2018年02月10日

たゆたえども沈まず 原田マハ

たゆたえども沈まず 原田マハ 幻冬舎

 画家ゴッホのお話です。

 1962年7月から始まります。
 1行目からいい文章です。すっきり、さわやかです。

 お正月頃テレビ番組で見た「松方コレクション」の話が出ます。

 林忠正という画商が登場します。
 かつて機械技師をしていたという、シキバというゴッホの研究者72歳が出ます。
 フィンセントというゴッホの研究者オランダ人が出ます。
(このへんのやりとりが最後に出てくると思っていましたが出てきませんでした。)

 時と舞台は、1890年1月のパリに飛びます。
 林忠正がゴッホの弟テオドルスにあてた手紙です。
 
 たゆたう:ものがゆらゆらゆれて定まらない。パリのこと。セーヌ川の氾濫に沈まない。苦境に屈しない。

 手紙が川に落ちてたゆたいながら流れていく。

 1886年1月 4年前パリ
 日本にいる林重吉はパリへ行きたい。
 若井・林商会、社長若井兼三郎、ふたり社長のようでもうひとりが信念の人林忠正
 林忠正の後輩が加納重吉(3歳年下。かのう・じゅうきち。まわりからは「シゲ」と呼ばれる。)ふたりは、1874年明治7年に出会う。加納重吉が18歳、林忠正が21歳。10年後ふたりは、パリで画商として一緒に働く。

 「印象派」がパリで、はなつまみものだったことはこの本で初めて知り、意外でした。

 葛飾北斎、安藤広重、浮世絵がパリで受ける。(絵が動いて見える。臨場感がある。)

 いいものは、自然に世に表れてくる。

(つづく)

 有名人の過去に関することが静かに淡々と記述されています。最近、はやりの作風に感じます。
 ゴッホとその弟テオ、ふたりと関わりになる日本人画商たちとの交流が佳境を迎えつつあります。歴史に埋もれていた事実を作者は発掘しています。
 
 クリスマスをノエルという。

 ジュリアン・タンギーの店:画材屋兼画商

 アルルってどこ? 調べました。フランス南部。地中海に面している。

(つづく)

 読み終えました。
 ラスト付近は、重たい。うーん。ついていけない。

 兄弟の関わりは以前、ひまわりというようなタイトルのどちらかといえば子どもさん向けの絵本で知りました。しかし、今回、ここまで、深かったことを初めて知りました。
 日本人画商との関わりがどこまで本当かはわかりませんが、そうであったなら、日本人として誇りです。

 生きるにも最後は「お金」がからんでくる。
 命を賭して、絵の具を塗り重ねて、作品を完成させる。

 ゴッホ自身の発言は少ない。意図的なものなのでしょうが、不足感があります。
 兄も弟も精神病質的なところがあり、弱い面がある。あのような激しい絵を描く人が意外です。

 タイトルと内容の関係を理解することはむずかしい。
 
 作者の語り部としての記述は秀逸です。

印象に残ったこととして、名ゼリフ「イギリスにはパリがない。」、「パリは花の都ではなく(絵画商売の)戦場」、「絵=新しい窓」、「第一の窓が日本美術、第二の窓が印象派、第三の窓が、ゴッホの作品」、「上品な地区ではないが、なにより光が入る明るい部屋がある」、「ほおっておいてくれ」、「訪った:おとなった。読めませんでした。」、「兄37歳、弟33歳」、「滔々と:とうとうと。同じく読めませんでした。」

ゴッホ兄弟と宮沢賢治氏が、30代、若くして亡くなったという点で重なりました。悲劇です。  

Posted by 熊太郎 at 09:00Comments(0)TrackBack(0)読書感想文