていたそうです。上手な歌声です。
 あんなふうだけれど、基礎的には、ほんとうは、才能と実力のある人だということがわかります。

(さらに、その後のこと)
 2022年10月18日火曜日夜から、また太川陽介さんとえびすよしかずさんの路線バス乗り継ぎ人情旅の再放送がBSテレ東で放映されることを知りました。2007年(平成19年)10月に放送した初回の中島史恵さんゲスト編は見たことがないので楽しみです。神奈川県横浜駅から富山県氷見駅(ひみえき)まで三泊四日で路線バスを乗り継いで成功しています。テレ東さんありがとう。  

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2022年10月14日

ほしじいたけ ほしばあたけ 石川基子

ほしじいたけ ほしばあたけ 石川基子 講談社

 おもしろかった。いい絵本です。
 今年読んで良かった一冊です。
 意外性がありました。

(1回目の本読み)
 文章は読まずに、目で絵だけを追いかけて、内容を推理しながら読みます。
 しわしわの老齢しいたけです。
 おじいさんもおばあさんもかなりのお年寄りに見えます。
 うーむ。80歳はとっくに過ぎているような年齢に見えるしいたけの老齢者です。

 最初のページは、のどかな雰囲気です。
 しいたけふたりのシワばかりが目に入ってきます。

 次のページは、若いキノコたちの絵です。
 暴れているようにも見えます。
 乱暴な不良にも見えます。
 なまけもののようにも見えます。(事実は、違っていました。2回目の本読みで確認です)

 お年寄りふたりのしいたけをまんなかに置いて、みんなで話し合いをしているような絵です。
 
 しいたけおじいさんが、山へ柴刈り(しばかり。たぎきにする小枝を集める)に来ています。
 桃太郎の民話を思い出しました。おじいさんは、しばかりに。おばあさんは、川へせんたくにです。
 
 崖(がけ)のふちに若いキノコがいます。
 エノキじゃなく、シメジじゃなく、なんだったっけ(キノコの名前が出てきません)
 絵を見ると、崖の下のほうに何かが落ちているようです。

 おじいさんしいたけが、崖からジャーンプして、下へ飛び降りました。
 崖の下でけがをしている赤キノコを救出しに来たのか。
 おじいさんしいたけが、わかい赤キノコをおんぶします(無理でしょ)。
 若い人が年寄りをおんぶするのが普通ですから反対です。
 ふたりは、崖を登ることができません。

 ページをめくりました。
 おもしろーい。
 すばらしい!
 いいなあ、この絵本。
 今度会う、ちびっこにもっていこう!(この部分を書いたあと、この絵本を親戚のちびっこにプレゼントしました)

 いい絵本でした。

(2回目の本読み)
 しいたけの絵が、お菓子『きのこの山』のチョコレート菓子のように見えないこともない。
 絵本では、この場所は『ほだぎのさと』と記されています。
 ほだぎ:しいたけを栽培するときに種菌(たねきん)を付ける原木。シイ、クリ、クヌギなど。

 ふたりが好きなことは『ひなたぼっこ』だそうです。
 このページを見ていたら、自分の母方ひいおばあさんを思い出しました。
 94歳で亡くなりました。
 庭に置いた椅子の上で、ひなたぼっこをしている姿のままで、夕方になって、ごはんだよと呼んでも返事がないので、見に行ったら眠るように亡くなっていました。
 自分は中学一年生でした。そのように自分も逝きたい(いきたい)。あやかりたい。

 1回目の本読みではわからなかったきのこの種類がわかりました。
 『タマゴタケ』『オオワライタケ』『ホウキタケ』『ヌメリイグチ』『キヌガサタケ』初めて聞く名前ばかりです。

 ちびっこには、ちょっとむずかしいことばづかいもありますが、理解できるだろうか。まあ、できなくてもいいか。『きんるいは みな きょうだい……』とあります。

 1回目の本読みのときとは、だいぶ、雰囲気が違う内容でした。

 ほしじいたけは、乾燥している自分の体が好きみたいです。
 乾燥するために薪(たきぎ)を燃やして、自分の体を乾かすのです。
 
 おにごっこをしていたら、タマゴダケが、崖の下に落ちてしまったそうです。(そうだったのか)
 
 なるほど、1回目の本読みの時は、ほしじいたけが、崖を転落するようにジャーンプして飛び降りたと思っていたら、まったく違っていました。反対です。しいたけの頭にある広い帽子の部分(傘の部分)をパラシュートみたいにして、ふわーっと降下して行ったのです。体が乾燥していて軽いから、けがなく、安全に降下できたのです。(なるほど)

 どうやって崖をのぼったのか。
 ここに書くのはやめておきます。
 買うか、借りて、読んでください。
 おもしろいですよー
 
 方言がいい。(ほうげん。地方の言葉のなまり。特徴あるイントネーションとか、アクセントとか)
 『さあっ、わしに つかまりんさいっ。』四国の方言だろうか。
 つかまりんさいは、広島弁ぽい。岡山、山口、島根でも使われていそうです。

 ばさまとの夫婦のきずなは強い。
 がんばれじさま!
 こういう夫婦でありたい。
 ばさまが若かったころのニックネームが『かいりきおたけ』だそうです。Goodです。

 いいね!です。
 お水の力はすばらしい。


(追記:2023年8月)
 うちに泊まりに来た親族の小学校低学年のちびっこたちにこの絵本を読んであげました。
 わたしが期待したほどはうけませんでした。
 なぜだろうかと考えました。
 ちびっこたちは、ほししいたけを水につけると水分を含んで、しいたけが元気になることを知りませんでした。ざんねん。  

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2022年10月13日

たろうのおでかけ 村山桂子・さく 堀内誠一・え

たろうのおでかけ 村山桂子・さく 堀内誠一・え 福音館

 1966年(昭和41年)の絵本です。
 昔をなつかしむ読書です。
 たろうくん、5さいぐらいが、まみちゃんのたんじょうびいわいにいきます。
 たろうくんといっしょにいくのが、つぎのメンバーです。
 いぬの、ちろー
 ねこの、みーや
 あひるの、があこ
 にわとりの、こっこ
 どうぶつは、ちびっこの友だち、仲間です。

 まみちゃんへのたんじょうびプレゼントは、すみれの鉢植えとアイスクリームです。

 時代背景は、昭和30年代後半でしょう。
 いなかでは、テレビはまだ各家庭に普及していませんでした。
 加入電話があるうちも、それほど多くはなかった。
 令和の今と比較すると、こどもをとりまく環境は、ずいぶん違います。

 個人商店が並ぶ商店街があります。
 パン屋、くだもの屋、魚屋。
 たばこ屋は、昔はたくさんありましたが、最近は見かけません。

 道を走る「おーとさんりん」が出てきました。
 タイヤが3本ある車です。前に1本、後ろに2本。回転するときにひっくりかえりやすいと聞いたことがあります。
 今は見かけません。

 人と人との気持ちの距離が近い時代でした。
 たろうが歩いていると、おとなたちが声をかけてきます。
 
 消防署とガソリンスタンドが出てきました。
 絵本に描いてあるガソリンスタンドは、MobilとESSOです。ガソリンスタンドは合併が進みました。いまはどこもたいていENEOS(エネオス)です。

 信号機が出てきました。
 昔は、信号機の数は少なかった。
 自家用車が少なかった。
 たろうくんは、信号の色が黄色で交差点を渡ろうとしたので、警察官に止められました。
 わたしも7歳のときに、いなかから都会に引っ越して、信号機というものを知らずに、ひとりで交差点を渡ろうとして、婦人警官につかまって、自宅のアパートまで連れていかれて、母親が婦人警官に指導を受けたことがあります。
 たしか去年の今頃、もう90歳近くなった母親にそんな話をしたことがありますが、母親は、もうそこに住んでいたことすら覚えていませんでした。
 
 この絵本は、お年寄りが読むとなつかしい気持ちにひたれる絵本です。

 たろうくんは、まみちゃんへのたんじょうびプレゼントにアイスクリームをもっています。
 いそがないと、アイスクリームがとけてしまいます。
 されど、この絵本は『交通安全啓発絵本』の側面をもっています。
 アイスクリームがとけることよりも、たろうの命のほうがだいじです。
 アイスクリームは、とけてもいいのです。
 そもそも、たろうのおかあさんは、なぜ、たろうにとけるアイスクリームをもたせたのだろう。
 読み進むたびに疑問が大きくなる絵本です。

 郵便屋さんが自転車で配達をしています。
 いまどきは、電動バイクで静かな動力音を流しながら、配達員さんは、郵便の配達をされています。
 出川哲朗さんの充電バイクの旅『充電させてもらえませんか?』を思い出しました。スイカヘルメットです。
 それから、昔、長嶋一茂さんが主役をした『ポストマン』という自転車で郵便配達をすることにこだわる郵便局配達職員さんの映画を思い出しました。長嶋一茂さんは、がんこな郵便配達員さんでした。

 絵本の絵には、馬を乗せたトラックが描いてあります。
 九州の熊本県とか宮崎県あたりに行くと、和牛をのせたトラックを見かけます。
 馬だと、今は、競馬馬の移送ぐらいしか思いつきません。

 市街地を抜けると、はらっぱです。
 思い出すと、昔は、こどもが安全に遊べる空き地や原っぱがいっぱいありました。
 植物や虫がたくさんいました。
 広がっていた原野は宅地開発されて、道路や店舗、住宅地に変わりました。

 原っぱまで来るまでは、おとなたちから、あれだめ、これだめと言われ続けた、登場人物のたろうです。
 原っぱは、車が来ないので安全です。
 そうか、こどもがのびのび移動できた時代がありました。
 ページの右奥で、まみちゃんが両手をふって、出迎えてくれています。
 この絵本には、60年ぐらい前の日本の風景があります。  

Posted by 熊太郎 at 07:28Comments(0)TrackBack(0)読書感想文

2022年10月12日

絵本のプレゼント

絵本のプレゼント

 この秋に用事があって、夫婦で九州の親せきに会いに行きます。(この部分の文章は、2022年8月につくりました)
 ちびっこたちがいるので、おみやげに絵本とバナナをもっていくつもりです。
 どんな絵本がいいか考えています。

(5歳の女の子と3歳の女の子にあげたい絵本)
 だんまりこおろぎ エリック=カール 偕成社(最終ページをめくるとこおろぎの鳴き声が流れてきます)
 ね~ね~(雑誌です。2022年4・5月号 主婦と生活社 このうち(家)のちびっこがファンである「すみっコぐらし」の記事が満載です)
 いちにち ひろたあきら KADOKAWA
 キャベツくん 長新太(ちょう・しんた) 文研出版
 ほしじいたけ ほしばあたけ 石川基子 講談社
 
(4歳の女の子と2歳の男の子)
 だんまりこおろぎ
 なまえのないねこ 竹下文子・文 町田尚子・絵 小峰書店
 おっぱい おっぱい わかやま けん 童心社
 ゴムあたまポンたろう 長新太(ちょう・しんた) 童心社

 さてどうなりますか。

(その後 実際に絵本をちびっこたちに渡したときのこと 以下の部分の文章は、2022年10月につくりました)

『いちにち ひろたあきら KADOKAWA』
 5歳の女の子が、最近、ひらがなを読めるようになったらしく、本の内容というよりも、文章のひらがなを、ひと文字ずつ大きな声で読みあげていました。ひらがなを読めることが嬉しく、自慢のようすでした。

『なまえのないねこ』
 4歳の女の子が、ねこの絵を熱心にながめていました。文章で書かれた物語部分よりも、ねこの顔の表情に強い興味をもっていました。

『おっぱい おっぱい』
 2歳の男の子のためにプレゼントしたつもりだったのですが、4歳の女の子が、動物たちの親子のようすが描かれた絵を一生懸命に見ていました。

 バナナをもっていくつもりでしたが、スーパーマーケットで、ブドウの巨峰を手に入れて、それぞれひと房(ふさ)ずつあげました。ちびっこは、おいしい食べ物が大好物です。  

Posted by 熊太郎 at 09:57Comments(0)TrackBack(0)熊太郎の語り

2022年10月11日

夕日は沈み 朝日は昇る 撮影地 福岡県内

夕日は沈み 朝日は昇る 撮影地 福岡県内 2022年10月

 用事があって九州まで夫婦で行ってきました。

 夕映えがきれいでした。遠賀川(おんががわ。下流に向かっての右岸道路を走る車の中から撮影しました。ちょっと車の中からの反射があります)沿いの光景です。



 紅色(くれないいろ)の空のショーが始まりました。












 次の写真は、翌朝の東方向です。日の出です。この地域は、朝もやが出ることが自然の特徴です。地域全体を囲む(かこむ)山の中腹が白くかすんでいます。




 さきほどの朝日が照らす西側方向です。山並みの向こうが福岡市方向です。




 この日は、お墓参りをしたあと『伊藤伝右衛門邸(いとう・でんえもん邸)』を見学しました。大きなお屋敷でした。前回見学したのは、2015年10月で、そのときは、次の予定があったので、かけあしでのあわてた見学でした。今回は、ゆっくり見学できました。
 見学者は、自分たちと同じような年配の夫婦をちらほら見かけました。前回見学したときは、NHKの朝ドラが放映されたころだったので、見学者がたくさんおられました。
 伊藤伝右衛門:1861年(江戸時代)-1947年(昭和22年)86歳没。炭鉱事業経営の実業家。2番目の妻が、柳原樺子(やなぎはら・あきこ。華族(貴族階級)。婚姻期間1911年(明治44年)-1921年(大正10年)歌人。筆名:柳原白蓮(やなぎはら・びゃくれん))
 柳原白蓮:1885年(明治18年)-1967年(昭和42年)81歳没。26歳の時に50歳の伊藤伝衛門と結婚した。1921年(大正10年)白蓮事件。柳原白蓮は、駆け落ちをした。
 花子とアン:2014年上半期NHK朝ドラ。「赤毛のアン」の翻訳者村岡花子の半生。村岡花子の大親友が、柳原白蓮。












(新幹線)
 博多行きは、岡山駅で降りる人が多かった。
 広島駅で大部分の人たちが降りて行って、自分たち夫婦のまわりは、前も後ろも横も空席だらけで、新幹線は空気を運んでいるような感じでした。コロナ禍の影響があるのかもしれません。
 岡山駅を過ぎてからの九州方面への景色では、紅色の(くれないいろの)ヒガンバナの群生を多く見ました。

 旅をしながら、地方の経済は冷えているという印象を受けました。
 高齢化が進み過疎化著しい田舎と人口密集地の都市部と、両極端な状況があります。
 お店や車内にお客さんがいないのに、その場にいて働くという、お金のためと割り切ればいいのでしょうが、働く動機付けがむずかしいシーンもありました。
 地方も都市部も、どちらも暮らしにくさがあるように感じられました。
 バランス(平均的な平衡感覚)が求められます。
 
 博多駅からの帰路では、日本で生活しているような外国人乗客が多かった。神戸駅と京都駅で乗り降りする人たちが多かった。

 博多駅近くの街は、人が多く、案内表示も雑多で大量で、かえって地理方向がわかりにくかった。
 ちょっと疲れた旅でした。  

Posted by 熊太郎 at 11:05Comments(0)TrackBack(0)福岡県

2022年10月10日

はっぴいさん 荒井良二

はっぴいさん 荒井良二 偕成社

 こどもさん向けの絵本です。
 はっぴい=HAPPY=幸せ ということでしょうと思い浮かべながら読み始めます。

 黄色の下地に2羽の白鳩とチョウチョと葉っぱがある絵の表紙をめくります。
 『なんだこの落書きは?』小学生が描いたスケッチのようです。
 銀色の下地に鉛筆書きの跡です。

 お人形さんのような人が、左斜め上から、右斜め下方向へ歩いていきます。
 緑色のとんがり帽子をかぶっています。
 背中のリュックはオレンジ色です。
 
 ページをめくります。こんどは、女の人が登場してきました。
 女の人は『わたし』さんです。
 右手に持っている手提げ袋はオレンジ色です。

 男の人が『はっぴいさん』かと思っていたら違いました。
 男の人が『はっぴいさん』に会いに行くそうです。
 女の人も『はっぴいさん』に会いに行くそうです。

 はっぴいさんは、山の上にいる。
 石の上に時々いる。
 はっぴいさんは、願い事をきいてくれる。
 まるで、、神さまか仏さまのようです。

 男の人は『ぼく』だそうです。
 のろのろしている性格だそうです。

 路線バスは右側通行で、バス車内の運転席は左側にあるから、ここは外国でしょう。
 日本ではありません。
 
 人が、バスを降りて歩いてきました。
 バスを降りて来た女の人は『わたし』です。
 『わたし』が『ぼく』に近づいて来ました。

 『わたし』と『ぼく』のふたりは、お互いに離れて、はっぴいさんに会うために、山を登り始めました。
 女子の『わたし』は、のろのろじゃない。わたしは、きびきび動くそうです。
 だけど『わたし』は、あわてんぼさんだそうです。
 ふたりの『ねがい』とは、なんだろう。
 
 ふたりが登った山の上には、大きな四角い石が横たわっています。
 以前、わたしが、奈良の明日香村(あすかむら)へ行ったときに見た『石舞台(いしぶたい)』に似ています。蘇我馬子(そがのうまこ。大昔の豪族(ごうぞく。お金持ち一族のボス)の古墳らしい。(お墓)
 
 のろのろのかたつむり。
 ぴょんぴょん移動するうさぎ。

 どういうわけか、ハトとリス。

 文章は「歌」のようです。
 一定のリズムがあります。

 「オチ」はどうなるのだろう。
 オチ:印象的な最後。

 自分にないものを相手に求めて助け合う。
 そんなお話です。
 黄色い太い輪がまぶしい。
 太陽だろうか。
 太陽でした。

 恋愛とか結婚とか。

 そうか『大きな黄色い太陽』が、はっぴいさんなんだ。
 
 淡々と『時(とき)』は流れていきます。
 人生の営みがあります。
 
 2003年(平成15年))の作品です。

 ロードムービーのようでした。
 登場する人物は、旅をしながら人間的に成長していきます。
 自然に包まれて、男と女がいて、恋愛とか愛情があります。
 心優しいお話でした。

(その後)
 この絵本についてほかの人の感想を読みましたが、絵本の最初のほうに戦車の絵があり、反戦とか平和を願う意味がこめられている絵本という趣旨があるようです。ただ、戦争反対、平和の希望という強い主張は表には出てきません。
 自分は、ラブストーリーだと思って読みました。
 作品は作者の手を離れた瞬間に、読み手のものになります。
 この絵本の絵はへたくそな絵で、そのことをどう受けとめるかも読み手しだいです。  

Posted by 熊太郎 at 06:20Comments(0)TrackBack(0)読書感想文