2021年10月01日

発達障害グレーゾーン 姫野桂

発達障害グレーゾーン 姫野桂(ひめの・けい 女性) 扶桑社新書

 まずは「はじめに」の部分を読んでの感想です。
 発達障害がある人は、いじめの対象になりやすそうです。いじめられる対象は、こどもとは限りません。おとなでも同じです。
 しかしながら、学力優秀な人も多い。
 ペーパーテストの成績がいい。マニュアルどおりのロボット的な対応ができる。一芸に秀でている。(ひいでている)などの優れた(すぐれた)能力がある部分もあります。
 この本を書いているご本人も発達障害だそうです。
 
 グレさん:言葉の第一印象は、不良仲間に入って「ぐれている」とか、半グレ集団とか、いいイメージはありません。この本での意味は、発達障害の症状として「グレーゾーン」にいる人だそうです。だれが、グレーゾーンの認定をするのだろう? 自己申告っぽい。

 昔IQ(知能指数)のことを調べて、職場の同僚と雑談した時に、標準が100で、80ぐらいが微妙だねとお互いに話をしたことがあります。たとえば、数値が小さいと、実直(正直でまじめ)に淡々と単純労務作業を処理してくれる期待感をもてるけれど、中途半端な数値だと、ずるいことをしたり、さぼったりする言動がありそうだというものでした。発達障害とIQの関連はないのだろうと考えつつ、遠い昔の出来事を思い出しながら文章を読んでいたら、IQのことは、74ページに少し出てきました。

 本にある「あとがき」の日付は2018年12月になっています。
 2021年9月に8刷でよく売れている本です。

(つづく)

 本書で紹介する「発達障害」の状態として、対人関係のコミュニケーションがうまくいかない、特定分野へのこだわりがあると解説があります。
 あわせて、マイルールをかたくなに守る。不注意、多動について説明があります。
 以前別の本で読んだことがありますが、本書でも発達障害をもつ有名人について触れています。トーマス・エジソン、スティーブン・スピルバーグ、スティーブ・ジョブズ、トム・クルーズなどのお名前が頭に浮かびます。
 生まれつき、計算、作図、読み書きがにがてなどの状態があるそうです。

 マルチタスクができない。(複数の作業を同時並行で進行させていく)
 片付けができない。
 仕事の進行プランを組めない。
 時間の管理ができない。
 雑談ができない。
 いろいろあるようです。たいへんです。
 努力をしても目標がかなわない。
 確率的には、身近にいるのが普通だそうです。
 昔、職場の運動クラブで、スポーツはできても仕事の進行管理はできない先輩を見たことがあります。運動中に活躍する姿を見て、周囲から仕事もできる人だろうと勘違いをされていました。

 グレーゾーンの人たちの集まりは、高齢者の「認知症カフェ」っぽい。
 20人から30人が参加されるというのは大きなグループです。
 
 少女漫画「ガラスの仮面」の主人公である北島マヤさんはなつかしい。二十代の頃、病気で三か月間ほど入院した時に、病室にあるベッドで時間つぶしに読みました。
 北島マヤさんは、発達障害だそうです。
 ほかにも本が紹介されていますのでこんど読んでみます。

 野球での名プレーヤーが、いい監督になれるわけでもないというようなことが書いてあります。
 
 なかなかむずかしい世界だという感覚をもちながら読んでいます。「甘え」を感じるのです。だれしも「うまくいかないもの」をかかえながら生きています。いろいろな苦悩のパターンがあります。
 言い過ぎかもしれませんが、自分の身を守るために、発達障害以外のことでも「なになにのふりをしている人」もいると思うのです。

 忘れ物をしてしまうとか、固有名詞をなかなか覚えることができないということは、各自の脳がもつ個性で、直らないと思います。
 周囲は責めるのではなく、受け入れて対応を考えます。
 人にはいいところもあれば、そうでないところもあります。仕事場では、お互いのいいところを組み合わせて、チームワークを形成します。

 精神科で受け取った薬をネット上で個人間売買するということは昔聞いたことがあります。いくらお金が欲しいとはいえ、薬がいらずに売却するということは、病気ではないということではなかろうか。購入するほうは、薬物中毒なのでしょう。覚醒効果がある薬があるらしい。
 脅迫行為もあるのではないか。以前、薬剤師の仕事は怖いと思ったことがあります。
 
 70%ぐらいの平均的な能力をもっている凡人は、能力がある人と判断できます。
 ペーパーテストが満点でも、車の運転ができないとか、地理がわからない、切符ほかのチケットが買えないというような、日常生活を送る能力が足りていない人は、仕事場では使いづらい。

 考えてみれば、個々に、みんな、どこかしら、変なところはもっています。

 集団の中でのサラリーマン的仕事が無理なら、自営業的な仕事を選択します。
 与えられた仕事を仕上げて、静かにしていれば、集団の中で働くことはできるということはあります。

 個別の話に内容が移りました。
 延々と、愚痴を聞いているような感じの読書です。
 読むのがつらいので、流し読みに入りました。
 メッセージを推察、理解しようとすると、働かないでお金が欲しいのだなというところまでいってしまいます。本音は、楽をしたい。
 人は働かなくても生活できるようになると、働かなくなります。働かなくても生活できる環境をどうやって継続していこうかと考えるようになります。
 
 作者と同じく病識がある医師の話として、ひとつイヤなら全部拒否していた。自分にとって「全」か「無」のふたつしかない。
 かなり厳しい選択です。
 この世は、グレーゾーンでできています。そして、錯覚と誤解に包まれています。

 昔観た、少年が主人公のアメリカ映画を思い出しました。そのときのメモの一部です。
 「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い 2012年3月に映画館で鑑賞」
 オスカー・シェルは10歳の少年です。父親は9・11テロ(無差別大量殺人)により、世界貿易センタービルにて亡くなりました。オスカーには脳の病気があります。物事を数値化して論理的に思考します。記憶力は抜群です。高い知能を有しています。反面、周囲の人間と協調する能力は欠けています。オスカーは亡くなった父親を尊敬していました。父親は家族が生活していくために研究者への道をあきらめて宝石商を営んでいました。オスカーは母親を軽蔑しています。母親は、知的能力が劣るというのが理由です。(最後は、オスカーは、母親の愛情に助けられています)


 理屈ばかりで中身がないということもあります。実績があってこその理屈です。
 実績がない理屈に対しては、相手をしてもしょうがないという気持ちになります。

 「いい人」と言われる管理職は、「(部下にとって都合の)いい人」でしかありません。

 仕事が続かないのは、仕事をするという行為を「お金」で割り切る気持ちが弱いからです。

 読んでいると、なにかしら、正反対に理解されています。
 病名をもらったり、精神障害者手帳をもらったりすることがまるで、幸せなことのように感じられる文脈です。手帳が、ステータス(社会的地位)です。
 病名や手帳をもらうことで、自分がもつ未来へのああなりたい、こうなりたいという夢とか、ああしたい、こうしたいという希望が遠ざかっていきます。
 病気が完成していない人にとって良くない取引です。
 指南書ですが、本当の「親切」なのか疑問です。
 病名とか手帳という働けないことを保証してくれる証拠が欲しいのでしょうが、自分が望むものではなく、周囲が困り果てて段取りするのが一般的です。

 日常生活の工夫が列挙されていますが、多くの人たちがしていることです。
 いろんな事情を抱えて、みんな一生懸命に生きています。
 
 村田紗耶香作品「コンビニ人間」を思い出しました。

 人生を変えてしまうかもしれないちょっと怖い本でした。
 よく考えて、自分でできることは自分でやるという前提条件で、足りないものを補うというやり方で、上手に依存してほしい。  

Posted by 熊太郎 at 06:49Comments(0)TrackBack(0)読書感想文