2018年02月06日

AX(アックス) 伊坂幸太郎

AX(アックス) 伊坂幸太郎 角川書店

 表の顔は文房店の営業社員、裏の顔は、「殺し屋」。殺し屋名は、「兜(かぶと)」、本名三宅さん、恐妻家、高校3年生の息子が克己。殺し依頼の仲介人がとある病院の医師。

「AXアックス」
 AXの意味がわからない。(調べました。斧、まさかり。昆虫かまきりの記述があります。)
 音に敏感です。足音、カップラーメンの包装をとく音
 最終的に行き着くのは、「魚肉ソーセージ」
 いくつもの手掛かりが文章に散らしてある。
 上手に話がつくってあります。
 空港と高校の教室風景は、通常、むすびつかない。むすびつかないものをむすびつける技術があります。

「BEE (蜂です。)」
 区役所(保健所部門)、アシナガバチ、スズメバチ
 想像の世界が続く。むろん、人殺しの想像の世界だ。
 素敵な言葉として、「宇宙から落ちてきた。」

「Crayon クレヨン」
 クレヨンしんちゃんが、頭にぱっと浮かぶ。
 気に入った表現として、「祈るような恰好」、「紫」、「仲良し家族を演じるというような表現」、「いつも親父ががまんする側」
 ここでも音が伏線として置かれる。

 短いけれど、味わいのある作品でした。

「EXIT イグズィット 出口」
 気に入った表現として、「数よりも質」、「必要なのは「信頼」」
 年寄り相手にどうかなあというシーンがあります。無理な設定か。心理描写は的を射ていますが、そのあとの広がりがありません。(ただ、閉塞感を出すために意図して広がりを止めています。)
 脳の科学ゲームのようでした。少し寂寥感(せきりょうかん。さびしく、わびしい)があります。

「FINE ファイン」
 精神病の人を指して、「表情が消え、呼吸するだけの人」 ここがいい。
 
 こどもは成人してもすべてのこどもが家を出ていくわけではない。

 246ページ、いかようにも物語をつくれるように構えてある。(実は、生きているのではないか。)

 死んでいても生きている状態をつくれるのが、ストーリーテラーの技量でもある。

 そして、「LOVE」 だ。

 秀逸でした。さすがです。
 本屋大賞候補作です。わたしの中では本作は大賞候補のひとつですが、たぶんだめでしょう。新人の育成が目的の賞のようですから、ほかの作品が選ばれるのでしょう。  

Posted by 熊太郎 at 18:38Comments(2)TrackBack(0)読書感想文

2018年02月04日

キラキラ共和国 小川糸

キラキラ共和国 小川糸 幻冬舎

 「ツバキ文具店」の続編です。代書屋(代わりにお手紙を書く仕事)守景鳩子(もりかげ)さん、夫ミツローさん、彼の連れ子QPちゃん(はるちゃん。はるな)がいます。
 先代というのが、鳩子さんの実母です。仲たがいがあります。鳩子には、親不幸をした負い目があります。

「ヨモギ団子」
 内容は「平和」です。
 ひとりものが家族になるということは、どういうことかを考える本です。
 家族メンバーのことを考えて生活することになるのが、ひとりものからの脱却です。
 きれいごとのようにも見えます。上品です。殺伐とした世界で働いている自分には合わない内容でした。

「イタリアンジェラート」
 カップル双方から代書の依頼を受けたという設定がおもしろい。ひとりの人間が、他人のふたりの手紙を書く。
 鎌倉では、ムカデが多いという話が楽しかった。
 いきなり来て、「お金貸して!」 も良かった。
 
 スマホやメールの時代に、紙にしたためた文章が受けるのだろうかという疑問をもちつつも読みに引き込まれます。
 酒も煙草もなくても人間は死なない。それらは、無駄遣いです。

「ムカデご飯」
 筆記用具が出てきます。イタリアのタイプライターとか、古くからあるメーカーの万年筆
 連れ子のQPちゃんの実母の日記が出てきます。
 日記をどうしたらいいのか。処分するのか。しないのか。
 品物も、シーン(場面。写真)も、心の中に残して消さない。)

調べたのは、「高浜虚子:1874年生まれ。85歳で没。俳人、小説家」

「蔵味噌」
 「禁煙です。やめてください」
 このセリフを聞きたかった。

 一生男性と交渉をもたず、川端康成氏に気持ちを捧げた元公務員女性が登場します。
 鳩子さんは、川端康成から、その女性にあてた手紙を書くのです。

 全編をつうじて、鎌倉の自然がいっぱいです。山野草、山、海、神社です。

 オーエスワンは、昨秋入院中だったわたしも勧められた飲料ですが、値段が高いので1本飲んだだけです。
 
 種明かしがあります。キラキラ共和国とはモリカゲファミリーなのです。

 登場する名言の趣旨として、「相手の不幸を望んでも自分は幸せにはなれない。」、「犯人への仕返しは、自分が幸せになること。」
 
 気になったのは、こどもさんであるQPちゃんの姿が刻銘に浮かび上がってこない。  

Posted by 熊太郎 at 09:50Comments(0)TrackBack(0)読書感想文

2018年02月02日

ギリシャ神話を知っていますか 阿刀田高

ギリシャ神話を知っていますか 阿刀田高 新潮文庫

 ギリシャ神話は、ほとんど知りません。トロイの木馬ぐらい。

 雰囲気を味わう本です。
 書いてあることは明瞭に理解できません。自分に下地がありません。
 一生、ギリシャへ行くこともないでしょう。

 女性の美貌、スタイルも含めて、それらが、政治を左右する。
 作者の個人記憶をからめて、演劇の話なんかがあるエッセイです。
 年代は昭和30年代と古い。
 コメディアンたちの様子も古い。
 タイムトラベルを体験する読書でした。  

Posted by 熊太郎 at 18:59Comments(0)TrackBack(0)読書感想文