2021年10月22日

ぼくときどきぶた 矢玉四郎

ぼくときどきぶた 矢玉四郎 岩崎書店

 主人公の小学三年生畠山則安くんのグループが、紙芝居をつくるお話です。
 作者のあとがきの部分の感想を先に書きます。
 『じめじめしたはなしや、ぼんやりとしたはなしでは、紙芝居にならないのだ』に続けて『いつのまにかおとなのよろこぶ「よい絵本」がふえてきた』そうじゃないんだという主張があります。
 おとなにほめられようとしない。自分たちが楽しめる話を紙芝居でつくろうという提案があります。そして、話は人生につながっていきます。自分は自分を主役にして、自分の人生を生きる。自分で自分の人生物語をつくるとあります。共感しました。
 1987年(昭和62年)が初版の児童書です。

 紙芝居のなかにいた魔王が現実世界に飛び出してきて、人間たちをぶたにするという魔法をかけてどたばた騒ぎです。ゴキブリがからみます。

 灯台が見えて、海が見えて、船が海に浮かんでいる。ふたりの男の子とひとりの女の子が、山の上から景色をながめている後姿があります。
 旅に来ているみたいな最初の挿絵(さしえ)です。

 畠山則安くん、中川くん、花村さんの三人で紙芝居をつくって発表会で披露します。
 「かみしばい ぶたのくに」です。
 なかなか複雑です。
 人間が簡単にぶたにされるわけではありません。
 最初は、ぶたが人間にされるのです。

 元井先生:剣道三段。いつもしないを振り回している。
 米田先生:女性。三人の児童のクラス担任
 教頭先生、校長先生
 
 自由自在な発想です。
 
 『きょうから、この学校はぶた学校です』

 話はどんどん大きくなっていきます。
 壮大なほら話です。
 
 「魔王」とは、独裁者なのか。
 社会にいるボス的存在の人物たちのことが頭に浮かびました。
 人々は魔王の魔法にかかっている。魔王の魔法は詐欺なのです。
 魔法から解放されなければなりません。

 不思議な感覚を残して終わります。
 魔王が紙芝居の中から出て来たのではなくて、三人のこどもたちが、紙芝居の中へ入って行ったのではなかろうかろうかという設定です。
 複合的に、うまくつくってあります。
 魔王は、アンパンマンに登場する「ばいきんまん」のようでもありました。  

Posted by 熊太郎 at 07:18Comments(0)TrackBack(0)読書感想文