2017年08月08日

いのちの車窓から 星野源

いのちの車窓から 星野源 KADOKAWA

 作者のイメージと文章の中身が一致しないので、イメージを分離しながら読んでいます。
 「いのちの車窓から」というのは、冒頭付近を読むと、くも膜下出血を患って入院治療中だったようで、また、売れる前には、狭く暗い安アパートの一室で孤独に作曲活動をしていた頃をふりかえりつつ、なんというか、生きててよかったというしみじみとした気持ちから付けたタイトルではなかろうかとおもんばかった次第です。
 テレビ番組、「世界の車窓」からをもじったことも考えられます。

 酒は飲めない。血圧は高そうです。
 人間は死んだら終わり。人間は死んでも終わりじゃない。そんな記述が中身にあります。

 記述内容は、若い。
 
 良かったフレーズとして、「思春期に救われたので、ラジオが好き」、「文章のプロとはありのままに書くことができる人」

 いい文章を書くために意識して文章を磨いているのだろうか。

 ポケモンゴーをはじめてとして、ゲームのことはわからないので読み飛ばしました。

 作者が、これから、年齢を、どのように重ねていくのかが楽しみです。  

Posted by 熊太郎 at 08:59Comments(0)TrackBack(0)読書感想文

2017年08月05日

月の満ち欠け 佐藤正午

月の満ち欠け 佐藤正午 岩波書店

 かなりおもしろい。こういう話は読んだことがありません。某作家の「秘密」に似ていますが違います。佐野洋子さんの「百万回生きたねこ」には通じています。
 舞台は青森八戸、千葉稲毛、同市原、船橋、福岡、名古屋、そのほか、知っている地名が次々と出てきます。
 憑依とか、時間移動、輪廻転生、ホラーの要素もあります。
 奇異なものでありますが、(だから、どうした)という気分もあります。それが読み進めるうちに変化しそうです。

 こどもが失踪する。ありがちなことです。親にとっては恐怖です。
 
短い切れ目が読みやすい。
スピーディな展開はわかりやすい。
落語のようです。


読めなかった漢字として、「生気が漲る:みなぎる」、「綽名:あだな」、「首を捩じる:くびをねじる」、「「譫言:うわごと」、「80歳を過ぎて矍鑠:かくしゃく」、「悄気ている:しょげている」、「怯むな:ひるむな」

良かった表現として、「仕事にしか生きがいを見出せない年寄り」、「月のように死んで生まれ変わる」

(つづく)

 なかなかややこしい。メモに書きだしながらつながりを確認していきました。

 内容のデータは古い。
 80年代の出来事
50代後半以降の人が読むと実感する歴史があります。

 煙草に関する記事は、時代遅れですが、時の流れとともに登場人物も禁煙していることから納得がいきます。

 「瑠璃も玻璃も照らせば光る:るりもはりもてらせばひかる。才能のある者はどこにいても目立つ。機会さえあれば活躍する。瑠璃は色付き、玻璃は色なし」

 夫婦間、男女間のやりとりは、リアルです。

 世界のミステリーの雑学書を読んでいるような気になってきました。
 生まれ変わりも、突き詰めていけば、だからどうしたという気になってきます。
 されど、最後は、やはり「愛」でした。
 女性の微妙な優しい気持ちが描かれていて、心に残るいい小説でした。  

Posted by 熊太郎 at 17:36Comments(0)TrackBack(0)読書感想文

2017年08月01日

影裏(えいり) 沼田真佑

影裏(えいり) 沼田真佑(ぬまた・しんすけ) 文藝春秋

 影:物事の表と裏を表現するのだろうか。

 まだ、12ページ付近です。これまでのところ、人物は、氏名不明の主人公と彼の友人日浅しか出てきていません。
 ふたりで、東北、盛岡にあるらしき生出川(おいでがわ)で魚釣りをするのです。

 漢検みたいに、読めない漢字が続きます。
 詠めないので、意味をとれません。
 意味をとれないので、調べます。
「釣りに倦きる:あきる(やりすぎて疲れてあきるらしい)」、「奸知:かんち。悪知恵」、「山楝蛇:やまかがし。毒蛇。日本のどこにでもいる」、「川の右岸:上流から下流に向かって右側」、「水楢:みずなら。落葉広葉樹。たかさ35mもあり」、「燦めく:きらめく。キラキラと光り輝く」、「享けない:うけない。」、「白い迸り:とばしり。飛び散る水」、「夏油:岩手県北上市の地名。温泉」、「毀す:こわす」、「連翹:れんぎょう。落葉低木」、「お誂え向き:おあつらえむき」、「鮠:うぐい。川魚」、「貪婪:どんらん。欲深い」、「鉤:かぎ、はり」、「シュラカップ:登山やキャンプで使用するときの手で持つところが付いた金属製の器」、「タストヴァン:ワイン。利き酒用の銀製の皿。ただ、この作品の中では、お店の名称のようです」、「キルシュ:蒸留酒。ブランデー」、「長閑:のどか」、「袂:たもと。そば、きわ」、「嘯いて:うそぶいて」、「撓り:おおり。たくさんついてしなる」、「鉤素:ハリス。針に結ぶ糸」、「金束子:かねたわし」、「廉い:やすい」、「堪らない:たまらない」、「ずんだ:枝豆を用いる餅菓子」、「チーザ:チーズ菓子」、「踝:くるぶし」、「逸る:はやる。あせる」、「黴:カビ」、「罅割れ:ひび割れ」、「鳶色:とびいろ。赤黒い茶褐色」、「躑躅:ツツジ」、「烏滸がましい:おこがましい。身の程をわきまえない」、「目を瞠る:めをみはる」、「鰓蓋:えらぶた」

印象的だった表現として、「共感ではなく感銘する神経をもった人間」、「何かひとつの限界が自分に訪れた」、「棘のない言葉を心がける」

(つづく)

 読み終えました。
 不気味な作品でした。

 いつまで、地震や津波を素材にした作品が続くのだろう。
 もういいのではないか。
 いつまでも、時間の流れが過去で止まっている。

 男女の性逆転話もよく扱われる素材であるが、日常生活を送っていて、よくある話とは思えない。

 知人間の借金、返済してくれない話は、過去から続く人間界でのよくある話だ。

 詐欺で成立している社会。それを抑制するものが、秩序とか、道徳とか、教育と呼ばれる。
 戦争になれば、悪ははびこる。自然災害発生時もそうなのか。  

Posted by 熊太郎 at 18:46Comments(0)TrackBack(0)読書感想文