2019年11月24日

きいろいばけつ もりやまみやこ

きいろいばけつ もりやまみやこ作 つちだよしはる絵 あかね書房

 人生とか、人間の生き方とかを考える絵本でした。
 きつねのこどもが野原できいろいばけつを見つけます。自分のものにしたいのですが、持ち主が現れるかもしれないので、1週間様子をみます。
 きつねのこは、きいろいばけつに愛着をもちます。自分のものになったらという仮定であれこれ夢を描きます。
 1週間後、きいろいばけつはなくなります。だれかがもっていってしまったのだと思います。
 でも、きつねのこは、めげないのです。
 すぎてしまった過去にひきずられずに、未来を見ながら生きていこうとしていると理解しました。

 「きつねの こが まるきばしの たもとで、」というように、言葉のあいだに、てん「、」ではなく、スペースを入れる書き方は、珍しいと思いながら読み始めました。
 きいろいばけつの底にたまった水を鏡がわりにしながら表情をつくるきつねのこの絵がかわいい。「きつねが」ではなく「きつねの こが」という表現がいい。優しい色あいの絵です。きつねのこ、くまのこ、うさぎのこが洋服を着ている姿もかわいい。

 きいろいばけつをほしいけれど1週間がまんする。
 きつねのこのなまえは、「こんすけ」
 なにかの体験がもとになっている作品なのでしょう。
 月があって、雨がふって、風がふいて、身近に自然があります。黄色があって、青があって、色があります。
 きいろいばけつに愛情をそそぐきつねのこです。ばけつ=希望です。67ページにどんでんがえしがあります。
 さびしくなりました。
 ばけつとは、縁がなかったとあきらめる。
 日本人らしい心理です。

 1985年初版。150刷されているロングセラー作品でした。  

Posted by 熊太郎 at 06:33Comments(0)TrackBack(0)読書感想文