ルラルさんのだいくしごと いとうひろし ポプラ社 2018年課題図書

 色合いとして、オレンジ色と黄緑色の対比が美しい。
 最初、ルラルさんの文字が「ハラルさん」に見えて、読みながら、だいぶ長い間、ハラルさんだと勘違いしました。
 ルラルさんは、日本人のようでもあるし、外国人のようでもある。30代にも見えるし、もっと年配にも見えますが、おそらく作者と同年齢だろうから、50代ぐらいでしょう。

 描いてある大工道具は、かなづち、スパナ、曲がり尺、きり、のこぎり、かんな、ビス、やっとこ、ドライバー、くぎ抜き、のみ、なんとか全部の道具を思い出しました。
大工仕事をするのは、中学2年生技術・家庭科の授業で自家製椅子を作って以来ありません。

 物語は、「作成」からではなく、「修理」から始まります。絵を見ると窓の修理をしています。ルラルさんは、プロの大工ではないと説明があります。

 今回は雨漏りの修理です。
 家が雨漏りするとは、最近は聞かなくなりました。よほど、強烈な台風の来襲があったあとぐらいでしょう。
 昔はよく雨漏りというのはありました。今は建築技術が発達して、大丈夫なのでしょう。

 雨漏りしているのは、2階建ての家ではなく、平屋です。ルラルさんははしごをかけて、そこを登って屋根の上ですが、そのはしごが、はずれるのです。はしごがなにかのはずみで倒れたとしか思えません。
 ルラルおじさんは、屋根の修理が終わりましたが、はしごが、地べたに倒れているので、屋根から降りることができません。
 
 そこへ助けが来てくれましたが、お気楽なメンバーなので、すぐさまの助けにはなりません。
 ワニ、カメ、ネコ、ネズミ、犬、ブタ、カエル、右端は耳が長いからウサギだろうか。ウサギには見えない。後姿なので、わかりにくい。

 ひもやロープ、縄の電車ごっこは見たことがありますが、はしごの電車ごっこを見るのは初めてです。
 みんな、はしごの電車ごっこに夢中になって、森のほうへ行ってしまいました。ルラルおじさんはどうして彼らを呼び止めないの? まず自分をおろしてくれーって。おろしてから、みんなは遊びに行けばいいのに。

 ここからは意味が深くなります。
 世の中では、「時間はお金」だとかで、時間をむだにしてはいけないという教えがあります。でも、ほんとうはそうではありません。むだだと思える時間こそ、必要な時間なのです。むだな時間のなかに交流があります。心の交流です。

 ルラルおじさんは、屋根の上に寝そべって、流れる雲を見上げながら、動物のこどもたちが森から帰ってくるのを待ちます。人間には、休憩が必要です。ずーっと休みなしに働き続けると体や心が壊れて病気になったり、事件や、事故に巻き込まれたりします。

 ルラルおじさんは長い時間待ちます。こんなに長い時間、電車ごっこができるとも思えませんが、おじさんはこどもたちにためされているのかもしれません。ルラルオジサンがこどもたちに対して、怒るか怒らないかをためすのです。
 ルラルおじさんは怒りません。「ゆとり」とか「余裕」とか、きっとみんなは帰ってきて自分が屋根から降りられるようにしてくれるだろうという「信頼」があります。

 ルラルおじさんは屋根から無事に降りることができました。
屋根の修理がすみました。のんびりできた結果、心の修理もできたことでしょう。働き方改革の絵本でした。  

Posted by 熊太郎 at 20:01Comments(0)TrackBack(0)読書感想文