2021年10月18日

あしたぶたの日ぶたじかん 矢玉四郎

あしたぶたの日ぶたじかん 矢玉四郎 岩崎書店

 はれぶたシリーズのうちの一冊です。
 
 今回は、小学三年生の畠山則安(はたけやま・のりやす)くんが壁新聞をつくって、町内の掲示板に張り出します。
 最初は、事実を広報しますが、そのうち、ほら話を掲載して、うその話が本当になっていくという流れです。

 最初に町内の掲示板に掲示したのが「ほんとの新聞」です。
 同級生児童たちのことを書きました。
 書かれた同級生が怒りました。
 ジャーナリスト(事実の報道をする人)は、記事にした相手から反撃があるから怖い仕事です。
 廃刊に追い込まれた香港の新聞社のことを思い出しました。
 フィリピンとロシアのジャーナリストが、ノーベル平和賞を受賞したことが最近報道されました。

 素材はけっこう重たいのですが、小学三年生向けぐらいの本で、文章は読みやすい。
 畠山則安くんは、今度は、「うそ新聞」を発表しました。『このしんぶんには、うそばかり、かいてあります』がおもしろい。
 ところが、彼が、新聞にうそを書くと、本当になってしまうのです。
 社会に貢献するうそを書いたほうがいい。

 55ページの絵がきれいです。
 60ページから61ページの見開きに広がる絵は豪快です。

 小さなブタが、水道の蛇口からたくさん出てきます。
 昔、まだ小さかったこどもたちを連れて、農業センターを見学に行ったときのことを思い出しました。ブタを見学したあと、大きなかぼちゃの上で記念写真を撮りました。いまでは、もうそのこどもたちも三十代になってしまいました。

 『ぶた時間のあとは、ぶたまつりだ』
 ほんとうにありそうな発想と設定です。
 
 畠山則安くんが次に出したのが『うそほんとしんぶん』です。『このしんぶんには、うそばかりかいてありますが、ほんとになります』はいい文章です。
 しんぶんを読んでいると、『あきやすみ』ができたとあります。1985年(昭和60年)にこの本ができたとき、小学校に『あきやすみ(秋休み)』はありませんでした。
 ところが、2021年(令和3年)の今、先日小学生の孫のことを娘と話していたら、小学校は、3学期制から2学期制に変わって、区切り目の10月初めに数日間の『あきやすみ(秋休み)』があると聞きました。
 ということは、この物語は、奇跡のように未来を予言して、畠山則安くんがしんぶんに書いたうそがほんとになったことになります。すごいなあ。

 神木からつくった掲示板を伏線にして、神木だから、不思議なことが起きるという設定で、オチがつくってあります。とても上手な物語づくりです。楽しい気分になれました。  

Posted by 熊太郎 at 07:15Comments(0)TrackBack(0)読書感想文