2017年07月17日

敵の名は、宮本武蔵 木下昌輝

敵の名は、宮本武蔵 木下昌輝(きのした・まさき) 角川書店

 短編7本です。宮本武蔵を彼に殺された側の人間から見た視点で書かれてあると本の帯に書かれています。

「有馬喜兵衛の童討ち」
 犠牲者は有馬喜兵衛27歳です。武蔵はまだ、こどもで、13歳ぐらいです。
 文章がうまい。読みやすく、わかりやすい。
 武蔵の父親が、宮本無二斎(みやもと・むにさい)。どういうわけか、彼の首にはキリシタンの十字架がかかっている。
 武蔵の幼名が、弁助(べんのすけ)。父子ともに剣豪の腕前です。
 調べた言葉として、「隻眼:せきがん。片目」

「クサリ鎌のシシド」
 犠牲者は、人買いによって連れてこられたインド人シシドです。鎖の付いた鎌が武器です。千春という女がからみます。
 こういう展開か。

「吉岡憲法の色」
 犠牲者は、吉岡憲法(よしおか・けんぽう)という人です。ただし、生かされます。染物業と剣術業のかけもちをしていましたが、いろいろあって、染物に専念されています。
 ここで、「宮本武蔵のじょう玄信(のじょうはるのぶ)」という名が出てきます。
 この章の内容は見事でした。

「皆伝の太刀」
 皆伝は、免許皆伝を指します。
 武蔵の人間としての心の成長がみられます。
 日本画描画がその成果です。
 気に入った表現として、「慌てて話の接ぎ穂を探す」
 武蔵の育ての父親が自らを「巌流小次郎」と名のることが不可解です。

ちょっと読んでいて、殺し合いが続くので、嫌になってきました。
このひとつ前の章で、「いずれ、剣の時代は終わる(他の武器にとってかわられる)」というような記述があるのですが、そのとおりです。

宮本武蔵:1587年-1645年

「巌流の剣」
 (佐々木)小次郎が登場しますが、佐々木ではありません。津田小次郎です。
 本位田外記(ほんいでん・げき)という人物の名前も登場します。
 人間関係が複雑になってきて、ちょっと読み飽きてきました。
 巌流島の決戦シーンが始まったのですが、これまで聞いていた内容とは違います。
 
「無二の十字架」
 無二は、武蔵の育ての親です。実親ではないと記事があります。
 宮本無二斎という人は、武蔵の育ての親なのですが、荒くれ者の剣豪として描かれているにもかかわらず、主君に対しては忠誠を誓っています。「主君には、犬のように忠僕たれ」とあります。そのへんが、現代人の感覚では理解しがたい。恩があるというようなこと、秩序を乱さないというようなことが書いてあった記憶です。身分の差は絶対ともあります。

 物語は20年ほど前の過去に戻ります。
 昔、親友だったものが、今は敵同士です。
 武蔵の人間らしい優しさが出てきますが、周囲には、剣に情が混じりつつあると否定的に受け取られます。

 調べた言葉として、「襁褓:(あかちゃんの)おしめ」、「裂帛:れっぱく。鋭い声」

 そういうことかと、がてんのいく章です。
 章の最終ページ、263ページ、何と言っていいのかわかりません。

「武蔵の絵」
 最後は、さわやかでした。  

Posted by 熊太郎 at 18:57Comments(0)TrackBack(0)読書感想文

2017年07月16日

BUTTERバター 柚木麻子

BUTTERバター 柚木麻子(ゆづき・あさこ) 新潮社

料理を素材にした小説を書かれる作家さんです。
これまでに、ランチのアッコちゃんシリーズのような明るい作品と、ナイルパーチの女子会のような犯罪ねちこい作品を読みました。
個性なので、これからもこの路線でいかれるのでしょう。
 
 町田里佳33歳、大手出版社男性週刊誌の女性記者が、結婚詐欺・連続殺人事件犯人の梶井真奈子35歳(太っている。美食家。彼女が許せないものとして、(フェミニスト:女性差別の解消を唱える人それから、マーガリン))を拘留中から取材します。

新聞の社会面から拾ったとみられるネタです。「バター不足」、「リベンジポルノ」、「援助交際」、「待機児童」

物語を支えているものとして、「<ちびくろ・さんぼ>さんぼが登った木の下でぐるぐる回っていた虎たちがバターになる」
さんぼが、連続殺人犯人梶井真奈子で、殺された男たちが虎。虎が自滅してバターになって、さんぼがそれを食べる。

 家族・親族・友人構成として、町田里佳の父親は離婚している。(さらに死去している。里佳は父親に対する何かをもっている)

 犠牲者として、
 1番目が、本松忠信73歳睡眠薬過剰摂取。資産家
 2番目が、新見久範ひさのり。浴室で溺死。68歳。
 3番目が、山村時夫42歳。電車にはねられ死亡。
 被害者たちの食卓は、容疑者梶井真奈子が用意したおいしい手料理か、ひとりぼっちのわびしい食事しかなかった。
 犯罪の物的証拠はない。

 バターの前ふりが続きます。

 作品は哲学的です。「なぜ生きるのか」、「生きているのに死んでいる状態」
 また、これまでの日本人女性像を突き詰めています。「我慢や努力や貞操を求められて、同時に、女らしさや、柔らかさを求められてきた。男性への世話も求められた。」

 作品中は、食べ物の話が続きます。ときに強引なこじつけに感ずるときもありますが、内容は、この作家さんの持ち味です。
 お料理好きの結婚詐欺師が、収監中の梶井真奈子ですが、殺人犯人の彼女は、本当は無罪の可能性があります。冤罪を受け入れているのか。
 田舎から、都会へ出てきた素朴な少女の男女関係があります。中年男性たちに「もの」として見られる。中年男性にもてあそばれた少女が逆転に転ずる。

 タバコを讃えるような記述は、ようやく禁煙できて数年が経過した者としては読むのはつらい。

 ダイエットとか、やせるとか、それは、女性らしくない。正しくない。男性はぽちゃぽちゃ体型が好きという主張があります。

 梶井真奈子は強烈です。「(友達はいらない。自分の)崇拝者だけがほしい」

 悪人「梶井真奈子」は、女性記者「町田里佳」の姿を借りて、犯罪を再現しようとしているかのように読めます。どろどろとしている。まさにバターの見た目とか触感です。

「(孤独だから)長生きしてもしかたがない」

 女性が読む小説です。

 同性愛(女性同士)的な雰囲気が作品の裏にあります。小児性愛者とか、男に父性を求める娘とか、暗い面もあります。なかなか苦しい生き方です。屈折した性癖があります。

 濃密な表現でした。力作です。
 読んでいて、どこで、休憩をとっていいのか、固まりが長く、その点では、読みづらかった。
 書き込みすぎということもあるかもしれません。

 あちらこちらに「孤独」が散りばめられています。
 手料理で、人が救われたり、死んだり、生きたりします。
 生きている状態、生きていても死んでいる状態があります。

 異性から選ばれる待つ女性。自らは選ぼうとはしない女性。
 メスだけの世界。
 女性のつかみどころのない態度、圧力のあるどう猛さ、主張がコロコロ変わる不気味さ、耐えられない。

 主人公は、からまわり、ふりまわされ、自滅方向への流れをたどりますが、やがて光明を見つけます。家族や友人を大切にして、孤独から脱する。なんとしても自分の居場所を探す。  

Posted by 熊太郎 at 18:31Comments(0)TrackBack(0)読書感想文

2017年07月12日

ディズニーシー

ディズニーシー

初めて行ってきました。
以下、勝手な感想です。

静かだけど、混んでいる。
ディズニーランドとは違う
ディズニーランドは、乳幼児から中学生向け
ディズニーシーは、カップルとかペアルック(同性同士も含めて)が多い。
昼ごはんに長時間並ばなければならない。




地球儀がUSJみたい。




シンボルの山
立体的で上手にできている。
いつも、楽しむ立場よりも、経営する立場でものを考えるから損な性格だと自分ながらに思う。




この丸いボートは、自動で動く。
水が乗船している人たちの頭髪に飛んできたりして、見ていておもしろかった
真夏向きのアトラクションです。




行進するパレードというのが、無いようで、大きな船が来て、船上で人形たちが踊るのが、その代わりのようです。

自分の好みは、ディズニーランドです。
ぼんやり座って、ぼーっとできるのがいい。季節にもよるのでしょうが。  

Posted by 熊太郎 at 19:40Comments(0)TrackBack(0)千葉県

2017年07月10日

顔ニモマケズ 水野敬也

顔ニモマケズ 水野敬也 文響社

 病気で顔が変形している人たちです。
 作者自身も以前は自分がむくんでいると気にしていたということが、この本の製作の動機となっています。
 本にある写真の顔を見ると思わず目をそむけます。本人の責任ではないにしろ、身を引く思いです。
 
 見た目で中身まで決めつけることが多いのは日本人特有の思考だそうです。美人や可愛いから、あるいは、イケメンだから、人間性もいいとは限らないことはわかります。逆に、顔だちが良くないと、誤解することもあります。

 写真を見て、内出血のようにして、顔や腕に跡がある人を見たことはありますが、こういう顔をしている人がいるということは、初めて知りました。驚きました。

 みなさん、こどもの頃は、イジメにあっています。その後、ひきこもりの時期をすごした人もいます。悩むと思います。死んでしまいたいとも思うでしょう。
 みなさん、そういった時期を克服されています。尊い言葉が並んでいました。変顔ではなくても、救われる思いをする人も多いでしょう。

 一見男性かと見えた人が、女性だったりもしました。いっそう、人間の強さが伝わってきました。

 世界は広い。自分の存在を認めてくれる人は意外にたくさんいる。そうやって、みなさん、広い世界へ自分の身を出していかれました。

 インタビューは、長時間に及んだと思いますが、本は、コンパクトに上手にまとめてあります。良書です。今年読んで良かった1冊になりました。

「折り合っていく」、「家のなかにいると意識が自分に向いてしまう」、「マラソンがストレス解消になる」、「からかわれてつらかった」、「(医者にとって)良い患者になるな」、「割り切る」  

Posted by 熊太郎 at 19:41Comments(0)TrackBack(0)読書感想文

2017年07月06日

やめるときも、すこやかなるときも 窪美澄

やめるときも、すこやかなるときも 窪美澄(くぼ・みすみ) 集英社

 ラブストーリーです。
 32歳未婚の広告代理店営業職本橋桜子は存在感の薄い女性で男性との縁がありません。そんな彼女が結婚したくなった相手が、同い年の家具職人須藤壱晴(すどう・いちはる)です。しかし、須藤にはなにかわけがあるらしく結婚という形態を望んでいません。さらに、彼には、12月になると声が出なくなるというメンタル的な病気があるようです。(17歳のときになにかがあった。記念日反応)62ページまで読みました。

(つづく)

 地味な恋愛ではあります。

 女性の心理描写が絶妙で、読んでいておもしろいし楽しい。姉妹の損得勘定心理のあたりとか、親子間のお金の負担の不公平感の部分が良かった。家族の息苦しさもうまく表現されています。

(つづく)

 昨日から読み始めて、一夜を越して、次の日の夕方に読み終えました。さわやかです。応援したくなる恋でした。

 声が出なくなる男性との恋は、障害者との恋を連想しました。

 冒頭付近、そのあと、もう1か所ぐらい、深酒で記憶が消えているという設定は、記憶が消えすぎです。

 アル中で、暴力をふるう男との暮らしはどん底です。

 思い出の上書きは苦しい。男子にも女子にも苦しい展開です。ただ、このパターンはあり得ます。

 島根県松江のイメージが悪くなるのではないかと途中心配しましたが、そういうことはありませんでした。純愛でした。

 過去を変えることはできない。未来のために「忘れる」。それから、亡き人に感謝する。
 
 気持ちの表現部分の記述が大量で、読みながら、人間って、こんなにたくさんのことを考えるものだろうかと疑問をもちました。

 読めなかった漢字などです。「髪の裾:すそ。ふちっこ」、「滾る:たぎる」、「トラウマ:フラッシュバック」、「宍道湖大橋:しんじこおおはし」

 良かった表現です。「作り笑顔」、「誰にも選ばれずに人生を終える」、「気持ちを立て直す」、「小動物が逃げ出すように…」、「おまえがつくるものは人を緊張させる」  

Posted by 熊太郎 at 08:35Comments(0)TrackBack(0)読書感想文

2017年07月02日

素敵な日本人(にっぽんじん) 東野圭吾

素敵な日本人(にっぽんじん) 東野圭吾 光文社

一編は、15分から20分で読める短編です。

「正月の決意」
 初もうででで、事件に巻き込まれた中年夫婦です。現実が本音でリアルに書いてあります。おもしろい。ハッピーエンドも良かった。読者の心理操作も成功しています。

「十年目のバレンタインデー」
 小説家である作者がモデルではないかと思わせるような殺人事件でした。

「今夜は一人で雛祭り」
 ひな人形の研究書でした。ちょっとわたしにはわかりにくかった。女性には受ける内容です。ひとり娘の結婚(奥さん病死)を迎えたやもめの父さんの心情です。孤独でわびしさもあります。

「君の瞳に乾杯」
 タイトルからは、想像できない内容で、意外性がありました。

「レンタルベビー」
 レンタルロボットベビーのお話でした。中学生の頃、受験勉強をしながら聴いていたショート・ショート星新一の世界です。すごいなあ。

「壊れた時計」
 アナログ腕時計は物語になりやすい。内容は、プロの推理作家の作品でした。

「サファイアの奇跡」
 想像の賜物(たまもの)です。

「クリスマスミステリ」
 非の打ちどころがないので何も言うことはありません。

「水晶の数珠」
 凝りすぎではなかろうか。


*タイトルがどうして「素敵な日本人」なのかはわかりません。  

Posted by 熊太郎 at 11:30Comments(0)TrackBack(0)読書感想文